一つの物事に腰を据えて向き合う仕事がしたかった
――前職は大手総合コンサルティングファームのコンサルタントですよね。どのような仕事をなさっていたんですか?
大手石油元売会社の海外調達導入支援や大手クレジットカード会社の業務改革支援など、様々な業界の多様なプロジェクトに従事していました。
クライアント先に常駐することが多く、直接コミュニケーションを取りながら膨大なデータから試算した結果を基に経営層へプレゼンするなど、いわゆるコンサルっぽいタスクを担っていましたね。
――転職を意識したのはなぜですか?
本当にお客様のためになれているのか、わからなかったからです。どれだけお客様の要望にきちんと応えても、コンサルタントは提案に留まることが多く、実行権を持っているのはあくまでお客様。お客様が「NO」と言ったら「NO」なんですね。
もちろん外部の目線での提案を求められるのがコンサルタントなのだということはわかっていましたが、僕は実行まで責任を持つ仕事がやりたいと思うようになってしまって。それが僕の考える誠実な仕事なのだということに、仕事をする中で気づきました。
コンサルタントは望んで就いた仕事でしたが、僕はもともと「熱中できる事業を見つけたら、それに従事したい」と思っていたんですね。なので自分のやりたい方向性を見つけたのだから、すぐにでもマッチした場所に転職しようと気持ちが固まって。さっそくビズリーチに登録したら、キャディからオファーをもらったので入社を決めました。
――キャディ以外の選択肢は考えなかったのですか?
ほかの会社も調べてはみましたが、キャディみたいに実直に大きな課題に向き合っている会社はなかったので考えませんでした。
一番惹かれたのはバリューの「至誠を貫く」です。お客さま、パートナー、同僚、自分という全てのステークホルダーに対して誠実であろうと謳っているのがすごく良いなと思いました。
コンサルタントはプロジェクト単位で活動するため、一つの課題や業界、企業などと向き合い続けることが少ないんですね。一方キャディは、製造業という大きな業界を変えようとしているので、自ずと10年単位で向き合い続ける必要があります。
しかも製造業に関わる全ての人をハッピーにしようとしている。損する人がいない世界観を構築しようとしている。なんて誠実で面白そうなのだろうとワクワクしました。
その後、入社前に社内イベントに参加させてもらい、社員と話してみたら皆さんの熱量や楽しそうな様子がとても魅力的で。こういう人たちと一緒に、志を共にして仕事ができたら楽しいだろうなと思い入社を決めました。
――入社後に感じたギャップはありましたか?
意外と泥臭いし、仕組み化されていないんだな、と(笑)。
コーポレートサイトの雰囲気やエンジニアが多数在籍していることから、デジタルに強くて社内外のオペレーションが仕組み化されていると思っていたんですよ。入社してから実情を知ると、そりゃあ泥臭くならざるを得ないよねと納得しましたが、最初はびっくりしましたね。
――実情とは具体的にどういったものでしょうか?
例えば社内システムにパートナー企業からいただいたデータを取り込む際に、そのインプット元となるデータの粒度や書式がパートナー企業によって異なるんですよ。なのでメンバーが手動でシステムに入力しながら揃えていく必要があります。
それはある意味、仕方がないこと。キャディが取り組んでいる見積りのデジタル化を始め、製造業の調達領域におけるDXはまだまだ実例が少ない、これからのジャンルです。そのためスタンダードがありません。例えば製造価格の場合、どういう計算で算出しているかはパートナー企業によって異なります。よって出てくるデータが各社で異なるのは当然とも言えるんです。
こういった状況だからこそ、キャディが業界のスタンダードを作ることの意義を実感しながら、理想とするDXの実現のために泥臭く取り組むことができています。
実務をしながら質問し、理解を深めていった
――コストモデルチームでは、エンジニアリングとBizDevの両面スキルが求められます。データ処理・分析スキルと対サプライヤーのBizDevスキルは前職で身につけていたそうですが、Pythonと製造業のドメインナレッジはどのように身につけていったのですか?
Pythonは学生時代に少し触ったことがありましたが、あくまで初心者レベル。実務は到底できませんでした。そこで入社後にオンボーディングで学んだのですが、一番成長できたのは、上長に頑張ればクリアできるレベルの仕事を振ってもらったことですね。いろいろな人が書いたコードを参考にしながら実際に自分でも書いていく中で、理解を深めました。
製造業のドメインナレッジは、キャディに在籍している製造業のスペシャリストと一緒に図面を見て、どういうことを考えて設計されたのか、どういう手順で加工するのかなどを一つひとつ教えてもらいました。その後、サプライヤーを訪問した際に直接、現物を見せてもらうというのを何往復かくり返して、キャッチアップしていったのです。
まだまだ勉強中の身ではありますが、もともとモノづくりに興味があり、溶接や自動車修理の動画を見て楽しんでいたので、ワクワクしながら学んでいます。
――では、大変だったことは何ですか?
やはりPythonの習得ですね。社内プロダクトの中のコードなので、読み書きできるだけでなく、プロダクトの構造など、いろいろなことを知っている必要があります。知識がないと、コードを読んでも何のことかわからないんですよ。
ただエンジニアメンバーが近い部署にいて、質問するといつも丁寧に答えてくれるので助かっています。キャディのエンジニアはビジネスサイドへの理解が深くて、質問の背景まで深掘りして答えてくれるので、多角的に学べます。
次から次へと、大きな山を登り続けたい
――キャディで働く面白さは何ですか?
大きな山を登ろうとしていることです。それが実現すれば理想的であると多くの人がわかっていながら、誰も手を出してこなかったことに挑戦しています。
コストモデルチームが取り組んでいる見積りのデジタル化はまさにそう。業界のスタンダードを作り上げていく面白さがあります。
価格はよくわからない要素で決まりがちです。それを全部説明できる要素で決めるのは、お客さまにとってもパートナー企業にとっても良いこと。キャディが明確なロジックとパラメーターに基づいて生成された見積りを提示していくことで、製造業はポテンシャルを解放できるようになります。
実際、パートナー企業からは感謝の声をいただいています。「見積りの自動化なんて、できたら良いけどできないと思っていた」「キャディさんのおかげですごく助かった」など。
ベトナムのパートナー企業の見積り担当者は「いままですごく忙しくて帰宅時間が遅かった。いまは早く帰れるようになり、家族との時間を作れるようになった」と嬉しそうに話してくれました。これを聞いたときは、ダイレクトに人の役に立っているのだなと、胸が熱くなりましたね。
――最後に、今後の展望を教えてください。
お客さまにとってもパートナー企業にとっても納得できる価格を提示し、製造業に“キャディスタンダード”をつくりたいです。そして製造業で働く方々が、モノづくりに集中できる世界観を構築し、業界の発展に貢献したいと考えています。
その先で、AIやディープラーニングなど最先端技術を使って、革命的な仕組みがつくれたら面白いですよね。図面を読み取るだけで価格や必要な加工工程、改善できる設計部分などが自動で表示されたら、もう夢の世界じゃないですか。
いま目の前にある山を登るだけでなく、次から次へと高い山を登っていき、新しい世界を構築し続けたいと思っています。