富士油圧精機株式会社は、創業から50年以上、製本・印刷業界を主軸に、様々な業界に向けた自動省力化機械の開発・製造・販売を行っている。お客様の個別ニーズに卓越した技術開発力で的確に応え、業界内で高い評価を得てきた。
富士油圧精機は、標準設計の機械よりも、お客様の要望に合わせた一品一様の機械の比率が高いのが特徴だ。そのため、新規性の高い開発的な設計が多く、新たな図面を作成することが多い。しかし、過去に同様、または近い内容の設計案件があり、図面を活用できるものがあれば、探し出して活用していた。また、メンテナンス案件であれば、該当の機械の図面を元に部品を製造するので、過去の図面を探し出す必要があった。過去に設計・納入した製品について、一部の仕様を変更した形で再注文が入るような場合もあり、どのような設計が行われたのか、過去の図面を紐解く必要が発生することもある。設計部門に限らず、製造、調達、営業の各部門では、何年にも渡り蓄積されてきた図面情報、製造に係わる情報を探し出す作業を日々行っていた。
情報はサーバーに格納されたCADデータだけでなく、倉庫に保管された紙図面もあり、膨大な量である。探し出す作業に早くても10分以上。長ければ1日近くかかる負荷の高い作業であった。
更に、問題だったのが設計情報の属人化だ。CADで設計されたデータはサーバーに蓄積されていくが、設計者各人に割り当てられたフォルダに格納されていくだけなので、どこに、どの機械の図面があるのか設計者本人しか分からなくなる。設計者が異動、退職等でいなくなれば、本人に聞くこともできない。また、図面番号でしか検索ができないので、その図面がどのような形状、材質、用途の物であるか、ファイルを開くまで分からない状態であった。そのため、探すよりも新たに図面を作った方が早いと考え、過去の知見を活かすことなく、各自が新たに設計を進めて図面だけが増えていく状態が続いていた。
「データは山のようにあります。でもその存在を知らない。今までの知識や技術の引き継ぎも上手くいっていません。設計開発力が著しく減少していました。」と第ニ製造部部長の剱持氏は語る。