旭東ダイカスト株式会社は、1932年に設立され、ダイカスト製品及び金型の製造販売を行っている会社である。長い歴史の中で磨き上げた技術により、本来ダイカストでは難しいとされる高気密性・高耐圧性の分野を強みとし、1995年以降は海外(中国)への拠点展開も行っている。
2032年の創業100周年という一つの節目に向かう中、旭東ダイカストとして解決しなければならない課題の一つが、技術を起点とした世代交代だ。現在、所属する従業員の半分近くが55歳以上で、2032年には大半が既に定年を迎えていることになってしまう。
ダイカストの世界は職人仕事で、しかも10年やっていれば1人前という仕事でもない。日々変動する気温や湿度、材料や製品形状によって生き物のように影響を受けるのが、ダイカスト製品の特徴だからだ。そのため、ただ受動的に業務に取り組んでいるだけでは必要な技術は得られず、主体的に経験を積み重ねることでノウハウを身に着けていかなければいけない。100周年に向けて、ベテランから若手へノウハウを引き継いでいきたいが、現状は一つ一つ丁寧に教えられるような教育プログラムもなく、OJTといえば聞こえはいいが、一緒に業務に取り組む中でしか教育が行えていない状況となっていた。
旭東ダイカストが長い年月をかけて培ってきた技術。その技術を起点とした世代交代を、どのように行っていくべきか。そして、そのための新たな仕組みを、どのように構築していけばいいか。課題は多岐に渡っていた。