交通インフラを支える道路信号機のトップメーカー、信号電材株式会社。三代続いた同族経営から組織経営へと転換する中で、代表取締役の東川氏は、長年培われてきた企業文化に大きな課題を感じていた。
東川氏
「オーナーの強烈なリーダーシップで牽引されてきた会社なので、社員は素直なのですが、受け身の姿勢が多く主体性に欠ける状態になっていました。そこにすごく危機感がありました。組織経営に切り替わった時、主役である社員が自ら考え行動できなければ、会社は立ち行かなくなる。一人でも多く、主体的な人材を育てることが急務でした」
東川氏が社長就任後の2年間で注力したのは、徹底的な「守り」すなわち経営基盤の再構築だった。 理念を社員全員で作り直し、外部から専門人材を登用。 全員が同じ理念のもと、自律的に動ける組織の土台作りに邁進した。 しかし、その過程で、50年の歴史の中で見過ごされてきた根深い問題が明らかになる。それが、技術情報の管理体制の脆弱性であった。
東川氏
「図面の整備すらできていませんでした。大手がやらないような個々の顧客要望に応えることに突き進んできた結果、同じような図面がいくつも存在するなど、体系的な管理がなされていなかった。絡み合ったコンセントのように、どこから手をつけていいか分からない状態だったのです」






