1942年創業の株式会社日阪製作所は、熱交換器事業・プロセスエンジニアリング事業・バルブ事業の3つの柱を持ち、幅広い産業に貢献している。熱を効率的に伝導させる熱交換器は、プラント・船舶・空調・電力・石油化学などの産業に広く導入されている。特に、日阪製作所のコンパクトで高性能なプレート式熱交換器はエネルギー業界を中心に注目を集めている。
これまで、日阪製作所の熱交換器事業部では、図面番号を記載した「図番台帳」と製造番号や特殊設計の内容をまとめた「案件情報台帳」の2つを用いて設計情報を管理していた。
熱交換器はライフサイクルが長く、納入した熱交換器が20,30年程度は継続して使われることも少なくない。中には、40年以上前に納品した製品のメンテナンス依頼が来ることもある。しかし、長期間使用された納入品は手書きの図面をPDF化した資料で管理されていたため、メンテナンスに必要な情報を見つけるのが困難だった。また、製造番号を打ち込むことで設計図面が確認できるシステムもあるが、PDFファイルを一つずつ開いて確認する必要があった。情報の確認に時間がかかることから、当時の設計資料の確認を諦めることも少なくなかった。
顧客要望に合わせて標準品からのカスタマイズ設計を担当する田尻氏は、「20,30年前に納品した製品のカスタマイズ要望が多く、設計に必要な情報を探すことに時間がかかっていました。試作を行わないカスタマイズ設計の場合には、設計不良を出さないために過去の実績に基づいた設計が重要です。当時の設計意図を確認するためにも納入時の図面や情報を見つけたかったのですが、どうしても見つからずに新図を作成し直すこともありました。」と振り返る。
当時の情報が見つからない場合は、情報が見つかる場合と比較して新図の作成やその検証に時間がかかっていた。上司や先輩でも把握していない情報を、若手でも速やかに取り出せる仕組みの構築が必要とされていた。