オリオンオートクラフト株式会社は、オリオン機械株式会社のグループ企業である、オリオンワイヤリング株式会社とアルプス計器株式会社が、2019年6月に合併して設立された。オリオンワイヤリングは、設計、加工、組み立て、配線、塗装、品質管理まで、産業用機械の一貫生産体制を持ち、多品種少量、特注対応を特長としていた。アルプス計器は、唯一無二の充電・蓄電技術を持った充電器・電源器メーカーであった。2社が合併することにより、経営資源の統合と効率化が図られ、多様化する市場やお客様のニーズへの対応力が強化された。社員数は、約5年で50名近く増え、業績も年々上昇している。
順調に業績を伸ばしているオリオンオートクラフトであったが、課題もあった。それは見積業務の属人化である。全ての見積業務は、知識と経験のある数名の担当者に任されていた。また、一貫生産で受注していた部門では、組み上がった製品全体の額での見積もりを行っており、部品単位の細かい見積もりデータが残されていない状態であった。経験のある担当者は、記憶を元に過去の例との差を考慮して、正確な見積り額を出すことが出来るが、経験のない者ではそれはできない。部品や作業内容を一つずつ積み重ねて見積り額を出そうとしても、データが残っていないので、新たに個別の金額を出す必要がある。担当者以外は見積業務を行うことが出来ず、不在の場合は業務が滞る可能性があった。また、担当者を急に増やすことも困難であり、退職などにより担当者が居なくなってしまったら、経営そのものに影響を与える問題となる。見積の詳細データを簡単に探し出せる形で残し、それを活用することで誰でも速やかに見積を出せる状態に変えていく必要があった。
技術部門でも課題をもっていた。充電器などのメーカーであり、産業用機械のサプライヤーでもあるオリオンオートクラフトは、多品種少量、特注対応で受注しているため、多くの設計図面を持っていた。同一、または似た形状の部品であれば、過去の図面を流用して設計すれば工数削減となる。しかし、多くの図面の中から希望する図面を探すのは、設計者の記憶が頼りであった。図番や図面名を正確に覚えていれば直ちに探せるが、分からない場合は、該当すると思われるファイルを一つずつ開いて確認するか、紙で残されたファイルをめくって探すことになる。非常に時間がかかり見つけることが出来ないことも多かった。業務効率改善のための新たなツールを求めていた。