YKKの競争力の源泉は、材料の溶解から機械の製造までを自社で行う徹底した「一貫生産」への強いこだわりにある。しかし、機械製造部長の松井氏は、その自前主義が「変化の足かせ」になっていたと指摘する。
松井氏
「安易に新しい図面を増やし続けた結果、品番数が膨れ上がりました。他方、かつては大量生産で通用していましたが、中国などから高性能で安価な設備が登場してくる中で少量多品種への対応が求められる今、これまでのこだわりを脱却しなければ、事業の競争力は維持できません」
この「品番の増殖」と「属人化」の波は、製造現場にも深刻な影を落としていた。製造統括グループ長の小川氏は、現場が抱えていた葛藤を明かす。
小川氏
「製造の基本は『図面通りにモノを作る』ことですが、現場には多くの暗黙知があり、実際には熟練者の勘・コツに頼って形にしているのが実状でした。その結果、特定の図面は特定の人や機械でしか作れないといった複雑化が進み、技術情報を外に出さない閉鎖的な文化も相まって、世の中のスピードに追いつけなくなっていたのです」
また、業務統括室長の西田氏も「調達業務が極めて属人化しており、担当者を変えるとトラブルが起きる状態でした」と振り返るほか、設計段階でも、生産技術室長の宮崎氏が「似た形状があっても新しく図面を書いてしまい、同じような見積依頼を繰り返していました」と語る通り、部門を越えて「過去の資産」が活用されない負の連鎖が起きていた。






