AI活用で見積もり業務を効率化|負担を軽減する方法や注意点を解説
見積書の作成は、顧客ごとに異なる要件に基づき複雑な計算を行う必要があり、ミスがないかのチェックなどに膨大な時間と労力がかかります。また、属人的な業務になりがちなため、担当者によって品質やスピードにばらつきが出てしまう、といった課題を抱えている企業も多いはずです。
こうした課題を解決し、劇的に業務効率化を実現するのがAIを活用した見積もりです。この記事では、AIを活用した見積もりの基礎知識から業務効率化のために押さえておきたいポイントをご紹介します。
その見積もり業務、AIで効率化しませんか?
「見積もりのたびに過去の類似案件を探し回っている」「価格設定の根拠が曖昧で時間がかかる」そんな見積もり業務の課題を抱えていませんか?過去のデータが活用できず、毎回ゼロから見積もりを作成していては、業務効率化は望めません。
「CADDi Drawer」なら、AIが過去の図面・見積もりデータを自動解析し、類似案件を瞬時に検索。過去の見積もり情報や購買データを活用して、根拠のある見積もりを短時間で作成できます。
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目次
AIによる見積もり自動化・効率化の方法
従来、見積もり作成は人の手による煩雑な作業が必要でしたが、AI搭載のシステムを活用することによって、過去の受注情報などのデータに基づき効率的かつ品質高く見積もり作成が行えるようになりました。AIでの見積もり業務の効率化には、主に以下2つの方法があります。
- ChatGPTのような汎用型AIを活用する方法
- AI搭載の見積もり支援システムを使用する方法
それぞれの概要を解説します。
ChatGPTのような汎用型AIを活用する
ChatGPTのような汎用型AIでは、以下のようなプロンプトを用いて見積書の作成を一部効率化できます。
▼プロンプトのイメージ
特注部品〇〇の製造の見積もりを顧客への提案用として作成してください。
|
ChatGPTのような汎用型AI活用の最大のメリットは無料/安価で利用できることです。しかし、詳細は後述しますが、見積もり精度が低く修正負荷が大きくなりやすい点には注意が必要です。
AI搭載の見積もり支援システムを活用する
「AI搭載の見積もり支援システム」は、以下の2種類に大別できます。
- 見積もり計算を直接支援してくれるシステム
- 見積もり計算を間接的に支援してくれるシステム
見積もり計算を直接支援してくれるシステムでは、過去の販売データに基づく自動見積もりや見積もりのテンプレート機能の活用により、業務効率化が可能です。
また、見積もり計算を間接的に支援してくれるシステムでは、過去の類似部品の見積もり・受注情報など、新規案件の部品見積もりに役立つ情報を瞬時に参照することができます。
過去の図面・見積もりデータが瞬時に見つかる
AI見積もりの精度を高めるには、過去の類似部品データの活用が不可欠です。しかし「あの部品の見積もり、どこに保存したっけ?」と探し回った経験はありませんか?
「CADDi Drawer」なら、蓄積された図面データから類似形状を自動検索し、過去の見積もり・発注実績を瞬時に参照可能。AIによる見積もり支援の土台となるデータ活用基盤を構築できます
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ChatGPTのような汎用型AIで見積書を作成する手順
一例として、ChatGPTで見積書の作成を一部効率化する方法をご紹介します。
STEP1.必要な情報を整理する
ChatGPTで精度の高い見積書を作成するには、明確な指示出しが不可欠です。まずは、誰に見せるのか、何のために使うのかなど、見積書の情報を明確にしましょう。例えば、製造業の特注部品の見積書を作成する場合は、以下のように情報を整理します。
項目 | 内容 |
プロジェクト名 | 具体的なファイル名、URLなどを記載 |
見積もり目的 | 顧客への提案 |
対象範囲 | 部品製造、検査、梱包、納品 |
図面 | 添付ファイル参照(具体的なファイル名、URLなどを記載) |
材料 | ステンレス鋼 SUS304 |
数量 | 100個 |
納期 | 2ヶ月 |
このように情報を整理することで、ChatGPTへの的確な指示出しが可能となり、企業の要望に合わせた見積書を作成できます。
STEP2.プロンプトテンプレートを作成する
プロンプトテンプレートとは、ChatGPTへの指示を効率化するための雛形です。ChatGPTで見積書を作成する際は、以下のようなプロンプトを用いて、指示や質問を入力します。プロンプトを活用することで、的確な回答を引き出せるため、より精度の高い見積書を作成できます。
なお、添付した”類似製品△△の過去の見積もりデータ(金額:50万円)を参考に、見積もりを作成してください。 |
必要な情報を整理したり、対話を通じて調整したりすることで、段階的にアプローチの精度を上げられるでしょう。
本格的な業務負担削減は、システムの活用がおすすめ
ChatGPTなどの汎用型のAIは、製造業などにおける見積もり業務の支援には長けていないため、出力する内容に粗が生じやすく、その修正に通常の人力作業以上の時間を取られてしまうことがよくあります。また、業務効率化の範囲も非常に限定的であるため、見積もり業務時間の削減や業務の属人化の解消などの課題を解決するのは現実的ではありません。
一方で、AI搭載の見積もり支援システムなら、精度の高い見積もりを効率的に行いやすくなるため、ChatGPTなどの汎用型AIに比べて見積もりの手間を大幅に削減できます。
AI搭載の見積もり支援システムを導入するメリット
以下では、AI搭載の見積もり支援システムを導入するメリットをより具体的に紹介します。
作業時間の大幅削減ができる
AI搭載の見積もり支援システムを導入することで、見積もり周辺作業の効率化が可能です。部品受注の新規見積もりをする際には、価格の決定に過去の見積もり情報が役立てられますが、過去の見積もり情報は社員の頭の中や図面保管倉庫、Excelなどに散在していることは少なくありません。そのため、それらの情報の探索に数日など費やしてしまうことがよくあります。
しかし、例えば製造業向けのAI搭載の見積もり支援システムであれば、システム上に過去の図面・受注情報が蓄積されており、それらを瞬時に検索・参照できるため、「新規案件の部品を製造するためにはいくらが適正か」を手軽に判断できます。また、メールや電話、FAXで対応・確認する手間・時間の削減も可能です。そのため、見積もり作成にかかる時間を大幅に短縮可能です。
業務の標準化・属人化の解消が実現できる
例えば、AI類似図面検索機能が搭載されており、過去の部品見積もり情報を参照できるシステムを活用することで、それまでベテラン社員の頭の中にしかなかった知見を全社員で共有できるようになります。新人であっても過去の製造や品質情報をシステム上で参照でき、それを参考に見積もりを行えるようになるため、ベテランと同じ判断基準で見積もりを行えるようになります。そのようにして見積もり業務の標準化が進むことで、見積もり業務の属人化の解消ができるとともに、見積もり作成スピードの向上も可能です。
顧客対応を迅速化できる
従来、見積書の作成には多くの時間を要していましたが、AI搭載の見積もり支援システムを活用すれば、先述の通り見積もりの作成プロセスを効率化できます。そのため、見積もりに必要な情報の収集のために、メールや電話でやり取りしていたときよりも、より迅速に部品の見積もりを行えるようになります。メーカーへの見積もり送付をより迅速に行えるようになることで、顧客を待たせる時間が減り、顧客満足度の向上も期待できるでしょう。
見積もりに必要な過去データを瞬時に発見
「類似図面はあるはずなのに見つからない」「過去の見積もり価格を探すだけで時間がかかる」そんな経験はありませんか?見積もり精度を高めるには、過去の類似案件データの活用が不可欠です。
「CADDi Drawer」なら、AIが図面を自動解析し、形状や仕様から類似部品を数秒で検索。過去の見積もり・発注実績も紐付けて管理できるため、根拠のある価格設定と迅速な見積もり作成を両立できます。
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AI搭載の見積もり支援システムのデメリット・注意点
AI搭載の見積もり支援システムを活用する際には、以下の点に注意しましょう。
初期導入コストが発生する
一般的には、AI搭載の見積もり支援システムの導入には、初期費用が発生します。これらの費用は、導入するシステムの規模や機能、自社の状況によって大きく異なり、既存システムとの連携が必要な場合は追加費用が発生することもあります。導入コストを踏まえ、導入によるメリットとデメリットを比較検討し、自社にとって最適なシステムを選択することが重要です。
複雑なケースは人力で判断が必要
見積もり作成においては、AIだけでは対応できない複雑なケースが存在します。例えば、新しいタイプの案件や、仕様が複雑で変動要素が多い案件、例外的な条件が多い案件などは、AIが過去のデータに基づいて正確な見積もりを出すのが難しいでしょう。
現状、多くのシステムが積算見積もりで金額想定を出す形式です。単純な加工品や汎用品のようなものであれば問題ありませんが、上記のような例の場合、期待した精度を出すことは非常に難しいでしょう。複雑な形状の一品ものの見積もりは、言語化やロジック化の難易度が極めて高く、職人の目線にAIはまだまだ到達していません。
このようなケースでは、人間の経験や判断力が必要不可欠ですが、過去の類似図面・受注情報の詳細を検索できるシステムであれば、過去の受注情報を元により適正な価格での部品の見積もりを行いやすくなります。
AI搭載の見積もり支援システムの選び方
AI搭載の見積もり支援システムの導入を検討している方に向けて、システム選定時のポイントをご紹介します。
見積もりの準備に手間がかからないシステムを選ぶ
AI搭載の見積もり支援システムを導入する際の重要なポイントは、見積もりに必要なデータ入力・その事前準備の手間を最小限に抑えるシステムを選定することです。例えば、製造業向けのAI見積もり支援システムの中には、図面管理番号(例:DR-2025-M-042-03)による検索が必要なシステムもありますが、その場合、そもそも膨大な資料の中から図面管理番号を探す手間・時間が必要です。
一方で、例えば部品のポンチ絵やキーワード(部品名:「フランジ」など)での検索に対応しており、過去の膨大な類似図面・部品の見積もり金額をシステム上で瞬時に参照できる機能を備えているシステムであれば、見積もりに必要な情報を手軽に用意できます。結果として、見積もり業務の効率化が可能です。
サポート体制が充実しているものを選ぶ
システムの導入では、トラブル対応、定期的なメンテナンスなど、サポート内容の有無を事前に確認しましょう。特に海外製システムでは、サポートがなかったり、日本語対応していなかったりする場合もあるので注意が必要です。無料トライアルなどで実際のシステムに触れておき、どのようなサポートがあると便利なのかを確認しておくのがおすすめです。
AI見積もり支援システムの導入事例
この章では、AI見積もり支援システムの導入事例を紹介します。
データ統合による見積精度向上を実現した事例|仲精機株式会社様
精密金属部品加工を手掛ける仲精機株式会社(1952年創業、大阪府守口市)では、拠点ごとにデータの収集方法や蓄積場所にばらつきがあり、見積もり業務において過去のデータ活用が進まないという課題を抱えていました。
顧客から受注する部品や装置の中には、以前製造したものと類似した形状や仕様変更品も多く、見積価格の一貫性を保つことが顧客からの信頼維持において重要でした。しかし、類似図面の検索は担当者の記憶に頼らざるを得ず、時間がかかるだけでなく、記憶になければ探すことも困難な状況が続いていました。
同社が選択したのは、製造業データ活用クラウド「CADDi Drawer」でした。展示会でキャディのブースに立ち寄った営業本部長が、図面を軸としたデータ活用の可能性に着目し、導入を決定したのです。
CADDi Drawerの導入により、図面に各種データを蓄積し、データを見る場所を一本化することで、見積作業の時間短縮と精度向上を実現しました。拠点間の垣根をなくしたデータ活用により、それまで記憶頼りだった類似図面検索が効率化され、紐づけられたデータを活用した根拠のある見積もりが可能になっています。
導入後の主な成果
- 拠点間のデータ活用統一による業務効率化
- 見積作業時間の大幅短縮と精度向上
- 類似図面検索の効率化による業務負荷軽減
- 顧客からの信頼獲得に繋がる一貫した見積価格の実現
参考:仲精機株式会社様|製造業AIデータプラットフォームCADDi
図面データ活用で業務効率化を実現した事例|株式会社島精機製作所様
ニット製造機器のグローバルリーディングカンパニーである株式会社島精機製作所(1962年創業、連結売上高325億円、従業員1,762名)では、同業他社の台頭による競合環境の激化に対応するため、コストリダクションに取り組んでいました。
しかし、類似図面の検索や比較に多くの時間を要し、過去の部品データや調達情報が属人化していることで、効率的なコスト分析や根拠のある調達戦略の立案が困難な状況でした。さらに、仕入れ先との対話に十分な時間が確保できず、関係構築の機会が限られていることも課題となっていました。
同社が選択したのは、製造業AIデータプラットフォーム「CADDi」の導入でした。特に伴走型のサポート体制とフィードバックへの対応の早さが決め手となり、CADDi DrawerとCADDi Quoteの2つのアプリケーションを活用した業務改革を開始しました。
導入により、類似図面検索の精度と効率が向上し、過去の調達情報や価格データが一元管理され、コストの根拠を明確にする体制が整いました。見積業務の効率化により特定のスキルや知識に依存せず業務を進められる基盤が構築され、生み出された時間を仕入れ先との対話や価値創造に活用することで、グローバル市場での競争力強化を目指しています。
- 類似図面検索精度の大幅向上による業務効率化
- 過去の調達情報・価格データの一元管理実現
- 見積業務の属人化解消と標準化推進
- 仕入れ先との価値共創による競争力強化
参考:株式会社島精機製作所様|製造業AIデータプラットフォームCADDi
一品一様生産での図面活用改革事例|株式会社ケーテー製作所様
充填機の開発・生産・販売を手掛ける株式会社ケーテー製作所(1910年創業、従業員168名、売上高31億7千万円)では、一品一様な受注生産という事業特性から、営業・設計・生産・調達の各業務に多くの間接コストが発生していました。
顧客の要望に応じて一から設計を行うため、過去の図面を参照する文化がなくなり、設計に多くの工数がかかっていました。その結果、リソース不足により納期の先延ばしをお願いせざるを得ないケースや、他社に案件を奪われるケースも発生していました。また、営業部門では部品交換の見積もり提示に半日かかることもあり、調達部門でも過去の似た部品の発注履歴との照合作業が煩雑で時間がかかる状況でした。
同社では過去の図面を適切に探し活用できる環境をつくることを打開策として特定し、製造業データ活用クラウドCADDi Drawerを導入しました。図面を”形状”で検索できることに魅力を感じ、同社の現場にフィットすると判断したのが導入の決め手でした。
導入により、図面データの活用を起点とした部門横断の標準化・業務効率化の取り組みが推進されています。設計部門では図面の流用が可能になり、調達部門では過去の発注実績参照により見積もり取得の効率化が実現しました。現在は、顧客ごとの最適化と業務効率性の両立を目指し、データ蓄積と活用による会社全体の変革を進めています。
- 図面検索の効率化による設計工数削減
- 営業部門での見積もり提示時間の大幅短縮
- 調達業務における過去実績参照の効率化
- 部門横断での標準化・業務効率化推進
参考:株式会社ケーテー製作所様|製造業AIデータプラットフォームCADDi
まとめ
見積もり業務の効率化には、ChatGPTのような汎用型AIを活用する方法とAI搭載の見積もり支援システムを活用する方法があります。特に業務負担を大きく削減したい場合はシステムの導入がおすすめです。
AI搭載の見積もり支援システムを導入することで、作業時間の大幅削減や顧客対応の迅速化というメリットが得られます。システムを選ぶ際は、見積もり準備の手間が少なく、既存システムと連携しやすいもの、また充実したサポート体制があるものを選びましょう。
AI搭載の見積もり支援システムの一例であるCADDi Drawerでは、導入によって見積もりのための情報収集時間が「数日→数分」に短縮した事例や、見積もりスピードの向上を果たした事例があります。システムの選定に迷われた方はぜひこの機会にご検討ください、
見積もり業務を根本から変革しませんか?
本記事でご紹介したAI見積もり支援の効果を最大化するには、過去のデータを効率的に活用できる環境が不可欠です。「類似図面がすぐに見つからない」「過去の見積もり情報が散在している」といった課題を解決し、データドリブンな見積もり業務を実現しませんか?
「CADDi Drawer」は製造業の図面・見積もりデータ活用に特化したAIプラットフォーム。3つの導入事例でご紹介したように、見積もり精度向上と業務効率化を同時に実現できます。
\見積もり業務時間を最大80%削減/