杉江精機株式会社は、自動車業界向けを中心に、精密治工具や部品、組み立て装置などの設計、製作を行っている。創業から65年以上にわたり「超高品質をあたりまえにする」ことに取り組み、 品質を徹底追求した一切妥協のないものづくりをおこなってきた。高い安全性を満たすため、非常に厳しい品質基準が設けられる自動車業界において、杉江精機の製品は高い評価を得ている。
自動車業界は、カーボンニュートラルへの対応やEV化の波などにより、100年に1度といわれる変革期を迎えている。杉江精機においても、業務の効率化や新市場開拓などへの対応が急がれていた。その一つが見積もり業務の改善である。
杉江精機には日々多くの見積もり依頼がきていた。見積もり業務は営業部の曽根氏が1人で行っている。その数は1日あたり50から60件ほどであり、多い時には100件にも及ぶ。見積もりの際には過去の図面を参考にして金額を決めていくこともあったため、紙で残されている図面の中から記憶を頼りに探していた。しかし、長い歴史のなかで扱われた図面は膨大な量であり、記憶を頼りに探すのには限界がある。探し出すのに時間がかかり、非常に効率が悪い状態であった。なによりも、業務を1人で行っていたので、曾根氏が休みの際には見積もり業務自体が停滞してしまう。属人化を解消するとともに業務効率化を図り、誰でも短時間で正確な見積もりを出せる状態に改善する必要があった。
また、過去の図面の活用は見積もり業務以外でも発生する。製造現場では過去の図面を参考にして加工を行うことがあった。そのため、同じように記憶を頼りに探すか、経験豊富で多くの案件を知っている人に聞いて図面を探していた。探し出すのに1日がかりになるようなことがあり、見つけること自体が出来ないこともある。経験者がいなくなれば、図面の存在自体が分からなくなるので、探すこと自体が行われなくなる。残された膨大な過去の図面は、資産としての価値を失う可能性があった。