1912年に創業したヤンマーは、1933年に世界初の小型ディーゼルエンジンの実用化に成功。その後は大型エンジン、農業機械、エネルギーシステム、工作機械など多岐に渡る事業を展開する産業機械メーカーだ。2024年現在、グローバルに2万人以上の従業員を抱え、海外100か所以上の拠点を展開している。
ヤンマーホールディングスでは、2022年からの中期戦略として策定した6つの戦略課題を掲げている。その中の1つが「DXに対応する次世代経営基盤の構築」であり、その実現をミッションとしてデジタル戦略推進部が組成された。
デジタル戦略推進部DX推進グループ課長である世森氏は、このように話す。
「単にトップダウンでデジタルツールを導入するだけでは、効果的なDXは実現できません。そこで我々は、トップの強いコミットメントを元に、『草の根DX』というボトムアップ型のコンセプトで取り組んでいます。草の根DXでは、本当の意味で現場にフィットするデジタル化を実現するために、現場のユーザー自らがリテラシーやスキルを身に付け、デジタルツールを活用できることを目指しています。我々は、横断的なプロジェクトの推進や管理を行いつつ、現場のDX推進と成功事例をグループ全体に共有することを使命としています。」
一般的に、DXはトップの強いコミットメントによるトップダウンで進めていくべき、という主張も多い。一方で、様々な事業体を抱えるヤンマーグループでは、個社ごとに課題や課題解決に向けた最適な方法が異なるため、トップダウンでひとくくりにして活動を進めるのは難しい。実際に現場で取り組むメンバーのモチベーションに成果が大きく左右されるため、現場の思いを大事にしながら取り組んでいくことも必要である。トップダウンとボトムアップ。両面からDXに取り組むことが、同社ミッションの実現に向けての重要なファクターだった。
*図1