製造業で品質向上させるには?取り組み方と事例を解説
目次
製造業を取り巻く環境が激変する中、従来の品質向上策では限界を感じていませんか? 顧客ニーズの多様化、コスト削減圧力、人材不足…山積する課題に、どう対応すればいいのか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、製造業が今まさに直面している品質向上の課題を整理し、抜本的な解決策へと導くステップを解説します。
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製造業における品質向上とは?
製造業における品質向上とは、顧客満足度を高め、企業の競争力を強化するための取り組みを指します。
製造業で品質向上に取り組む場合、QCD(品質・コスト・納期)のバランスが大切です。一般的に、品質を向上させようとするとコストの増加や納期の遅延が懸念されます。
しかし、本質的に捉えれば、品質向上させることこそが、コスト削減と短納期を実現する鍵となります。不良や手戻りの削減は、無駄なコスト削減に直接つながります。また、安定した高品質な製品を効率的に生産できれば、リードタイムを大幅に短縮することが可能です。
つまり、品質の向上はQCD達成の基盤となります。品質を中核に据え、コストと納期の最適化を図る視点が必要です。
製造業における品質向上に必要な2つのアプローチ
製造業が品質向上をする際には、前述したように製品やサービスの品質向上と業務における品質向上、両方の側面からアプローチすることが大切です。
製品・サービスの品質向上
製品やサービスの品質向上は、製品やサービスそのものの質を高めることを指します。例えば、調達する材料の品質や設計のクオリティを高める、デザイン性や機能性を向上させる、顧客へのアフターサービスや情報提供を充実させるなどが挙げられます。
業務の品質向上
業務や作業の品質向上とは、製品を作るまたはサービスを提供するといった業務や作業の質を高めることを指します。具体的な方法として、データ化による情報の一元管理、無駄な工程の削減、管理体制の見直しが挙げられます。
製造業が品質向上に取り組むための5つのステップ
効果的な品質向上施策を実行するときは、一定の手順にもとづくことが重要です。ここでは、品質向上に取り組むための5つのステップを解説します。
1.問題点を明確にする
品質向上にはまず問題点や課題を明確にすることが必要です。現状の品質レベルを把握し、どのような問題が発生しているのかを分析しましょう。現場で発生している問題に関するデータを収集し、グラフ化することで、問題の傾向や発生頻度を客観的に把握できます。
品質を定量的に評価するには、「チェックシート」「管理図(コントロールチャート)」「パレート図」をはじめとしたQC7つ道具と呼ばれる品質管理図表が用いられます。
QC7つ道具 | 説明 |
チェックシート | データを簡単に集計するための表 |
ヒストグラム | データの分布状況を視覚的に表すグラフ |
パレート図 | 問題の重要度を明らかにするためのグラフ |
特性要因図 | 問題の要因を分析するための図 |
散布図 | 2つの変数の相関関係を調べるためのグラフ |
管理図 | 工程の安定状態を監視するためのグラフ |
グラフ(図表) | データを図表にすることで視覚化する |
2.目標を設定し、進捗を管理する
改善施策を客観的に評価するために、現状の数値を把握し、目指すべき数値目標を明確にします。
目標設定時は「数値目標」と併せて「KPI」も設定しましょう。KPIとは重要業績評価指標のことで、目標達成度を測るための具体的な指標です。設定した数値目標とKPIを管理することで、品質向上活動の進捗状況を把握し、軌道修正を図ることが可能になります。
数値目標例 | KPI例 |
不良率を10%削減 | 不良品発生件数 |
生産性を20%向上 | 単位時間あたりの生産量 |
顧客満足度を15%向上 | 顧客満足度アンケートの点数 |
目標設定とKPIの設定ができたら、現状の数値を計測します。計測には統計的手法や計測器具を活用し、正確に把握することが重要です。
統計的手法はデータのばらつきや傾向を分析し、より精度の高い現状把握が可能です。また、適切な計測器具を使用することで、誤差を最小限に抑え、信頼性の高いデータを取得できます。計測したデータは記録し、目標達成に向けた進捗状況を随時確認しましょう。
3.解決すべき課題を明確にする
現状から課題を洗い出すときは、現場の担当者からヒアリングを行う、アンケートを実施する、過去のデータや記録を分析するなど、さまざまな方法があります。重要なのは、客観的な事実に基づいて課題となるポイントを捉えることです。
その上で、以下の3つのフレームワークを活用し、課題に対する優先順位を付け、最優先課題を明確にしましょう。
ビジネスプロセスモデリング表記法(BPMN)
業務プロセスを可視化することで、問題が発生している工程や非効率な箇所を特定しやすくなります。BPMNは、フローチャートよりも詳細な業務フローを表現できるため、問題点の深堀りに役立ちます。
ECRS(イクルス)
「Eliminate(排除)」「Combine(結合)」「Rearrange(交換)」「Simplify(簡素化)」の4つの観点から、業務プロセスを改善するためのヒントを得られます。既存のプロセスを分析し、無駄な手順や工程を特定することで、具体的な課題を明確化できます。
ロジックツリー
問題を階層構造で分解し、原因と結果の関係性を明確にすることで、根本原因の特定に役立ちます。問題を細分化することで、対策すべき具体的な課題が浮き彫りになります。
4.具体的な対策を実行する
課題が明確になったら、品質向上のための具体的な対策を実行していきます。計画段階で立案した対策を、現場の状況に合わせて実行していくことが重要です。以下に、具体的な対策例をいくつか示します。
対策 | 内容 |
5S活動の徹底 | 職場環境の改善は品質向上に不可欠。「整理・整頓・清掃・清潔・躾」を徹底し、作業効率の向上とミス発生の防止に努める |
設備の点検・保守 | 設備の不具合は品質不良の大きな原因となる。定期的な点検・保守を行い、常に最適な状態で稼働できるようにする |
4M変更管理の導入 | 製造工程の変更は、品質に大きな影響を与える可能性がある。「人・機械・材料・方法」の変更を適切に管理し、問題発生のリスクを最小限に抑える |
これらの対策を実行する際、目標値が達成できない場合は、計画段階に戻り、目標や対策内容を見直す必要があります。
5.改善策を評価する
施策を実行したら、目標に対する評価を必ず行います。フィードバックによって得たナレッジを組織全体で共有することも大切です。
また、品質向上は一度の取り組みで終わりではありません。評価を受けて改善策の計画を再度立て、実行し、またそれの評価を行うというPDCAサイクルを回し続けることも、品質を向上させる重要な鍵となります。
製造業が品質向上に取り組むときのポイント
製造業における品質向上に取り組む際には、マニュアルの整備やフロントローディングの推進が有効です。これらは、特にITシステムやAIといった技術を取り入れることで、さらなる効果を生み出します。
マニュアルを整備する
業務マニュアルの整備は、業務の属人化を防ぎ、誰でも一定の品質で業務を遂行できるようにするために必須です。
業務マニュアルを作成する際には、まずマニュアルを使用する目的と対象者を明確にしましょう。誰のためのマニュアルなのかを意識することで、内容の焦点が定まりやすくなります。
業務の手順を記載するときは、図や表を用いるなど、誰にとってもわかりやすいよう工夫をしましょう。わかりにくい作業の場合は動画マニュアルの活用もおすすめです。動画マニュアルは、作業手順を視覚的に理解できるため、新入社員教育などにも一定の効果があります。
マニュアルを作成したあとは定期的に内容を見直し、最新の情報に更新することも大切です。
また、ITシステムを活用し、オンラインで一元管理すれば、誰もがいつでも最新版を確認でき、情報共有もスムーズになります。マニュアル作成や共有の手間が減り、業務の標準化が進んで品質が安定するでしょう。
フロントローディングを推進する
フロントローディングとは、製品開発の初期段階で品質を作り込む手法です。開発の初期段階で品質を作り込むことで、後工程で発生する手戻りや修正を減らせます。
サプライヤーや製造部門との連携を強化し、フィードバックを積極的に反映させる環境を構築することで、製品の信頼性向上やコスト削減などにつながります。
この取り組みには、設計や製造など、関係する部門の連携が重要です。ITシステムは、部門間の連携をスムーズにし、フロントローディングを力強い助けになります。 各部署でのさまざまなデータをシステムで一元管理すれば、最新情報が常に共有され、設計変更や修正指示の伝達ミスを防げます。
品質向上を目指した製造業の取り組み事例
製造業における品質向上に向けた取り組み事例として、株式会社日阪製作所様を紹介します。
同社は、見積もり・手配業務の属人化やアナログな図面管理による非効率、それに伴う納期遅延リスクが、製品やサービスの「品質」にも影響を及ぼす可能性があると課題を感じていました。
CADDi Drawer(キャディドロワー)を導入することで、これらの課題を解消し、業務効率化だけでなく、品質安定化と納期遵守率向上を目指しました。
【導入前の課題】
- 見積もり・手配業務が属人化し、スピードと精度に課題があった。
- 過去図面や情報の検索に時間がかかり、非効率だった。
- 特定の担当者に業務が集中し、負担が大きかった。
- 納期遅延が発生することがあった。
- デジタル化が進んでおらず、情報共有に課題があった。
【CADDi Drawer導入の経緯】
- 業務効率化と属人化の解消が急務だった。
- 過去図面管理の必要性を感じていた。
- 他社の成功事例を参考に導入を検討した。
- CADDi担当者の熱意とサポート体制が決め手となった。
- 操作性と検索精度の高さに魅力を感じた。
【導入の効果】
- 見積もり・手配業務が大幅に効率化され、担当者の負荷が軽減。これにより、人的ミス(品質問題の原因)の発生リスクが低減した。
- 業務の属人化が解消され、担当者不在時でも滞りなく業務が進められるようになり、生産活動の安定化(=品質の安定供給)に貢献した。
- 過去図面や関連情報の検索時間が短縮され、必要な情報に迅速かつ正確にアクセス可能に。これにより、仕様確認ミスなどが減少し、製造品質の安定につながった。
- 納期遵守率が向上した。これは、効率的な業務遂行と正確な情報伝達が実現した結果であり、「納期通りに高品質な製品を届ける」という顧客満足度と品質評価に直結する成果である。
- 他部署との連携がスムーズになり、情報共有が活性化した。
- 若手社員でも過去の豊富な技術情報に容易にアクセスできるようになったことで、技術・知識の継承が進み、長期的な製造品質の維持・向上に向けた土台ができた。
※出典:株式会社日阪製作所様|製造業AIデータプラットフォームCADDi
まとめ
製造業における品質向上は、顧客満足度を高め、企業の競争力を強化するために不可欠です。品質向上を実現するためには、問題点の可視化、目標設定と進捗管理、課題の明確化、具体的な対策の実行、そして継続的な改善策の実施が必要です。
品質向上を効率的に進めるにはITシステムの導入が有効な手段です。CADDi Drawerは、図面データの活用を通じて、製造業の設計、開発、生産プロセス全体を効率化します。属人化からの脱却や品質管理の標準化、業務の効率化を実現したい企業様は、ぜひCADDi Drawerの導入を検討してみてください。