1952年設立、創業70年を超える森鉄工所。現在の代表取締役である森氏は、10年前に入社し、その後1年で当時92歳の先代から代表職を引き継いだ。就任当時からステンレス製溶接キャップという強みはあったものの、長期的に考えると決して伸び代は大きくはない。森氏の「若い元気な人材が多く働ける会社にしたい」という思いもあり、お客様から図面を受け取って加工を行う事業に新たに着手。従来から行っていたステンレスに加え、銅やアルミなどの特殊鋼を中心に受託している。その過程で、汎用機しかなかった工場内には新しい設備が導入され、従業員も10年前と比べて約2倍に増えてきた。
新しい人材が増え、技術を持っているベテランとペアを組ませることで、技術力底上げに繋がってきた。また、実務レベルに必要な基本知識や資格試験に向けた教育としては、5〜6年前から外部の方に講師を依頼、成果も出始めてもいた。
人によっては1年程度で独り立ちできるようになるなど、以前はできていなかった技術伝承に向けた取組みが整いつつあるこのタイミング。さらに若い人材を増やしていくためには、現在の教育プログラムをもっと強化していきたい、と森氏は考えていた。
また、社内には残していくべき資産が多くあるにも関わらず、人の頭の中にしかなかったり、整理されていなかったりと、属人化されているものも多い。「管理できていない資産」を「共有できる資産」へどうやって変えていくか、技術継承できる形にするか。取り組みたい課題はまだまだあった。
生産管理の面でも、人材の育成が難しい状況は同じだった。業界未経験の新人など、図面が読めない人だと、正しい情報を効率的に探すのは難しい。例えば、「図面番号が一つだけ違うもの」「図面番号は同じでも更新が入ることで寸法が変更されているもの」などは、経験が浅い人だと目的の図面に辿り着くことは容易ではない。また、決められたフォルダに情報を集約するというルールを制定してもなかなか定着せず、ルールに沿って探しても、必要な情報にたどり着けないことは珍しくなかった。経験が浅い人材にも、安心して仕事を任せられる環境の構築が求められていた。