埋もれていた図面と購買データをフル活用。諦めていたコスト削減も実現

川崎車両株式会社

  • 設立
    2021年10月
  • 従業員数
    3500人(2021年度)
  • 売上高
    1266億円(2021年度)
事業内容
各種鉄道車両、鉄道システムおよびそれら部品の設計、開発、製造、修理ならびに販売および賃貸借に関する事業
お話いただいた方

技術統括本部 DTC推進部 平嶋 利行氏

技術統括本部 DTC推進部 白石 直樹氏

技術統括本部 DTC推進部 芦田 昌祥氏

Before

図面と購買データが参照しにくく、簡単な部品であっても高難度の加工を得意とするサプライヤーに発注しており、調達コストが上昇。

After

今まで諦めていた類似図面の発注実績の参照が一瞬で可能になった。発注判断の脱属人化によって、だれでも最適な調達ができるように。

Before

図面と購買データが参照しにくく、簡単な部品であっても高難度の加工を得意とするサプライヤーに発注しており、調達コストが上昇。

After

今まで諦めていた類似図面の発注実績の参照が一瞬で可能になった。発注判断の脱属人化によって、だれでも最適な調達ができるように。

設計・調達・製造・原価企画の課題を横ぐしで解決するコスト削減チーム

 1906年に製造を開始して以来、常に技術の先端を歩みながら鉄道モビリティの進化の一翼を担ってきた「川崎車両社」。同社は優れた技術力、高い品質と生産力により、鉄道の歴史に残る数々の名車両を製造し、鉄道車両の発達と近代化に貢献してきた。国内のみならず、北米・アジア、特に米国ニューヨークやワシントンでは同社から送り出された車両が都市交通を支えている。

 

 車両メーカーとして名高い同社では、各鉄道会社の要望に合わせ車両設計を行う受注生産方式をとる。各社のニーズに柔軟に対応できるメリットがある一方で、部品の種類が増えてしまい効率性を追求しにくく、調達の最適化や設計における標準化、及びコスト削減が経営における重要なイシューとなった。その課題を解決すべく設立されたのが技術統括本部 DTC推進部である。

 

 DTC推進部は2020年、まだ同社が川崎重工業株式会社の車両カンパニーであった当時に設立された部門で、DTCは「Design to Cost」の略である。「名称の通り、設計段階における原価削減をミッションとする部門であり、VE/VA視点で設計・調達・製造・原価企画における課題解決を行うタスクフォースとして立ち上がった部門です」と同部門の白石氏は語る。同部門には設計出身者を中心に、原価企画・資材調達・製造など、幅広い部門から精鋭が集い、原価企画・原価管理における価格戦略を担っている。

 

 部品調達の最適化を担う芦田氏によると、受注生産方式をとる同社では顧客案件ごとにプロジェクトチームが組成され、仕様書にもとづき設計を行い、組立図・部品図を作成するという。「設計者は詳細設計の際に過去の類似する図面を参照することがあるのですが、現在、導入している管理システムでは過去の図面情報や価格情報を柔軟な切り口で引き出せる構造にはなっていません。設計業務における最適な図面流用の判断ができず、様々な付随するコストが発生していました」。

コスト削減のボトルネックは”必要な図面が見つからない”こと

 打開策を模索していたタイミングで以前から取引のあるキャディより提案を受けたのが、図面データ活用クラウドCADDi Drawer(キャディ ドロワー)だった。CADDi Drawerには、PDFやTIFF等の図面データから文字や形状を自動で読み取り解析する機能がある。自社が保有する図面データをクラウド上にアップすれば、これらの情報にもとづいて、加工方法や材質など、担当者にとって使い勝手のよいキーワードで自由に検索できる。また、形状のデータから類似形状を持つ過去の図面をすぐに参照することができる。さらに、発注実績等のデータもアップすれば図面との紐づけが可能だ。

 

 導入は2022年の8月。サービスの販売開始から間もない時期だった。導入の決め手について白石氏は「製作する車両が異なると、参考になりそうな過去の図面が欲しくても見つからないといったことがまさに起きていました。それを解決できることが導入を決めた要因として大きかったですね」と説明する。

 

 同社では、先行して図面データの管理を目的としたシステムを導入している。しかし、そのシステムでは図面上の文字情報を検索できる仕様ではないため、担当者は一枚一枚目視で図面を確認する必要があるうえ、システムから図面を探す際のキーワードは品番に限定される。データのファイル名を品番で管理しているからだ。また、海外の案件では変更が加わるごとに品番が変わる運用になる。リピートの判断ができない、かつ元の図面を辿りづらい体制であった。

図面・発注データの活用で調達業務が最適化

 過去の図面データや発注実績データを参照できないことによる、最大の課題は、設計業務と調達業務それぞれでコストが膨らんでしまうことだ。設計者は流用図面を参照する際、「あそこにこんな図面があったはず」と、記憶を辿って探すという。必要な図面がすぐに見つからないと、新しく図面を書いたほうが早いと判断する設計者もいる。こうして、新図が増えてしまう。

 

 調達部門の業務ではこれまで、担当者が部品の製作を外部の加工会社に発注する際、社内の別の担当者が過去に類似部品を発注した実績をもっていても情報にたどりつくことが難しかった。その結果、各担当者の経験・知見に依存する形で都度、発注業務が行われ、発注先や発注価格が決められた。芦田氏は「簡単な部品であっても高難度の加工を得意とするサプライヤーに発注を行うケースがあり、価格の上昇を招く事例が見られました。特に海外工場の場合は発注担当者の入れ替わりが多く、国内よりもそういった事象が散見されました」と振り返る。

 

 CADDi Drawerの導入により、早くも解決の芽が出ているという。一例として挙げられるのが、調達業務の最適化だ。CADDi Drawerでは図面ごとに発注情報(サプライヤーの社名や金額など)も自動で関連付ける機能がある。新規図面の発注判断を行う際、自社が蓄積した図面データから類似図面を即座に探し出し、金額や発注先を参照することができる。それに加え、一品ずつ読図をしなくとも実績図面の難易度の把握が容易になる。その結果、同社では加工の難易度に応じて対応可能なサプライヤーのリストを作成し、部品案件ごとに最適なサプライヤーへ発注することが可能になった。

 

 最後に、今後の部署での活用予定を尋ねると「サプライヤー選定や原価低減だけでなくより上流の設計段階での標準化にも活用をしていきたい」「一部の海外案件に適用してみた段階であり、今後はもっと対象領域を広げる予定です」と、さらなる設計・調達業務の改善に向けた展望を語った。

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