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【CES2026レポート③モビリティ】 完成車メーカーから半導体/AIベンダーへ。主役の姿が変わったモビリティの展示

イベントレポート

【CES2026レポート③モビリティ】 完成車メーカーから半導体/AIベンダーへ。主役の姿が変わったモビリティの展示

【CES2026レポート③モビリティ】 完成車メーカーから半導体/AIベンダーへ。主役の姿が変わったモビリティの展示

1月6日から9日まで、米ラスベガスで世界最大のテクノロジーイベント「CES2026」が開催された。その中でモビリティ関連はLVCC(Las Vegas Convention Center)の複数あるホールのうち、2022年から本格運用を開始した「西ホール」がほぼ関連メーカーの展示で埋め尽くされた。

目次

完成車メーカーの出展が減少

ソニー・ホンダモビリティ

今回のモビリティ関連の出展で昨年までと大きく変わったと感じられたのが、完成車OEMメーカーの出展の減少だ。大手企業はBMWが例年行っている試乗エリアでの展示を行った以外は、中国のGeely(吉利汽車)が目立った程度。他にはソニー・ホンダモビリティが、2025年までソニーの出展していたブースに入れ替わって展示を行った。

完成車メーカーによるCES出展が減少した背景は、まず派手なコンセプトカーを発表したとしても、量産のロードマップや具体的な商用化時期を示せないかぎり、投資家や業界関係者に対する訴求力が乏しいことを各社が自覚し始めた点だと推測される。未来志向のショーカーは短期的な話題作りにはなるものの、開発・マーケティングコストに見合った成果を出しにくいと考えられる。

またEV(電気自動車)や高度な自動運転技術の開発ペースが、当初の期待ほど急激には進んでいないことも大きい。特に北米や欧州ではEVの需要鈍化や補助金縮小が相次ぎ、EV戦略のペース調整や投資配分の見直しが相次いでいる。また、注目を集めやすい完全自動運転への開発計画にしても、採算性や安全性の課題からより現実的な高度運転支援レベルへとハードルを下げざるを得ないという事情もある。

それでも、LVCC西ホールには空きスペースがないほど多くの企業が出展していた。その多くが今後の先進的な自動車向けの基盤技術だ。車載向けの半導体、SDV(Software Defined Vehicle:ソフトウェア定義車)向けのプラットフォーム、生成AIやエージェントAIによる運転体験といった展示が前年よりも増えていた。つまりCESにおける自動車・モビリティ関連の展示は、見た目や話題性を重視したものから、より実際のビジネスに焦点をあてた方向に移行しつつあるということが感じられた。それを踏まえて、CES2026のモビリティ関連の展示を紹介する。

 

Kardome / Voice AI solutions

QualcommとNVIDIAによるSDVプラットフォーム開発競争

スマートフォンやIoT機器、最近ではノートPC向けのチップセット『Snapdragon』シリーズを開発しているクアルコムは、CESではここ数年モビリティ関連ゾーンに出展を行っている。同社は2010年代後半からコックピット、ADAS(Advanced Driver-Assistance Systems:先進運転支援システム)、自動運転、コネクテッドサービスを束ねる包括的なプラットフォームを『Snapdragon Digital Chassis』として展開。大手OEMメーカーでも採用が相次いでいる。

Snapdragonをベースにしたプラットフォームの強みは、強力なエッジAI性能と5Gや高速Wi-Fi対応の通信機能を統合したフルスタック機能+接続性だ。すでに車載ソリューションの搭載台数は4億台を超えたという。

今回は『Snapdragon Ride Elite』と『Cockpit Elite』を核にしたDigital Chassisの拡張版を発表し、エントリーからミッドレンジ車でも採用しやすいソリューションを追加。これはADASとIVI(In-Vehicle Infotainment:車載インフォテインメント)を単一のチップセットに統合し、SDVの実用化とコスト最適化を両立するプラットフォームである。また、Leapmotorが世界初の採用メーカーになることも発表された。

Qualcomm『Snapdragon Digital Chassis』

さらにグーグルクラウドとの提携を拡大し、クラウド上のバーチャルチップセット環境と実車のリファレンスプラットフォームを組み合わせ、AIを組み込んだSDV開発をクラウドで行える環境も打ち出している。

一方、NVIDIAも2010年代から車載向けの『DRIVE』プラットフォームを展開してきた。最新の『DRIVE Thor』は集中ECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)向けの最新世代チップセットで、およそ2,000TOPS級の演算性能を持ち、自動運転・運転支援や駐車、ドライバー監視、デジタルメーター、IVIなど、これまで分散していたECU機能を単一アーキテクチャに統合することを前提に設計されている。1つのチップ上でADASとIVIを仮想的に分離して同時に動かすことが可能だ。

今回は『DRIVE Thor』搭載のレベル4自動運転開発・検証用の標準車両プラットフォームを発表。また自動運転用の新しいAI基盤モデル群『Alpamayo』を発表した。『Alpamayo』はカメラなどのビジョン情報、地図やテキストといった言語情報、そして車両の行動決定を一体で扱う推論モデルで、複雑な交通状況でも段階的に状況を理解し、次のアクションを導き出すことを可能にする。またクラウド側では『Cosmos』『Omniverse』上で大規模学習とシミュレーションを実行し、その成果を車載側の『DRIVE Thor』に載せてリアルタイム推論を行う。クラウドと車載コンピュータを密に連携させたエンドツーエンドの自動運転開発環境を示した形だ。

NVIDIA『Alpamayo』

さらに『Alpamayo』はオープンなAIモデルとして提供し、パートナー各社が自前データでチューニングできる点をアピールした。これにより『DRIVE』シリーズをハードウェア性能だけで差別化するシステムではなく、ツール、シミュレーション、オープンモデルを組み合わせて自動運転の開発基盤そのものを提供する方向へ舵を切った。実際にMercedes‑Benzが『DRIVE Thor』を中核に自社の運転支援機能を実装した車体も展示された。

両社の展示や発表を比べると、クアルコムはエッジAIと通信を統合した「どこでもつながるSDVプラットフォーム」を目指し、量販車を含む広いボリュームゾーンでの採用と全方位的なパートナー網を強みとする。他方、NVIDIAは高性能なAI処理や推論モデル、シミュレーションを一体化した物理AIインフラとして、SDVやレベル4自動運転の標準ポジションを狙うという構図が見られた。今後の自動車開発はこの2社に代表されるように、半導体やAIベンダーを主役に「どのスタックの上で次世代モビリティを組み立てるか」を巡る争いのステージになりつつあることが明確に見えてきた。

NVIDIA × Mercedes‑Benz

商用化された新興企業の自動運転車

CES2026期間中、ラスベガスの街中を歩いていると、小型のワゴン型の自動車が列を作って走っている姿がよく見られた。Zooxが開発・運営するロボタクシーである。同社は2014年に創業し、2020年にアマゾンに買収された。現在はラスベガスの繁華街とその周辺を、完全自動運転で運航している。スマートフォンアプリから予約すれば誰でも乗車でき、現時点では料金は無料。2026年以降に距離・時間ベースの有料サービスへ移行する計画だ。

会場でも、Zooxの実車展示は注目を集めていた。車内にはハンドルやアクセルなどもなく、対面式の2席が向かい合わせに並ぶ。当初から自動運転を視野に入れて開発されたため、乗客が運転操作を行う装置は省かれているのだ。各シート脇にはタッチスクリーン画面を備え、空調や音楽、ルート確認などの操作ができる。プラットフォームにはNVIDIAを採用し、レベル4相当の自動運転に対応している。

Zoox

Waymoは自動運転のロボタクシー用新型車両『Waymo Ojai』を発表。Zeekrのミニバン型プラットフォームを採用している。サンフランシスコなどで商用化されており、自動運転車として知名度が高い。こちらもレベル4の自動運転に対応、システムは自社開発の第6世代Waymo Driverで、13台のカメラ、4基のLiDAR、6基のレーダー、外部マイク等を搭載。最大約500m先まで、360度を高解像度で認識する。

Waymo『Waymo Ojai』

開発中のモデルではTensorが『Robocar』を展示した。個人向けの商用車で、自動運転はレベル4に対応。2026年後半に米国・欧州・UAEなど一部市場への投入が予定されている。『Robocar』はただの車ではなく「走るAIエージェント」となることを目的に開発されており、予定管理や充電、車体メンテナンスの自動化など、AIがユーザーの先回りをして必要な操作やアクションを提案してくれる。

Tensorは9年以上自動運転の開発を進めてきた。『Robocar』には100個を超えるセンサーや37台のカメラ、22個のマイクなどを搭載。また、NVIDIA『DRIVE Thor』を搭載することで8,000 TOPSクラスの演算処理能力も持つ。自動運転時はハンドルを収納し車内空間を広げられる。もちろん手動運転にも対応している。

Tensor『Robocar』

デリバリー用の自動車でも、商用車が出展された。中国のNeolixは自動配送車の新モデル『X1』と『X3』を発表。同社の既存の配送車はすでに中国や中東などで商用化されており、日本で実証実験が行われたこともある。家庭やオフィスへモノを運ぶ、ラストマイル用途として開発された。

『X1』と『X3』はどちらもセンサー+遠隔監視を組み合わせた自動運転レベル4に対応。『X1』は2輪+キャスター仕様の小型モデルで歩道やビル内のラスト100メートル向け超小型モデル。最大積載量は50kgだ。『X3』は車道の走行を考えた小型のバン型で4輪。最大積載量は数百kgで複数のロッカーを搭載できる。こちらはコンビニやECの配送拠点から住宅街までのラストマイル配送用途を想定している。

Neolix『X3』

次世代モビリティでも実用性を考えたモデルが登場

モビリティ関連の展示全般としては実用性や数年先の技術が目立っていたが、実はまだまだ「夢」として考えられる次世代モビリティ、すなわち乗用ドローン・eVTOLの展示も多く見られた。一方で、昨年のCES2025に出展していたこの市場の関連スタートアップの姿が、今回は見当たらない例も多かった。機体そのものの開発だけでなく、認証取得や運航管理システム、インフラ整備など、事業として成立させるために越えるべきハードルがあまりに多く、この市場で「継続すること」がいかに難しいかも浮き彫りになった。

この分野の先駆者的な存在である中国のXPeng AeroHTですら、CES2026には出展していなかった。同社はCES2024で乗用EVに収納式のプロペラを取り付けた「空飛ぶ車」、『eVTOL Flying Car』を発表。CES2025では6輪のEVトラックに2人乗り乗用ドローンモジュールを積み、現地で切り離して短距離飛行する「陸空一体モジュラー型飛行車」と呼べる『Land Aircraft Carrier』の非動作実車の展示を行い、2026年中の出荷をアナウンスした。だが、現在聞こえてくるのは中国国内での運航テストについてのみであり、商用化はまだまだ先になるのだろう。

それでは、CES2026で展示されていた乗用ドローンは、どれも開発中やコンセプトモデルばかりだったのだろうか。否、驚くことにすでに販売を視野に入れたモデルがいくつか展示されていたのだ。

AIR VEV『AIR ONE』

RICTORは1人乗りの『X4』を発表。最大ペイロードは100kgで、バッテリー容量や最大航行距離は現時点で非公開。63インチのカーボンファイバー製折りたたみ式プロペラを4軸8枚構成で搭載し、騒音レベルは65デシベル以下。ダイナミックバランス・アルゴリズムで8つのモーターの出力をリアルタイムで制御し、最大風速レベル6の横風下でも安定したホバリングが可能だ。

アメリカの超軽量航空機規定『FAA Part 103』に準拠しており、機体の型式証明や登録、操縦士免許などが不要なレジャー用航空機という扱いの製品となる。コックピット内のジョイスティックを使った半自動運転、スマートフォンアプリを使って航路を設定する自動運転のどちらにも対応する。発売価格は3万9,900ドル(約632万円)で、出荷開始は2026年第2四半期を予定している。

RICTOR 『X4』

Coolflyの立ち乗りeVTOLは2028年に販売開始予定で、現在予約を受け付け中。価格は9万9,999ドル(約1,584万円)。本体を覆うアームを立て、人間が立ち乗り状態で操縦する。1人乗りでペイロードは110kg、最高速度100km/hとのこと。こちらも『FAA Part 103』準拠だ。

Coolfly eVTOL

他にもAIR VEVの2人乗り『AIR ONE』(製造企業Emotiv Mobilityブースに展示)が2026年末までの出荷を予定、販売価格は15万ドル前後、またLEO Flightの1人乗り『LEO JetBike』が2026年第4四半期出荷開始予定で9万9,900ドル(約1,583万円)など、2026年中に引き渡しを予定している製品がいくつか見られた。法整備がまだ進んでいない日本での商用化は先になるだろうが、2027年にはアメリカなどで個人が所有する乗用ドローンが飛んでいる姿も当たり前になっているかもしれない。

LEO Flight『LEO JetBike』

モビリティの未来を実感したCES2026

CES2026のモビリティ関連の展示からは、開発の焦点が実用性やビジネスを視野に入れた実現可能な将来の姿へと移行し、過去に見られた話題作りの製品の出展は大きく減っていることが見てとれた。その傾向は近未来モビリティにも見られ、ハードウェアとしての乗用ドローンも実用化の目途が立ちつつある。ただし、商用化には価格面も含めて立ちはだかる壁はまだまだ大きい。

今後のモビリティ開発は、完成車メーカーから半導体やAIベンダーへと主導権争いが移行する様も垣間見えた。モビリティは単なる移動手段を越え、AIがユーザーに先回りして寄り添う走るAIエージェントへと進化、我々の生活基盤を根本から書き換えていくモノになっていくことだろう。

自動車向けのエージェントAIについては、別記事で触れているのでそちらを参照してほしい。

【CES2026レポート②AI】 自律型AIエージェントが生活と社会を能動的に支えるパートナーへ進化

(取材・執筆:P.P. Communications)

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キャディは「モノづくり産業のポテンシャルを解放する」というミッションを掲げ、製造業AIデータプラットフォームCADDi を提供しています。 このミッションを全世界で実現するための活動の一環として、2026年1月5日〜9日にラスベガスで開催された「CES2026」にもブースを出展いたしました。

本シリーズでは、出展に合わせて現地で視察した「製造業を変革するために不可欠な最先端テクノロジー」や「最新のトレンド」について、全6回にわたりお届けします。

P.P. Communications

AuthorP.P. Communications

年間を通して海外展示会を取材。レポートの発行・提供の他、そこで蓄積されたIT/ICT業界への深い知識と技術力を強みに、マーケティング・コミュニケーション領域の企画、調査や分析に裏付けられた的確な戦略立案、そして実施フェーズにおける支援を行っています。

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