製造業のQCDとは?重要な理由や効果的な進め方を解説
AIデータ活用でQCDを高める基盤をつくる
製造現場でのQCD向上に苦心されていませんか?設計ノウハウが属人化し、類似部品の重複設計でコストが膨らみ、部門間の情報連携の遅れが納期遅延を招く…。
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目次
近年、製造業の現場では品質、コスト、納期に関する課題が山積しています。不良品の発生、製造コストの上昇、納期遅延など、これらの問題は企業の競争力を直接的に脅かす要因となっています。
さらに、デジタル化の加速やグローバル競争の激化により、従来の管理手法だけでは対応が難しくなってきました。取引先からの要求は厳しさを増し、品質向上とコスト削減、納期短縮を同時に実現することが求められています。
このような状況を打開するためには、QCDの適切な管理と改善が不可欠です。QCDを効果的に管理することで、生産性の向上や顧客満足度の改善、企業競争力の強化を実現できます。
しかし、QCDの改善を成功に導くためには、正しい理解と体系的なアプローチが必要です。この記事では、QCDの基本概念から具体的な改善手法、さらにはデジタルツールを活用した最新の管理アプローチまで、製造現場の課題解決に役立つポイントを解説します。
QCDとは?
QCDとは、Quality(品質)・Cost(コスト)・Delivery(納期)の頭文字をとったもので、製造業において欠かせない要素をまとめた言葉です。この章では、それぞれの要素について詳しく解説します。
Quality(品質)
Quality(品質)は、製品やサービスの質を示すもので、具体的には設計品質、製造品質、サービス品質などが挙げられます。
設計品質とは、製品の基本性能が設計時に定めた要求仕様を満たしているかを評価する指標です。具体的には、製品の強度・耐久性・使いやすさなどが、当初設定した基準に適合しているかをチェックします。
次に製造品質は、生産工程での不良品発生率や製品のバラつきを管理する指標となります。この品質を維持するためには、設計段階での正確な図面情報の管理や不良部品の徹底した精査に加え、作業標準の確実な遵守と製造設備の精度維持が欠かせません。
さらにサービス品質では、製品納入後のアフターフォローや顧客サポートの充実度が問われます。具体的には、顧客からの問い合わせへの迅速な対応や、的確なメンテナンスサービスの提供などが含まれます。
このように品質向上の取り組みは、不良品の削減にもつながり、その結果として手戻り作業が減少し、コストと納期の改善にも好影響を与えます。
Cost(コスト)
Cost(コスト)は、直接費用と間接費用など、製品の製造にかかる総費用のことです。
直接費用には、製品の素材となる部品や材料などの原材料費、製造工程に関わる作業者の人件費、製造設備の維持費や減価償却費などの設備費が含まれます。
一方、間接費用としては、原材料や完成品の保管にかかる在庫管理費、輸送や保管に関連する物流費、さらに製造部門の運営に必要な一般管理費などが挙げられます。
コスト管理の重要なポイントは、ムダの削減と生産性向上の両立です。具体的な取り組みとしては、過剰な在庫を持たない「適正在庫管理」や、作業の標準化による「工数削減」などが効果的です。
さらに、品質向上に取り組むことで不良品を削減できたり、納期を遵守することで緊急対応のコストを抑制できたりするなど、他のQCD要素との相乗効果も期待できます。
Delivery(納期)
Delivery(納期)は、製品の受注から顧客に届けるまでの時間のことです。
製造業においては、調達・製造・物流の3つのリードタイムの適切な管理が求められます。まず調達リードタイムでは、原材料や部品の発注から入荷までの期間を管理します。この過程では、サプライヤーとの納期交渉を適切に行い、必要な在庫を確保することが重要です。
次に製造リードタイムは、生産計画の立案から製品完成までに要する時間を指します。この期間を短縮するためには、工程間の待ち時間を削減し、作業の効率化を図ることがポイントです。
そして物流リードタイムは、製品の出荷から顧客への配送完了までの期間を表します。輸送ルートの最適化や倉庫での保管効率を高めることで、配送時間の短縮が可能です。
これらの納期管理を適切に行うことで、顧客の期待に応えられるだけでなく、在庫の最適化や生産計画の精度向上につながります。さらに、急な納期変更にも柔軟に対応できる体制を整えることで、顧客満足度の向上が期待できます。
QCDから派生した言葉
製造業の現場では、QCDをベースに新たな要素を加えた言葉が生まれています。主な派生語とその特徴は以下の通りです。
用語 | 追加要素 | 概念・特徴 |
QCDS | Safety(安全) | 作業者の安全確保と製品使用時の安全性を重視 |
QCDF | Flexibility(柔軟性) | 生産ラインの変更や急な注文への対応力 |
QCDE | Environment(環境) | 環境負荷の低減と持続可能な生産体制を重視 |
QCDSE | Safety(安全)とEnvironment(環境) | 安全性と環境配慮を同時に追求 |
QCDSM | Safety(安全)とMorale(士気) | 従業員の安全と働きがいの向上を目指す |
このように、時代のニーズに合わせて進化を続けるQCDは、より包括的な管理指標として活用されています。
QCD管理が重要な理由
製造業において、QCD管理は企業の競争力を左右する重要な要素です。品質・コスト・納期のバランスを適切に保ち、取引先の期待に応える製品を提供することで、信頼関係を築き、継続的な取引を実現できるでしょう。
QCD管理を適切に行うことで、製造現場にさまざまな効果をもたらします。例えば、品質管理の徹底により不良品が減少し、手戻り作業が削減されます。また、在庫を最適化することで保管コストを抑制できるほか、作業の標準化によってリードタイムを短縮することも可能です。
特にグローバル競争が激化する現代では、QCDの継続的な改善が企業の存続を大きく左右します。企業の競争力を高めるためには、これら3つの要素を常に意識し、改善を続けていく必要があります。
また、QCDの大きな特徴は、品質・コスト・納期の3要素が密接に関連し合っている点です。一つの要素を改善することで、他の要素にも好影響が波及する相乗効果が期待できます。そのため、各要素のバランスを考慮しながら改善活動を進めることが、QCD管理を成功に導く重要なポイントとなります。
QCDの優先順位
製造業における現場のQCDの優先順位は、、品質(Quality)、納期(Delivery)コスト(Cost)の順で考えられています。
まず品質が最優先とされる理由は、製品の品質こそが顧客との信頼関係の基盤となるためです。品質の安定は、不良品による取引停止リスクを回避できるだけでなく、手戻り作業の削減によるコスト低減や、生産効率向上による納期短縮といった好循環を生み出します。
次に納期が重視されます。部品の確実な納品がなければ、生産活動そのものが成り立ちません。納期を守ることは、顧客との信頼関係を維持するうえでも不可欠です。
最後に位置付けられるコストは、納期と品質を確保したうえで、継続的な改善を進めていく要素です。原価低減は確かに企業利益に直結する重要な課題ですが、これを追求するあまり納期や品質を犠牲にしてはなりません。
ただし、このような優先順位は絶対的なものではありません。業界特性や企業戦略、製品特性によって、異なる優先順位付けが必要となることもあります。重要なのは、自社の状況に応じて適切な優先順位を設定し、バランスの取れたQCD管理を実現することです。
QCD管理の課題
製造業における品質・コスト・納期(QCD)の最適化に必要な知見の継承が、十分に進んでいない現状が明らかになっています。製造業の従事者1,000名を対象とした調査によると、品質管理のノウハウ、製造トラブルへの対応方法、生産・納品の管理に関する知見は、QCD管理において特に重要な項目とされており、全回答の55.6%を占めています。
上位3項目のQCDに関する内容(全体の55.6%)が特に重視されている
出典:「キャディ 製造業の知見継承調査」CADDi(PR TIMES)
しかし、これらの重要な知見の保存・共有方法について、42.6%の企業が「ない」と回答しており、知見継承の仕組みが確立されていない実態が浮き彫りとなりました。また、知見共有の方法が存在する企業でも、基幹システム・業務システムの活用は40.8%に留まり、多くの企業がExcelなどのデジタルデータや口頭での伝達に依存している状況です。
このように、QCD管理に必要な知見の継承方法が確立されていない現状は、製造業の競争力維持・強化における大きな課題となっているでしょう。
QCD管理にはデジタルツールの活用がおすすめ
製造現場のQCD管理において、デジタルツールの活用はもはや必須です。デジタル化により、これまで人手に頼っていた業務を一部自動化・効率化でき、これまでよりも負担を減らしつつ、QCD最適化が可能です。
製造業AIデータプラットフォーム「CADDi」
QCD最適化に役立つシステムの一例としては、製造業AIデータプラットフォーム「CADDi」が挙げられます。
CADDiはデータを収集し活用するのに役立つシステムで、以下の2つで構成されています。
- 「CADDi Drawer(キャディ ドロワー)」:設計、調達、生産とあらゆる部門に対応。連携性が高く、PLMやERPとも連携できるため、脱サイロ化もできる
- 「CADDi Quote(キャディ クオート)」:調達に特化したシステムで、見積もり業務の効率化、サプライヤー選定の最適化が可能である
前提として、どちらのシステムも、紙やCADデータ、Excelファイル、PDFなどフォーマットがバラバラなデータを高精度なAIで整理(構造化)し、同じシステム内で一元管理・検索できるようになります。
CADDi Drawerは検索性の高いデータプラットフォームで、キーワードやラフイラスト、類似図面の画像で目的の図面を瞬時に検索できるため、情報収集・活用が容易になります。
キーワード検索や類似図面検索で、過去の図面周辺情報を参照できるイメージ
類似図面の活用による流用設計時の工数削減や、過去の製造トラブル事例の参照により同じ問題の再発防止ができるようになるなど、各工程でのQCD最適化に役立ちます。
CADDi Quoteは、調達に特化したシステムで、調達業務のQCD最適化に活用可能です。システム上で見積依頼・査定を行うことで、発注業務を効率化できます。また、発注実績が自動的に蓄積され、AIによる最適な調達先の提案も受けられます。これにより、これまでベテラン社員の経験に頼っていた判断を、データに基づいて行えるようにもなります。
過去の発注実績をシステム上で有効活用できるイメージ
それぞれQCD最適化での活用例は以下表の通りです。
QCD最適化での活用例 |
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CADDi Drawer |
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CADDi Quote |
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CADDiは一例ですが、このようにデジタルツールを活用することによって、QCD管理の質を高められます。
QCD最適化なら、「CADDi」 |
効果的なQCDの改善方法
効果的にQCDを進めるには、課題の可視化や改善策の実行などを行っていきましょう。
QCDの改善ポイント
QCDの改善では、PDCAサイクルの計画(Plan)段階で、現状分析と課題の可視化を行うことが重要です。具体的には、不良品率の推移、製造コストの内訳、工程別のリードタイムといった定量データを収集・分析します。この分析により「特定の部品での不具合集中」などの具体的な課題が明確になります。
ただ、IoTシステムやデジタルツールを導入して、理想的なデータ収集・分析体制の構築には時間がかかります。そのため、まずは実現可能な範囲で概算値や目標値を設定し、具体的な施策を実行しながら段階的に実態を把握していくとよいでしょう。
各要素の改善施策
この章ではQCDの各要素についての、詳細な改善方法について解説します。
Q(品質)の改善方法
品質改善を効果的に進めるには、まず不良品率やクレーム件数などの品質データを収集・分析し、現状を正確に把握することが重要です。データ収集では、収集頻度が適切か、分析に必要なデータがそろっているか確認します。また、得られたデータから不良品発生の要因分析を行い、改善すべき工程や作業を特定します。
これらを効率的に行うには、AIやデジタルツールなど、テクノロジーを活用した品質管理が有効です。
C(コスト)の改善方法
コスト改善では、材料費、労務費、製造経費などの内訳を詳しく分析し、どの部分でコストが増加しているのか、その要因を特定します。
具体策としては、調達先の見直しや発注ロットの最適化などが効果的です。特に設計段階から原価低減を意識することで、品質を維持しながら効率的なコストダウンが可能になります。
また、作業の標準化や自動化を進めることも重要です。ムダな作業や手待ち時間を削減することで人件費の抑制につながります。
D(納期)の改善方法
納期改善では、受注から出荷までの各工程のリードタイムを正確に把握し、ボトルネックとなっている工程を特定することが重要です。まず、材料調達、製造、検査、出荷などの各工程での所要時間を測定し、工程間の待ち時間も含めて分析します。
材料調達の改善では、サプライヤーとの関係強化や発注方法の見直しが有効です。例えば、主要サプライヤーとの情報共有を強化し、納期遅延リスクを事前に把握するなどが挙げられます。
製造工程の改善では、作業の標準化やボトルネック工程の能力向上が鍵となります。具体的には、作業手順の見直し、設備レイアウトの最適化などを通じて、製造リードタイムを短縮します。
このように各工程での課題を明確化し、作業を最適化すると、納期遅延の改善につながります。
サプライチェーン分析も有効
サプライチェーン分析は、調達部門における部品調達の最適化を目指す分析手法です。
調達部門では日々の発注業務に追われ、既存の取引先との関係を継続しがちです。しかし、より高品質な部品の提供や、安定した納期での供給が可能なサプライヤーが他にも存在する可能性があります。そこでサプライチェーン分析では、分析を通じて、品質(Quality)、コスト(Cost)、納期(Delivery)の3つの観点から最適な調達先を見つけ出し、部品調達のQCD最適化を図ります。
方法としては、コストが高い部品や調達が困難な部品を中心に、発注履歴や発注金額、品質トラブルなどの情報を分析することでより適切なサプライヤーの選定を目指しますが、詳細は以下をお読みください。
関連記事:サプライチェーン分析のやり方は?QCDの最適化を果たす方法を解説
QCD最適化を推進した事例
最後に、QCD最適化を推進した事例を紹介するので、推進イメージを掴むうえで参考にしてください。
課題
ヤンマーホールディングスでは、図面やBOM(部品表)を管理するPDM、購買情報を管理するEDIなど、各システムが個別に最適化されていました。その結果、部門間でデータが分断され、製造業の重要資産である図面や購買データの有効活用が困難な状況でした。
成果
この課題を解決するため、同社は製造業データ活用クラウド「CADDi Drawer」を導入。同システムには、分断されたデータを統合し、QCD最適化などに有益なインサイトを得られる機能が充実しています。導入後、図面の検索・選定・査定・分析・情報連携・人材育成の効率化が進展。それによって、現場では図面の標準化や流用設計の活発化、コスト意識の向上といった効果が確認されました。
参考:「ヤンマー、CADDi Drawer を導入でQCD最適化を推進」CADDi
まとめ
製造業において、QCDの効果的な管理は競争力向上の要となります。品質・コスト・納期の3要素を適切に管理するには、過去のデータを有効活用したアプローチが必要です。
とはいえ各種分析に活用できるような構造化された綺麗なデータを作成することは非常に難易度が高く、日々の業務に加えてデータ整備まで行うことは現実的ではないでしょう。
このような課題に対して、CADDi Drawerは効果的なソリューションを提供します。関連資料や図面の情報を自動で解析、構造化し各種データ分析に活用できる基盤を自動で作成可能です。図面検索時間の削減、不良品の早期発見、設計段階での原価低減といったQCD管理の向上に貢献します。業務効率や生産性の向上を目指す企業様は、ぜひ導入をご検討ください。