製造業AIデータプラットフォーム CADDi

CADDi
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社名
ローランド ディー.ジー.株式会社様
設立
1981年
業界
デジタルプリンティング・3次元入出力装置
事業内容
業務用大型インクジェットプリンターのデジタルプリンティング事業、3次元入出力装置の3D事業
ローランド ディー.ジー.株式会社様

事例 CADDi Drawer

日本とタイ、二拠点間の「情報の壁」を突破。日本では年間数千万円の特急試作コスト削減、タイでもデータ活用による本質的なコストリダクションを推進ローランド ディー.ジー.株式会社様

導入前・導入後

【日本】
①コスト:開発LT短縮のため、高額な特急試作メーカーとタイの量産メーカーへの「二重発注」が発生。年間数千万円のコストとなっていた。
②情報(図面・不具合情報):日本(R&D)にタイ(生産)の現場情報(不適合、製造難易度)が届かず、図面の出戻りが多発。

【タイ】
①情報(図面・ノウハウ):情報連携は「人頼り」。タイの現地スタッフが離職すると、貴重なノウハウがゼロになる状況だった。
②コストダウン活動:部品知識が日本に集中し、タイ側は本質的な提案が困難。「二重発注」の片方を受け続ける状況が続いていた。

【日本】
①コスト:高額な特急試作費用を大幅に削減できる見込みが立った。
②情報(図面・不具合情報):出図の出戻りを45%、新製品立ち上げのLTを1ヶ月削減。図面の信頼性が向上し、試作回数を3回から2回へ削減する試みも可能になった。

【タイ】
①情報(図面・ノウハウ):暗黙知をデータ資産として形式知化。ベテランでも把握困難だった類似部品を発見可能になった。
②コストダウン活動:タイのメンバーが自らデータを活用し、年間目標を大幅に上回る本質的なコストダウン提案を多数創出。

インタビュー

競争激化が招いた「開発サイクルの半減」。スケジュールを守るため二重発注も

ローランド ディー.ジー.株式会社が製造する大判プリンターや歯科用切削工作機は、5〜6年前までニッチな市場にあった。しかし、中国系メーカーの台頭などにより市場の競争が激化。既存製品の販売よりも新製品のリリースが利益を上げる鍵となり、開発サイクルは従来の「2年以上」から「1年」へと、実質的な半減を求められるようになった。

 

開発サイクルの短縮という絶対的なスケジュールを守るため、同社では一つの策を講じていた。推進者である菅野マネージャーは、次のように語る。

 

「どうしてもスケジュールに合わせなきゃいけないとなると、やはりお金がかかるんですよ」

 

本来は量産メーカーで作るべき試作部品が、タイの量産ラインでは間に合わない。そこで、高額な日本の「特急試作メーカー」に先行して発注し、組み立て確認を行う。それと並行して、タイの「量産メーカー」にも同じものを発注する。

 

まさに、背に腹は変えられない二重発注だった。この策でリードタイムは守られたが、当然「コストがこんなに高くなっている。なんとか削減できないか」という次なる経営課題に直面することになる。

 

そこで、コスト削減の分析を進めると、根本原因が「出戻りの多さ」にあることが改めて浮き彫りになった。また、サプライヤーからは「『この曲げ加工はできないです』と前の担当の方に伝えたはずですよ」などと、何度も同じ指摘を受けている実態もあった。

競争激化が招いた「開発サイクルの半減」。スケジュールを守るため二重発注も

年間数千万円の削減を見込んだ日本での導入。試作回数は3回から2回へ

リードタイム削減とコストダウンという二つの命題を解決する手段を模索する中で、同社は製造業AIデータプラットフォームCADDiと出会う。日本でのCADDi導入はスムーズで、その推進ロジックも明快だった。

 

「『現状は、特急試作で年間数千万円使った二重発注が入っているが、この部分がなくなります』ということの説得力が非常に大きかったです」

 

工数削減といった曖昧な成果ではなく、キャッシュアウトが明確に減るという事実が経営陣の判断を後押ししたのだ。

 

また、出図の出戻りが45%削減されたほか、サプライヤーから同じ指摘を受ける回数も減り、新製品の立ち上げのリードタイムは1ヶ月削減された。

 

そして、CADDiの導入は、サプライヤーとの関係性にも変化をもたらした。

 

従来サプライヤーに図面を共有するのは、ある程度仕様が固まった試作の2回目(TD)からだった。最初の試作(FD)から共有してしまうと、サプライヤー側にとっては「まだ自社が製造するかどうかもわからない部品」に対して改善提案を求めることになり、混乱を招きかねないからだ。

 

しかし、CADDi上に過去の品質情報やサプライヤーからの提案が「知見」として蓄積され図面と紐づくことで、図面自体の信頼性が向上。その結果、今では「一番初めから共有してもらって大丈夫ですよ」という関係性が構築されてFDの段階から図面を共有できるようになった。これにより、従来3回行っていた試作プロセス(FD,PD, MD)そのものを2回に削減できるという経営的にも非常に大きな成果が生まれた。

 

日本での導入が成功し、サブスクリプションの更新を迎えるタイミングで、菅野氏のタイへの赴任が決まった。

 

「そのとき『私がタイに来れば、日本で困っていたこともこちらに来て解決できる』と思ったんです」

年間数千万円の削減を見込んだ日本での導入。試作回数は3回から2回へ

タイ固有の「人頼りの情報連携が限界」という課題

しかし、上記の「二重発注」(の片方) を受けていたこと以外に、タイにはタイ固有の課題もあった。タイのメンバーは非常に真面目に品質対応を行い、サプライヤーからの是正報告書を丁寧にファイリングもしている。しかし、その肝心の「失敗を繰り返さないための大事なデータ」は、担当者のフォルダに眠ったままだった。

 

「それを実際に使うのは誰かというと、おそらく設計だったり、本来は日本側のメンバーもそのデータを知らないといけないはずです。 だけど『フォルダーに入ってます』と言われても、誰も検索していない現状がありました」

 

ファイル名が統一されているわけでもなく、膨大なデータの中から必要な知見を探し出すことは不可能に近い。拠点間にまたがる「フォルダ管理」は限界を迎えていた。

 

さらに、冒頭の急激な開発スピードアップが開発と製造の現場に乖離を生じさせており、特に深刻だったのが、リードタイム短縮の中で頻発する「間違いによる出戻り」だった。

 

この「出戻り」の最大の要因は、日本とタイの両拠点間の「情報の壁」にあった。同社では、開発が日本、主な生産現場がタイという体制を敷いており、タイの現場では「こういう部品は不適合が起こる」「これは難しい部品だ」といった製造ノウハウが日々蓄積される。しかし、その生きた情報が日本の設計者に届かないまま新しい図面が作成され、現場に渡った瞬間「いやいや、これは変えてほしいと言ったじゃないか」という手戻りが発生することもしばしばだった。

 

従来、この情報連携は完全に「人頼り」だった。日本側の担当者が出張ベースで現地・現物の情報を持ち帰っていたが、それだけでは不十分だった。さらに、タイは日本よりもジョブホッピングが一般的な国柄で、メンバーの転職も珍しいことではない。そうしてタイ側で情報源となっていた担当者が辞めてしまうと、日本側が補完しようにも、タイのローカルな情報は「ほぼゼロになる」という属人化の課題も抱えていた。

データが導いた、年間目標を大幅に上回る本質的なコストダウン提案

タイ拠点では、日本とは別に単独でのコストリダクションがKPIとして設定されていた。しかし、部品の仕様や過去の経緯を深く知らない現地メンバーが取れる手段は限られていた。

 

この状況を打開するためにCADDiが試用された。週に2時間「年間購入量が高い部品」を持ち寄る会議を開催。CADDiのアプリケーションである製造業データ活用クラウドCADDi Drawerの類似検索の機能等を使い「類似の部品はどれか?」「過去にはどういう金額で発注していた?」「金額の変遷は?」「材質や色は?」「このキャスターよりこちらのキャスターの方が安いけど何が違う?」などといった細かい議論を重ねていった。

 

検証結果は劇的だった。サプライヤーの知見に頼るのではなく、自社のデータ資産を活用することで、わずか数ヶ月で58部品、年間目標500万タイバーツの倍以上ものコストを削減できる見通しが立ったのである。

 

日本での導入時と同様、この「大幅なコストリダクションが可能」という具体的な成果予測を元手に、タイ拠点へのCADDi正式導入が決定した。

データが導いた、年間目標を大幅に上回る本質的なコストダウン提案

情報資産を核としたグローバル展開へ

日本とタイ、両拠点でデータ活用を推進してきた菅野氏は、その先の未来を明確に見据えている。

 

「現状、調達の主導権は日本側にあります。ただ、調達はもう日本でなくても回していけるとなれば、日本ではもっと違うことをやっていけるのではとも考えられます。タイのことはタイで情報を持っているのですから、タイ側でサプライヤーも決められるし、段階的に権限をタイに移行するということも可能になるはずです」

 

これは、単なる権限移譲ではなく「情報を持っているところで権限を持てばいい」というグローバル基準の考え方へのシフトを意味する。従来は日本が「マザー工場」としてタイを支援する構図だったが、データという共通言語が整備されれば、その関係性は変わり得るのだ。

 

「『マザー工場』という考え方も、情報の溜め方や伝え方次第です。いつまでも『子ども』のように支援しなくても生きていける。『子ども』はすぐ育ちますから、必ずしも『親子』である必要はないのです」

 

CADDiによって実現した「情報の持ち方」──すなわち、暗黙知を「パッケージ化されてすぐ使える資産」にすることが、こうしたグローバル・ビジョンを実現していくための鍵となる。同社はインドにも支社を持ち、将来的には他地域への進出といったことも考えられるかもしれないという。その時「タイでやったことはインドでもすぐできる」状態になっていれば、そのままデータ活用の本質的価値として効果を発揮するだろうと菅野氏は示唆する。

 

ローランド ディー.ジー.の挑戦は、データという共通資産を核とし、単なる拠点間の情報連携に留まらない、グローバル製造業のあるべき姿を指し示している。

情報資産を核としたグローバル展開へ
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