仲精機株式会社は、精密加工技術を活かした自社ブランドのプレス機や省力化機器の開発・製造・販売を手掛けるメーカーとしての顔と、顧客の要望に応じた金属精密加工を担う加工会社としての顔を併せ持つ。特にエアチャックやハンドプレス/エアプレス/油圧プレス、ラジアルかしめ機のほか、医療分野で用いられる特殊な注射針を組み立てる機械など少量多品種生産に対応するニッチな省力化機器において、独自の強みを発揮している。また、スイスの有力メーカーBalTec社のラジアルかしめ機や、ドイツのSCHMIDT®社のプレス機の国内総代理店も務め、単に機械を販売するだけでなく、顧客の課題解決につながるプラスアルファの技術提案力を強みとしてきた。
同社は大阪本社工場、岡山工場、富士サテライト工場(山梨)と国内に三つの主要拠点を構えるが、これらの拠点間の情報共有は長年の課題だった。代表取締役社長の後藤勝一氏は当時の状況をこう振り返る。
後藤氏
「以前は各工場がそれぞれのやり方で業務を進めており、共有するものが少ない状況でした。電話で話しても、図面が手元になければ全く話が通じない、ということも日常茶飯事だったのです」
こうしたノウハウやデータのサイロ化は、様々な業務非効率を生んでいた。例えば、スピンドル製品のように類似品が多いものでも、過去の見積や設計データが個人の経験の中に埋もれてしまい、その都度ゼロから検討し直すケースも少なくなかった。
後藤氏
「技術者の頭の中だけで設計するので、どうしても似たような部品がたくさんできてしまう。本来であれば、基本となる形状を一つ作っておけば、それを応用して様々なバリエーションに対応できるはずなのに、その『標準』がなかったのです」
さらに深刻だったのは、加工ノウハウや過去のトラブルといった重要な情報が、担当者個人に属人化してしまっていたことだ。
「従来、こまめにものを書いて残すということが不得手な企業風土で、せっかくの知見が共有されず、同じようなミスを繰り返してしまうこともありました。これでは、仕事の質もなかなか向上しません」
このような状況下、後藤社長は就任以来の懸案だった「営業の一本化」に着手していた。各拠点でバラバラだった営業体制を統括し、情報集約と工場への適切な案件配分を目指す改革だ。この改革を推進する上で、拠点間の情報共有プラットフォームの確立が急務だった。
後藤氏
「CADDiは、まさにこの営業改革を後押しする『共通言語』としての役割を果たしてくれました」
導入当初は、新しいシステムに対する戸惑いもあったが、キャディ社の担当CSによる手厚いサポートと、興味を持った一部社員の自発的な活用が起爆剤となった。
後藤氏
「大阪、岡山、富士の3拠点で、同じ『CADDi Drawer』というアプリケーションの情報を見られるようになったことで、コミュニケーションは劇的に改善しました。以前は電話口で『どの図面のこと?』となっていたのが、今は画面でデータを見ながら具体的な品番で話せるようになった。これは目に見える大きな進歩です」
特に、図面に付随する加工上の注意点などもCADDi Drawer上で共有できるようになったことで、確認ミスによるトラブルも大幅に削減されたという。