駅の地下鉄サインや郵便局の看板といった「パブリックサイン」、そして戸建て住宅向けの「エクステリア商品」。株式会社カシイの製品の根幹を成すのは、「形材(かたざい)」と呼ばれるアルミ押出形材だ。一つの形材は、切断や穴あけといった加工を経て、多種多様な製品へと組み込まれていく。カシイは半世紀以上にわたり、アルミの押出形材を核としたモノづくりで社会の風景を彩ってきた。
しかし、その歴史の長さゆえに、社内には「紙」という重い足かせが存在していた。「紙がないと何もできないといっていいほどで、モノを探すのが非常に大変だった」── 開発設計部 部長兼PIM(プロダクトインフォメーション・マネジメント)課 課長の東野氏は、導入前の状況をそう振り返る。
東野氏
「一番大きな問題は、会社の大半が紙での仕事であり、何かを始めるには必ず紙情報が必要という状態だったことです」
「例えば『形材1』は製品AとBに使われているが『形材2』は製品AとBとCに使われている、といったことが多くあります。製品ごとに紙のバインダーで管理していたのですが、ある形材に変更があったときにどの製品に影響するのか、紙のバインダーの中から抜け漏れなく探し出すことはとてつもなく大変でした。またバインダーは各部署に存在し、差し替え漏れなどのミスが発生しやすい構造的課題もあります」
さらに深刻だったのは、情報の物理的な分断である。例えば、図面のCADデータはアクセス制限のある開発設計用のサーバーにある一方、形材の寸法や長さなどの詳細なスペック情報(形材マスタ)は管理部の生産システムに存在していた。
東野氏
「開発が形材のマスタ情報を知りたい時は、管理部の担当者に聞くか、生産システムのCSVデータを探しに行く必要がありました。また社内にあるデータが部署間で共有されていなかったため、互いに存在していることすら知らない場合があり、『あるならもっと早く言ってよ』となることもありました」
過去にはペーパーレス化を目指し、既存システムの活用も検討したが、数百万円単位の改修費用や図面情報をすべて手入力する手間が障壁となり断念した。そんな折、東野氏がセミナーで出会ったのが、キャディの製造業AIデータプラットフォームCADDiと、そのアプリケーションである製造業データ活用クラウドCADDi Drawerだった。ほぼ同時期に情報システム部へキャディからのアプローチもあり、同氏は導入検討を開始する。
東野氏
「直感的に『これだ』と感じましたが、そこから自社の複雑な図面体系にどう適用するか、慎重に検討を重ねました」





