1906年に製造を開始して以来、常に技術の先端を歩みながら鉄道モビリティの進化の一翼を担ってきた「川崎車両社」。同社は優れた技術力、高い品質と生産力により、鉄道の歴史に残る数々の名車両を製造し、鉄道車両の発達と近代化に貢献してきた。国内のみならず、北米・アジア、特に米国ニューヨークやワシントンでは同社から送り出された車両が都市交通を支えている。
車両メーカーとして名高い同社では、各鉄道会社の要望に合わせ車両設計を行う受注生産方式をとる。各社のニーズに柔軟に対応できるメリットがある一方で、部品の種類が増えてしまい効率性を追求しにくく、調達の最適化や設計における標準化、及びコスト削減が経営における重要なイシューとなった。その課題を解決すべく設立されたのが技術統括本部 DTC推進部である。
DTC推進部は2020年、まだ同社が川崎重工業株式会社の車両カンパニーであった当時に設立された部門で、DTCは「Design to Cost」の略である。「名称の通り、設計段階における原価削減をミッションとする部門であり、VE/VA視点で設計・調達・製造・原価企画における課題解決を行うタスクフォースとして立ち上がった部門です」と同部門の白石氏は語る。同部門には設計出身者を中心に、原価企画・資材調達・製造など、幅広い部門から精鋭が集い、原価企画・原価管理における価格戦略を担っている。
部品調達の最適化を担う芦田氏によると、受注生産方式をとる同社では顧客案件ごとにプロジェクトチームが組成され、仕様書にもとづき設計を行い、組立図・部品図を作成するという。「設計者は詳細設計の際に過去の類似する図面を参照することがあるのですが、現在、導入している管理システムでは過去の図面情報や価格情報を柔軟な切り口で引き出せる構造にはなっていません。設計業務における最適な図面流用の判断ができず、様々な付随するコストが発生していました」。