ローランド ディー.ジー.株式会社が製造する大判プリンターや歯科用切削工作機は、5〜6年前までニッチな市場にあった。しかし、中国系メーカーの台頭などにより市場の競争が激化。既存製品の販売よりも新製品のリリースが利益を上げる鍵となり、開発サイクルは従来の「2年以上」から「1年」へと、実質的な半減を求められるようになった。
開発サイクルの短縮という絶対的なスケジュールを守るため、同社では一つの策を講じていた。推進者である菅野マネージャーは、次のように語る。
「どうしてもスケジュールに合わせなきゃいけないとなると、やはりお金がかかるんですよ」
本来は量産メーカーで作るべき試作部品が、タイの量産ラインでは間に合わない。そこで、高額な日本の「特急試作メーカー」に先行して発注し、組み立て確認を行う。それと並行して、タイの「量産メーカー」にも同じものを発注する。
まさに、背に腹は変えられない二重発注だった。この策でリードタイムは守られたが、当然「コストがこんなに高くなっている。なんとか削減できないか」という次なる経営課題に直面することになる。
そこで、コスト削減の分析を進めると、根本原因が「出戻りの多さ」にあることが改めて浮き彫りになった。また、サプライヤーからは「『この曲げ加工はできないです』と前の担当の方に伝えたはずですよ」などと、何度も同じ指摘を受けている実態もあった。




