川崎重工業株式会社は、総合エンジニアリングメーカーとして、船舶・鉄道車両、バイク、産業プラント、精密機械、ロボットなど、多彩な事業を展開する。川崎重工業は、1968年に国産初の産業用ロボットを開発、製造を開始した。日本の産業用ロボットのパイオニアである。ロボット事業の中核となる精密機械・ロボットカンパニーロボットディビジョンでは、自動車業界や半導体業界向けなど、様々な産業用ロボットの開発・設計、製造、販売を行ってきた。近年では医療向け手術支援ロボットにも進出している。ロボット市場の成長と共に、ロボットディビジョンの売上規模は年々増大しており、グループビジョン2030では今後7年で現状比4倍の売上規模を目標として掲げている。
売り上げ規模・組織の拡大と共にロボットディビジョンでは様々な課題を抱えていた。特に大きな課題だったのが事業成長に伴って求められる一人当たりの生産性向上だ。事業の拡大に伴って従来社員一人ひとりに求められる業務量は増加の一途を辿っている。そうした状況下では知見の型化や業務プロセスの標準化などがどうしても後手に回ってしまい、属人化が進んでいた。
属人化は様々な業務で問題を生じさせる。例えば、設計部門では、属人化により過去の知見が活かされず、設計者によって設計結果に大きな差が生じたり、部品点数が増加したりするなどの問題が発生していた。また、購買部門では、担当するバイヤーによって調達部部品の適正価格の精査レベルにバラツキが生じるなど、業務クオリティに差が生じていた。
ロボットディビジョンでは、このような状況を変えるために、業務をマニュアルへ落とし込んで標準化を試みるなど、様々な取り組みに着手した。購買部門では、図面から情報を入力することで妥当なコストを算出するデータベースを、Excelを用いて内製で製作していた。
小野氏
「データベースの作成では、代表的な図面を板金品、機械加工品、購入品のように製品群で分類して、類似しているものをまとめました。その図面から、形状の特徴や材質、加工方法などの価格に影響するパラメーターを抽出し、計算アルゴリズムを作り上げていきました。作成は7、8人ほどで行ったと記憶しています。図面は、1人あたり1,000枚から2,000枚ぐらいの量を見たので10,000枚前後の図面を見たことになりますね。」
1年ほどの期間をかけて出来上がったデータベースは、部品の種類によって差はあるものの、価格のバラつきを減らし、業務クオリティの均一化に役立つものであった。しかし、しばらく運用を続けると、徐々に新たな問題が生じてくる。