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【CES2026レポート⑥半導体】AI半導体は「性能」と「電力効率」両立の時代へ。活用広がる次世代チップの全貌

イベントレポート

【CES2026レポート⑥半導体】AI半導体は「性能」と「電力効率」両立の時代へ。活用広がる次世代チップの全貌

【CES2026レポート⑥半導体】AI半導体は「性能」と「電力効率」両立の時代へ。活用広がる次世代チップの全貌

1月6日から9日まで、アメリカ・ラスベガスで世界最大のテクノロジーイベント「CES2026」が開催された。AIブームの後押しもあり半導体関連の展示は昨年よりも多い印象だ。主な展示を紹介する。

目次

AI PCからTVや自動車、ロボットまで──ユースケース広がるAI半導体

クアルコムは、PC向けとロボット向けのチップセットを発表した。ノートPC向けの『Snapdragon X2 Plus』は、最大10コアのCPUと80TOPSのNPUを搭載したAI PC向けの製品だ。ノートPCの価格帯は10〜15万円と、ミドルレンジPC向けとなる。すでに市場で展開中のハイエンド向けモデル『Snapdragon X2 Elite』シリーズと同等のTOPS性能を持ちながら価格を抑えた。AI PCの裾野を着実に広げる、キラー製品と言える。

また、フィジカルAI向けとなる『Dragonwing IQ10』シリーズも発表している。18コアCPUとNPU、豊富なI/Oを統合したロボット向けのチップセットであり、家庭用からフルサイズヒューマノイドまで十分カバーする。なお、どちらのチップセットも発売は2026年中である。さらにブースに実際に展示されていた製品では、2025年10月に買収したArduinoの『Arduino UNO Q』用の開発ボードのデモを行った。IoT端末や小型ロボット向けで、4コアA53+Adreno GPU+Hexagon DSPという構成の『Dragonwing QRB2210』が搭載されている。

クアルコム『Arduino UNO Q』用ボード

BOS Semiconductorsは、車載向けとしてADAS+IVI(In‑Vehicle Infotainment、車載インフォテインメント)を主なターゲットとするAIチップセット『Eagle』シリーズを公開した。『Eagle- N』はチップレット型AIアクセラレータで、既存のIVIやADAS SoCに接続する外付けNPUとして動作する。性能は250TOPSで2026年中に量産予定。また『Eagle-A』はスタンドアロンの自動運転向けチップセットで150TOPS。2028年の出荷が予定されている。このほか、同社ブースでは『Eagle- N』を搭載する車載用AI BOXの展示も行われた。

BOS Semiconductors『Eagle-N』

ソニー・ホンダモビリティブースには、Sony Semiconductor SolutionsのCMOSイメージセンサー『IMX』『ISX』シリーズが展示された。『IMX728』は車載カメラ用センサーとして最上位モデルで画素数は840万。スマートフォンカメラ用センサーとは異なり、マイナス40度から85度までと耐用温度幅が広い。また逆光の道路標識やトンネル出入口、ヘッドライトなどを同時に写すため、120dB級の広ダイナミックレンジとLEDフリッカ抑制に対応している。

『IMX479』は、車載LiDAR向けSPAD(単一光子アバランシェダイオード)深度センサー。dToF方式、520ライン構成、画素ピッチは約10 µm。1型相当の光学サイズ、波長940 nm帯の赤外光に最適化しており最大約20 fpsで距離計測が可能だ。このほか、センサーと画像処理を統合した車載向けのカメラチップセット『ISX020』『ISX021』も展示された。

Sony Semiconductor Solutions CMOSセンサー

大手家電メーカーのスマートTVでは上位モデルを中心に、汎用チップセットではなく自社開発の専用モデルを搭載する製品が多い。LG Electronicsは『α11 AI Processor Gen 3』を紹介。最大3840 x 2160ピクセルの4Kパネル向けで144Hzの可変リフレッシュレートやHDMI 2.1入力に対応、前世代の『α9』比でCPU・GPU性能とAI演算性能を大幅に引き上げた。ディープラーニングを用いた「AI Picture Pro」によりノイズ低減とAI超解像を行い、細部のディテールと輪郭を強調。環境光センサーと連動する「AI Brightness Control」や、音声面の性能を引き上げる「AI Sound Pro」も搭載している。

LG Electronics『α11 AI Processor Gen 3』

クラウド向けGPU vs エッジNPU:NVIDIA、AMD、クアルコムの展示を徹底比較

NVIDIAとAMDは今回、クラウド・データセンター向けとなるGPU関連製品を発表している。NVIDIAの『Vera Rubin NVL72』はRubin世代のGPUとCPUを1ラックにまとめたラックスケールAIスーパーコンピューターだ。『Rubin GPU』を72基、『Vera CPU』を36基搭載。GPU側メモリーはHBM4が合計20.7TB、CPU側はLPDDR5Xで54TB。FP4換算で最大3.6エクサFLOPSの推論性能を持つ。

NVIDIA『Vera Rubin NVL72』

AMDの『Instinct MI400』『同 MI455X』では、データセンター向けのアクセラレータGPUを発表。対抗製品はNVIDIAのRubin世代とのこと。TSMC 2nm・3nm世代プロセスとHBM4メモリを組み合わせた設計となっている。FP4換算で最大40PFLOPS、FP8で20PFLOPSと前シリーズより2倍のAIスループットを実現している。同時に発表された『Helios』は『Instinct MI455X』を72基収めたラックサーバーであり、ラック1台あたり最大2.9エクサFLOPSのFP4性能を持つ

AMD『Insinct MI455X』

一方、クアルコムのブースでは産業向けチップセットDragonwingをベースにしたオンプレミスAIアプライアンスを見せた。これはクラウド並みのAI性能をローカルで使うことを強く打ち出したビデオ解析のデモだ。デスクトップサイズの筐体に『Qualcomm Cloud AI 100 Ultra』などの推論アクセラレータカードを搭載し、最大870TOPSのAI性能で数10台以上のカメラからの映像を同時に処理することが可能という。

カメラまたは小型エッジボックスにはDragonwingチップセットを搭載し、内部NPUで人物検出や物体分類などの一次解析を行う。そのメタデータをオンプレミスのAIアプライアンスに集約し、アプライアンス内で『Qualcomm AI Inference Suite』と『Dragonwing Intelligent Video Suite』が動作して、LLMベースのアシスタントを通じ映像内容を自然言語で検索できる。

クアルコム AI On Premise Video Intelligence

例えば、「赤いヘルメットを朝8時にかぶっていない作業員を探して」「工具を現場に忘れて手ぶらで戻ってきた人を探して」といった検索をビデオデータから即時に検索できる。なお映像データ自体はローカル内で処理され、外部クラウドへはアラートや統計情報といったメタデータのみがアップロードされる。遅延の少ない監視とプライバシーの確保、クラウド利用料の削減を同時に実現できる。

以上、今回のCESで特に目立っていた3社であるが、半導体視点で見るとそれぞれの出展内容は方向性が異なっていた。NVIDIAは「クラウドAIファクトリーを軸にロボット・自動運転など物理世界側のプラットフォームまで広げるベンダー」、AMDは「クラウドGPU+AI PC・組み込みまで一気通貫のCPU・GPUベンダー」、そしてクアルコムは「スマートフォン由来の省電力技術を武器に、AI PC・産業向けDragonwing・オンプレミスAIアプライアンスまで、現場サイドのオンデバイスAIを推進するベンダー」と、来場者に3社3様の製品・ソリューションをアピールしていた。

半導体でも目立つ韓国企業

ここ数年の半導体産業を見るに、勢いのある国はアメリカ、中国、台湾、韓国あたりだろう。だが、CES2026への中国の半導体関連企業の出展は、政治的な緊張や輸出規制の影響もありあまり多くなく、一方韓国は政府や産業団体がスタートアップを中心に多くの企業を集め出展を行っていた。半導体に特化したものでは、韓国政府・産業界による『K-semi sensor x power』というパビリオンに約10社が出展。CMOSイメージセンサーや各種センシングIC、パワーマネジメントIC、パワー半導体など「センサー・電源系の半導体」を持つ韓国企業・スタートアップが集まった。

『K-semi sensor x power』ゾーン

韓国のスタートアップでは、釜山メトロポリタンパビリオンに出展したUNISが「韓国初の8インチSiC量産ウェハ」の展示を行った。6インチより有効面積が大幅に増えコストダウンと量産性向上に貢献できる。また現在12インチの開発が完了し量産に向けて動いている。同社はロジックファウンドリではなく、SiC結晶成長とウェハ加工に特化した素材メーカーであり、4H-SiC結晶、導電型・半絶縁型など、材料スペックそのものを特徴としている。ターゲット分野は3つでEVインバータなどの車載パワー半導体、5G基地局やレーダー向けのGaN-on-SiC高周波デバイス用基板、そしてARグラス向けSiC光学基板である。

UNISのウェハー製品

独自AIチップを開発している韓国のDEEPXは、2024年に量産を始めた『DX‑M1』を使った映像解析ソリューションなどをデモ。『DX-M1』は、エッジ向けサムスン5nmプロセスNPUで25TOPS、消費電力は2から5Wで、M.2モジュール版なども展開している。2026年中に1000万台超えの出荷を目指す。

さらに、2026年末出荷予定で次世代チップ『DX‑M2』を開発中だ。2nmプロセスのNPUで、80TOPS、LLMも含めた高負荷モデルを5W以下で動作させることを狙ったフラッグシップモデルとなる。200から1,000億パラメータ級のLLMをオンデバイス・エッジで動かすフィジカルAIインフラチップとして、ロボット、モビリティ、スマートシティデバイスへの搭載を想定している。

DEEPX『DX-M1』

次なる競争の時代のキーワードは「消費電力」

半導体関連企業の製品展示を見ると、スペック表には性能に加え「省電力」や「低電力」といった項目がよく見られた。AI関連チップはここ数年のAIブームで電力消費が急増しており、電力供給能力や電気料金、CO2制約が半導体ビジネスのボトルネックになりつつある。今後はチップの性能だけではなく「性能/電力」効率が製品選択肢の重要なポイントになっていくだろう。

そしてAIが幅広い用途に進出した結果、メモリ、電源・パワー半導体、通信などあらゆる半導体もAIチップと同時に動くようになり、その結果半導体全体でエネルギー効率が着目されるようになってきている。

Bosch Semiconductorsは、SiCパワー半導体や各種センサーを自動車電動化とAI化に向けた省電力・高効率デバイスとして展示した。AI処理を前提にした、自社独自のセンサープラットフォーム採用の各種MEMSセンサー群も展示。たとえばジャイロ+加速度+オンチップAIを組み合わせることで、車両姿勢変化や路面ノイズ、ドライバーの動きまでをセンサー側で事前解析し、ECU(Electronic Control Unit、エレクトロニック・コントロール・ユニット)側の負荷と電力消費を抑えるスマートセンサーとして動作可能だ。

Bosch Semiconductorsの半導体展示

パナソニックは、AIチップを含む高集積半導体の「中工程」向けの製造装置を説明した。中工程はウエハの加工(前工程)とパッケージング(後工程)の間に位置し、微細化と多層化が進むAI半導体をより小さく、高密度に実装できるようにする装置群である。 長年、電子機器メーカーとして培ったプロセス技術を応用し、微細配線の形成精度や重ね合わせ精度を高めることで信号遅延やリークを抑えつつ、チップ同士を立体的に積層できることを強調した。結果として同じAI性能をより小さなチップやモジュールに収めることが可能になる。つまり製造プロセスそのものが、省電力AIを左右する重要な要素となっている。

パナソニックのAIチップ中工程

このほか、ソシオネクストは自社のカスタムチップセット開発を、先端パッケージングまで含めた総合ソリューションとして提案。TSMCのSoIC‑Xを用いた3Dダイスタッキングでは、3nmクラスの計算用ダイと5nm世代のI/Oダイを表裏一体のかたちで積層し、信号の通り道を極力短くすることで、レイテンシと電力ロスの低減を狙う構成になっている。また2.5Dや3Dに加えて5.5Dパッケージングにも対応し、ロジックやメモリ、インターフェースなどが異なるチップレットを、1パッケージに高密度集積できる点も特徴。これによりAIやHPCデータセンター向けチップセットを、高性能と省電力、小型化をセットで追求できるプラットフォームとして位置づけている。

ソシオネクスト

AI半導体はクラウドからエッジまで、鍵を握る「性能と省電力」の両立

CES 2026では、AI半導体がミドルレンジPCから自動車、ロボットまで幅広い用途へ浸透した。クアルコムが普及価格帯のAI PC向けチップを発表し裾野を広げる一方、NVIDIAやAMDはクラウド向けの次世代GPUで圧倒的な推論性能を競った。また、地政学的影響から中国勢の出展が制限される中、独自のNPUやSiC素材を擁する韓国スタートアップの躍進が目立った。

展示全体を貫くキーワードは「消費電力」だ。AIブームによる電力消費の激増が課題となる中、性能のみならず「電力効率」が製品選定の決定打となっている。これを受け、パナソニックの中工程装置やソシオネクストの先端パッケージング技術など、製造・実装レベルでの省電力化アプローチも加速している。このように、AI半導体は総じて、計算能力の極大化だけでなく、実社会での持続可能な運用を見据えたエネルギー効率と実用性の両立という新局面に入ったと言えるだろう。

(取材・執筆:P.P. Communications)

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キャディは「モノづくり産業のポテンシャルを解放する」というミッションを掲げ、製造業AIデータプラットフォームCADDi を提供しています。 このミッションを全世界で実現するための活動の一環として、2026年1月5日〜9日にラスベガスで開催された「CES2026」にもブースを出展いたしました。

本シリーズでは、出展に合わせて現地で視察した「製造業を変革するために不可欠な最先端テクノロジー」や「最新のトレンド」について、全6回にわたりお届けします。

P.P. Communications

AuthorP.P. Communications

年間を通して海外展示会を取材。レポートの発行・提供の他、そこで蓄積されたIT/ICT業界への深い知識と技術力を強みに、マーケティング・コミュニケーション領域の企画、調査や分析に裏付けられた的確な戦略立案、そして実施フェーズにおける支援を行っています。

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