株式会社草川精機は、半導体や液晶、食品、医療などの幅広い業界の金属・非金属精密機械部品の製造及び組立を行っている。大型のマシニングセンターや三次元測定機などの最新鋭設備を積極的に投入し、高い技術に裏打ちされた高精度、高品質の製品を短納期で提供することで、お客様から高い評価を受けてきた。
草川精機では、独自の製造情報管理ソフトを十数年前に導入している。システムの導入により、加工に使用するプログラムや工具が標準化されて管理されるようになった。これにより、プログラムを作る人と、加工を行う人がシステムを軸として分業できるようになり、人が変わっても同じように製造できるようになった。多くの製造業企業で問題となる技術継承や属人化の解消に、デジタル技術の活用により成功している。
製造部門における製造業DXに成功している草川精機であるが、全社的に見ると技術継承や属人化解消がまだ足りない部分があった。部門内、各部門間での情報共有が進んでおらず、個人の知識や経験、記憶により業務を進めている部分がまだ多くあったのだ。特に、図面を中心とした情報のやりとりは紙ベースで行われているものが多く、時間、コストの面で多くの課題があった。
例えば、お客様から受注した図面は、作業指示書をつけて製造部門に送られる。この時、加工プログラムを作成する人、検査をする人、出荷をする人などが、作成、確認に図面が必要となるので、各自でコピーする。購買や営業でも発注、見積もり等で必要になるのでコピーされる。これが受注の際に毎回発生するので、膨大な量の紙図面が発生していた。さらに、紙図面に注意事項や確認事項などを記入することがあり、それが各部門で個別に管理されていた。子図、孫図が増え、その存在は担当者しか分からないような状況となる。
また、類似案件の見積もりや再受注などの理由で過去の図面を見る必要が出た場合、紙ならば記憶を頼りにファイルをめくって探し、データ化されていてもファイル名や部品名を頼りに検索するしかなかった。探し出すのに時間がかかるので非常に効率が悪く、見つからない場合も多くあった。