1953年に設立され、国内とベトナムに拠点を持つエバ工業。人材不足解消や働き方改革の実現に効果的な、工場の無人化・自動化設備の開発・設計・製造を行っている。
製造業の多くは、新たな人材の獲得に苦労している。経済産業省が毎年発行している「ものづくり白書」によると、全産業の中で製造業に従事する労働者の割合は直近の20年で大きく減少しており、製造業から非製造業への人材流出は顕著だ。また、「人手不足倒産」というワードが話題になるほど、人材不足に苦しむ企業が多い。このような状況において、限られた人員での生産性向上を実現するために、多くの製造業が工場工程の自動化や無人化に取り組んでいる。パレットプールやパレットチェンジャなどの製品を中心に取り扱うエバ工業にも、引き合いが増えてきている。
2年前から技術部の部長に就いている早川氏は、人材の確保と育成の重要性を感じていた。会社は今後、さらなる製品群の拡大や新たな柱となる事業構築の実現を見据えている。そのためには若手やベトナム拠点の人財育成が必要不可欠だが、人の入れ替わりや扱っている製品にも新規生産のない期間があると、設計の知見が途切れてしまい、技術の受け渡しがうまくいっていなかった。特に図面に関しては、過去に類似部品の設計が行われていたにも関わらず、それらをうまく活用できずに、新図面を一から作成している状態だった。
図面に関する課題を解消するために図面検索の方法を工夫したこともあったが、そのルールが統一されておらず、結局見つけることができないまま、図面の検索を諦めてしまう従業員も多かった。このままでは業務負荷が高い状況が継続し、新たな柱となる製品群の拡大や人財の育成に十分な時間を充てられない。エバ工業では、将来に対して強い危機感を抱いていた。
また、20年ほど前に設立されたベトナムの工場では、日本よりも過去の図面を参考にする機会が多い。参考図面は日本から送ってもらう必要があるため、図面待ちで仕事が止まってしまうことも少なくなかった。
日本とベトナムの双方において、必要な図面の入手に課題があり、過去図面を有効活用できないことが、業務効率の向上を阻害する大きな要因となっていた。