製造業AIデータプラットフォーム CADDi

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社名
川崎重工業株式会社
設立
1896年10月15日
従業員数
40,604人(2024年3月31日現在)
売上高
全社 2兆1,293億円 / 精密機械・ロボットカンパニー 2,415億円(2024年度)
業界
産業用ロボット
事業内容
船舶・鉄道車両・航空機・モーターサイクル・ガスタービン・ガスエンジン・産業プラント・油圧機器・ロボットなどの設計開発・製造・販売
川崎重工業株式会社

事例 CADDi Drawer

CADDi導入が、各部門でバラバラだった「課題感」統一のきっかけに 製造業AIデータプラットフォームCADDiで実現したパワープレー脱却と、調達・原価企画主導での数千万円のコスト適正化

導入前・導入後

①図面や購買情報などが各システムに分散。部門横断の情報検索が困難だった。②部門ごとに課題がサイロ化。また類似図面が探せず似たような図面を作成しがちだった。③事業の急成長に業務プロセスが追いつかず、各部門で業務が属人化していた。

①調達部門は一部のルーティン業務の工数を70%以上削減。創出された時間でより付加価値の高い業務へシフト。②設計部門は120超の図面を15まで標準化。金型の集約も進み、大幅なコスト適正化に貢献。③過去の図面や仕様へのアクセスが容易になり、引き継ぎや教育が円滑化。

インタビュー

目指したのは、「属人化」と「パワープレー」からの脱却

生産総括部 調達部 調達一課 林和輝氏 2

 

川崎重工業株式会社は、総合エンジニアリングメーカーとして、船舶・鉄道車両、バイク、産業プラント、精密機械、ロボットなど、多彩な事業を展開している。ロボット事業の中核となる精密機械・ロボットカンパニーロボットディビジョンでは、2030年までに現状比4倍の売上規模を目標として掲げている。

 

10年強で売上を3倍に伸ばすなど、急成長を続けてきた同社のロボット事業。しかしその裏側では、組織の拡大スピードに業務プロセスの整備が追いつかず、各所で「属人化」が進行していた。生産総括部調達部所属で、推進プロジェクトリーダーの林氏はこう語る。

 

林氏
「スピードを重視するあまり、業務効率が上がらないままパワープレーで仕事をしてしまう状況がありました。既存の競合は強力ですし、海外からの新規参入も多い。彼らに負けないためには、生産性の向上が喫緊の課題でした」

 

生産性向上という大きな命題を前に、同社はデータ活用の可能性を探り始め、製造業AIデータプラットフォームCADDiの導入を決めた。

 

林氏
「社内データを集約・活用し、資産化できるソリューションを探していたのですが、AIを活用した類似図面検索や、図面に紐づくドキュメントや調達情報にアクセスできる機能を備えたプラットフォームは他にはなかった。我々の課題感に最もマッチしたのがCADDiだったのです」

体制はゼロから。担当者とCS二名の「行脚」が生んだ、推進の輪

製造業における、AIを活用したデータプラットフォームというコンセプトに光明を見出し、導入を決めた同社。しかし、その推進の道のりは決して平坦ではなかった。そもそも、導入当初、専門のプロジェクト体制は存在しなかったという。

 

林氏
「導入後しばらくは、私とキャディ社の担当CSの二人だけで様々な部署を回っていました。体制と呼べるほどのものは、当初はありませんでしたね。CSの担当者がいなければ、独力では最後までやり遂げられなかったでしょうし、その逆もまた然り。私たちはお互い製造業DXについて考え抜いているプロであり、最高のパートナーだと思っています」

 

二人は自らの足で各部署を訪問し、ツールの説明から業務のヒアリング、そして課題の掘り起こしまで地道に繰り返した。話を聞いてはくれても、なかなかツールに触ってくれない部門も少なくない中、その壁をどう乗り越えたのかを林氏がこう明かす。

 

林氏
「突破口は、各部門にいる推進力のあるメンバー、いわゆるキーパーソンを見つけることでした。主体的に動いてくれそうな部門に深く入り込んだらキーパーソンを中心に、私たちも一緒に成功事例を作る。そして、それを横展開していくという作戦が、うまくはまったのだと思います」

 

そのようなキーパーソンを動かす原動力は、特定の役職にいることや好奇心だけではなかった。

 

林氏
「推進力の源泉は、個人的には『課題感』だと思います。今のままでは、自分たちの業務は立ち行かなくなるという強い危機感が、新しいツールを使ってみようという動機に繋がる。面白いことに、このプロジェクトを通じて、それまでバラバラだった各部門の課題感が、徐々に共有、統一されていきました。CADDi導入が課題共有のきっかけの一つになったのです」

 

こうして、ゼロから始まった活動は地道な「行脚」によって少しずつ仲間を増やしていき、やがてカンパニー全体を巻き込む大きなうねりへと変わっていった。

設計チームが「自走」する文化へ。120を超える図面の標準化で大幅なコスト適正化を実現

生産総括部 調達部 調達一課 林和輝氏 2

 

導入から1年半。林氏のチームが蒔いた種が、思わぬところで大きな花を咲かせた。特に印象的だったと語るのが、設計チームが自ら起こした「モジュラーデザイン」の取り組みだった。

 

林氏
「部品が増えすぎるという課題に対して、図面を標準化しようという活動は以前からありました。しかし、起爆剤となったのはCADDiのアプリケーションで、類似図面が誰でも一目でわかる製造業データ活用クラウドCADDi Drawerでした。これを活用することで設計チームが自発的に活動を加速。私たちが主導することなく、彼ら自身で課題を見つけて解決までやり遂げてくれました」

 

その成果は劇的だった。ある部品群において、バラバラに存在していた120以上の図面を、わずか15図面まで標準化することに成功。そして、効果はそれだけに留まらなかった。

 

林氏
「図面が標準化されたことで、その部品を作るために必要だった金型や治工具も集約できました。結果として、これだけで大幅なコスト適正化に繋がったのです。この副次的な効果には驚きましたし、設計チームから報告を受けた時は本当に嬉しかったですね」

 

これまではベテランの頭の中にしかなかった「類似図面」の知見が、データによって可視化され、誰でもアクセスできるようになった。その結果、設計者自身が「使える図面がないか」とまず確認するようになり、安易な新規図面の作成が抑制される。そして、それが後工程で発生するマスター登録や工程設計、サプライヤー選定といった膨大な付帯業務を削減するフロントローディングに直結する。製造業AIデータプラットフォームCADDiが、これまで個人の中に埋もれていた暗黙知を形式知へと変え、人が本来持つ創造性を発揮できる環境を創出した瞬間だった。

 

また、こうした設計での大きな成果のみにとどまらず、調達・原価企画主導でのコスト適正化効果は数千万円規模に上っている。

生産性への意識が組織を変える。製造業AIデータプラットフォームという「共通言語」と、「挑戦する文化」

CADDiの導入効果は、定量的な数字だけにとどまらない。それによる最も大きな変化は、組織の「文化」の上で起きていた。

 

林氏
「この数年で『この業務は要らないのではないか』といった、業務の生産性に対する組織全体の感度が非常に高まったと感じます。これが一番の変化ですね。また、担当者自身が解決スキルを持っていなくても『ここが課題だ』と声を上げれば、誰かが助けるような風土に変わってきています」

 

その議論の土台には、常に製造業AIデータプラットフォームの存在がある。かつては部門ごとに閉じていた情報が、今では誰もがアクセスできる「共通言語」となって建設的な議論を促す。その結果、例えば調達部門ではルーティン業務の一部が70%以上も効率化されたという。

 

林氏
「見積査定などに費やしていた時間が短縮された分、これからのサプライチェーンをどう構築するか、といった戦略的な思考に時間を使えるようになりました。こうした業務に取り組める組織になったこと自体が、今の我々の大きな強みです」

 

生み出された時間と、変革を後押しする文化は、若手の活躍にも繋がっている。川崎重工業のロボットディビジョンでは、上長が部下を信じて任せ、部下はその期待に応えようと情熱を燃やす気風があり、さらに挑戦を奨励する風土が醸成されつつあるという。この好循環こそ、同社の変革を支える真のエンジンなのかもしれない。

目指すは「デジタルスレッド」の構築。キャディと製品ライフサイクル全体のデータを繋ぐ未来

生産総括部 調達部 調達一課 林和輝氏 4

 

林氏が今、キャディと共に見据えているのは、目の前のROIだけではない。

 

林氏
「我々が目指しているのは、属人性の解消と生産性の向上です。短期的な成果ももちろん重要ですが、そこに固執しすぎるつもりはありません。最終的な着地点としては、生産プロセスで発生するデータを繋げ、製品ライフサイクル全体にわたって一元的に管理できる『デジタルスレッド』の構築です。これを実現することで、開発から市場投入までのリードタイムを短縮する。そのような未来を、キャディさんと一緒に目指していきたいと思っています」

 

以前のパワープレーに頼る成長から、製造業AIデータプラットフォームに基づく持続的な成長へ。川崎重工業の挑戦は、日本のモノづくり全体のポテンシャル解放に示唆を与える大きな可能性を秘めている。

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