社名
株式会社日阪製作所
設立
1942年
所在地
大阪府大阪市
業界
一般産業機械
事業内容
熱交換器・バルブの設計・製造・販売、食品・医療・染色仕上機器向けプロセスエンジニアリングの提供
株式会社日阪製作所

事例 CADDi Drawer

製品ライフサイクルは10年以上。人の記憶には限界がある。必要な時に必要な情報にアクセスできる体制を構築し、設計ミスを低減。

熱交換器事業本部 設計開発部 設計開発一課 課長

大軒 孝之

熱交換器事業本部 設計開発部 設計開発一課

田尻 奈満

導入前・導入後

ライフサイクルが長い製品の情報検索に時間がかかっていた。また、知識が属人化し、設計ノウハウへのアクセスが難しいことから、以前発生した設計ミスが再発していた。

導入1ヶ月で、サムネイル表示による図面検索の時間短縮や、従来の手法では見つけられなかった情報の抽出を実現。今後は設計不良の防止やノウハウの伝承を実現するために、設計情報の登録や社内の仕組み作りに取り組んでいる。

インタビュー

ライフサイクルが長い製品の設計情報が見つからない

1942年創業の株式会社日阪製作所は、熱交換器事業・プロセスエンジニアリング事業・バルブ事業の3つの柱を持ち、幅広い産業に貢献している。熱を効率的に伝導させる熱交換器は、プラント・船舶・空調・電力・石油化学などの産業に広く導入されている。特に、日阪製作所のコンパクトで高性能なプレート式熱交換器はエネルギー業界を中心に注目を集めている。

 

これまで、日阪製作所の熱交換器事業部では、図面番号を記載した「図番台帳」と製造番号や特殊設計の内容をまとめた「案件情報台帳」の2つを用いて設計情報を管理していた。

 

熱交換器はライフサイクルが長く、納入した熱交換器が20,30年程度は継続して使われることも少なくない。中には、40年以上前に納品した製品のメンテナンス依頼が来ることもある。しかし、長期間使用された納入品は手書きの図面をPDF化した資料で管理されていたため、メンテナンスに必要な情報を見つけるのが困難だった。また、製造番号を打ち込むことで設計図面が確認できるシステムもあるが、PDFファイルを一つずつ開いて確認する必要があった。情報の確認に時間がかかることから、当時の設計資料の確認を諦めることも少なくなかった。

 

顧客要望に合わせて標準品からのカスタマイズ設計を担当する田尻氏は、「20,30年前に納品した製品のカスタマイズ要望が多く、設計に必要な情報を探すことに時間がかかっていました。試作を行わないカスタマイズ設計の場合には、設計不良を出さないために過去の実績に基づいた設計が重要です。当時の設計意図を確認するためにも納入時の図面や情報を見つけたかったのですが、どうしても見つからずに新図を作成し直すこともありました。」と振り返る。

 

当時の情報が見つからない場合は、情報が見つかる場合と比較して新図の作成やその検証に時間がかかっていた。上司や先輩でも把握していない情報を、若手でも速やかに取り出せる仕組みの構築が必要とされていた。

ライフサイクルが長い製品の設計情報が見つからない

再発防止したはずのミスが、数年後に再発

熱交換器は、受注の約半数は標準品そのものだが、残りの半数は顧客の要望に従ってカスタマイズ設計を行う。一度標準設計ができればその標準品を10年から20年程度は継続して使われる。一方で、カスタマイズ設計は設計品質確保のために、過去類似設計情報を確認し、設計に反映する必要がある。

 

設計一課課長である大軒氏は、ライフサイクルの長い製品に関する設計課題についてこう話す。「当時、カスタマイズ設計を担当していた若い技術者から、社内での設計不良に関する報告書があがってきました。見覚えがあると感じ、過去情報を確認すると、再発防止策を講じていたものの2年前にまったく同じ設計不良が生じていました。『ライフサイクルの長い製品の設計情報を、人の記憶でカバーするのは限界がある。』これが、ITの必要性を強く意識したきっかけです。国内外の大手プラント企業と仕事をする機会は多いですが、彼らは人が対応できない領域をサポートするために、積極的にITを導入して成果を出しています。我々もITを導入し、きちんと活用して成果を出す必要があります。」

 

これまでも改善活動として、設計不良やヒヤリハットに関する報告書は作成され、蓄積されていた。しかし、実際に設計業務に取り組む際に、確認すべき報告書にアクセスできる状態になっていなかった。「必要なときに、必要な情報が設計者に届く」という仕組みを、ITを利用して実現できないかと考えていた。

再発防止したはずのミスが、数年後に再発

CADDi Drawer導入により期待する成果

CADDi Drawerについては、各事業部を取りまとめる技術統括本部から提案があった。当初は図面のデータベースを一元化するために導入を検討したが、過去のカスタマイズ品も含めて約30万枚もの図面を登録する必要があることから、一旦は導入を諦めていた。

 

しかし、設計不良の再発防止や過去図面の検索時間短縮を目的に、設計内できちんと効果を出していく方針で、導入を決断した。まずは、CADDi Drawerの活用方法を整理し直し、優先順位を決めてシステムに導入する図面の選定を行う。現在は、重要度の高い図面から登録を進めている。

 

活用方法について、大軒氏はこう話す。「短期的には図面検索時間の削減、中期的には作成する新図の抑制や図面精度向上。また、長期的には設計不良の低減を考えています。既知のミスや設計手法をシステムに登録し確認する仕組みを構築することで、設計不良の低減につなげていきたいと考えています。」

 

また、田尻氏はCADDi Drawer導入後の取り組みについて、こう話す。「検索した図面がサムネイル表示されるので、中身を確認するためにファイルを一つずつ開く必要がなくなりました。また、特殊設計の事前検討依頼が来た案件で、従来のやり方では見つけられなかった過去情報を、CADDi Drawerでの検索で見つけられました。検索時間を削減でき、過去の設計情報を参照できたことから効果を実感しています。設計部内のメンバーにも効果を実感してもらえれば普及すると思うので、まずはアクセスしてもらえるように声かけをしています。ただ、これまで図面を検索するプロセスは、それぞれが独自のやり方で取り組んでいたので、それを変えてもらうことに難しさを感じています。」

CADDi Drawer導入により期待する成果

One日阪としての共通化実現へ向けて

今後は、熱交換器事業本部での利用拡大に向けて、図面の登録と登録した図面との技術情報紐づけを進めていく予定だ。設計要領や設計不良実績との紐づけを行い、設計時にDrawerを活用するプロセスを構築することで、利用拡大に繋がると考えている。

 

また、技術伝承や人材育成という観点では、検図図面の登録によるノウハウの蓄積を検討している。上司が赤ペンを入れた検図結果を登録すれば、それがそのまま設計ノウハウになり、若手への技術伝承に繋がる。ただ、保管する図面量が膨大になりノウハウとして残す内容も精査が必要なため、現在取り組んでいることの効果が出てから、時間を確保して取り組む予定だ。

 

大軒氏は、今後の利用拡大に向けてこう話す。「まずは、熱交換器事業本部できちんと成果を出す必要があります。成果が出れば他の事業本部にもDrawerの活用を展開し、将来的には各事業本部を横断して活用できると考えています。現状は、各事業本部がそれぞれ部品調達などを独立して行っていますが、汎用部品を事業本部横断で図面共有できれば、設計・調達コスト削減や業務効率化に大きく貢献できるはずです。」

 

熱交換器事業本部での取り組みから、One日阪としての取り組みへ。CADDi Drawerは、日阪製作所の取り組みを実現するために、伴走していく。

One日阪としての共通化実現へ向けて
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