製造業の受発注業務システムとは？導入メリットや選び方を紹介

製造業における受発注業務とは？

製造業の受発注業務とは、企業間の取引において原材料や部品の仕入れ、製品の販売までを含めた一連の流れのことです。

受注業務では、注文書や発注書の受け取り、見積書の作成と提出、受注確定と製造指示などが含まれます。一方、発注業務は、必要な原材料・部品の数量確認、取引先への発注書作成、納期管理、入荷確認などを行います。

多くの製造業では、これらの業務を電話やFAX、メール、EDIで行うのが主流です。

受発注業務は製造業の要となる重要な業務です。もし業務が滞ると、製造から納品までのサプライチェーン全体に遅れが生じ、取引先との信頼関係を損なう可能性があります。特に複数の取引先と同時に業務を進める場合は、正確な情報管理と素早い対応が求められます。

製造業の受発注における課題

製造業の受発注業務には、以下のような課題が存在します。

• ヒューマンエラーが起こりやすい
• 人的リソースがかかる
• 書類の管理が必要になる

これらの課題は、業務効率の低下や余分なコストの発生に繋がるため、早急な対策が求められています。

ヒューマンエラーが起こりやすい

製造業の受発注業務では、手書きの伝票や紙の注文書を使用することが多く、ヒューマンエラーが発生するリスクがあります。

例えば、数量、単価、納期などの記入ミスや転記ミス、FAXの誤送信や未送信、重要書類の紛失や破損など、さまざまなミスが起こりえます。

例えば、こうしたミスが発注側と受注側の認識の食い違いを生み、生産計画の遅延や在庫の過不足に繋がります。

また、ミスが発覚した場合の確認作業や修正作業にも多くの時間を要し、担当者の業務効率を低下させる要因となります。

人的リソースがかかる

製造業の受発注業務では、取引先への電話やFAXでの連絡、注文を受けた後のシステムやExcelへの入力作業など、さまざまな工数がかかります。

特に複数の取引先と同時進行で業務を行う場合、担当者は常に進捗管理に追われるでしょう。また、ベテラン社員の経験やノウハウに依存した業務フローは、人材の異動や退職時に問題を引き起こす可能があります。例えば、引き継ぎ期間中に多くの労力と時間を要し、通常業務に支障をきたすことがあります。

このような人的リソースの偏りは、コア業務に時間を割けない、残業時間の増加、などの問題を引き起こすでしょう。

書類の管理が必要になる

製造業の受発注業務では、見積書や発注書、納品書、請求書、仕様書といった大量の書類の管理が必要です。また法律で、定められた期間内まで書類を保管することが義務付けられています。

書類の管理は保管スペースの確保が必要になるほか、経年劣化による資料の破損リスクや必要な書類検索に時間がかかるといった問題が発生します。

製造業では、受発注書類以外にも図面などの膨大な書類を保管しなければなりません。このため、書類の整理・保管作業が大きな負担となっているケースも少なくありません。

参考：「帳簿書類等の保存期間」 国税庁

属人化による業務停滞リスクがある

受発注業務においては、特定の担当者、特に経験豊富なベテラン社員に業務が集中し、その知識や進め方が他の社員に共有されていない「属人化」が進んでいるケースが見られます。

属人化が進むと、担当者の不在時（休暇や病気など）や退職時に業務が滞ってしまうリスクが発生します。緊急性の高い発注への対応が遅れるといった問題も生じかねません。

さらに、担当者が個別のやり方で業務を進めている場合、他の社員は担当業務の正確な進捗状況を把握することが難しくなります。取引先との交渉や価格査定など、業務遂行に不可欠な重要なノウハウが特定の担当者の中に留まり、組織全体で共有・蓄積されないという課題もあります。

製造業に受発注業務システムを導入するメリット

製造業の受発注業務を効率化するためには、受発注業務システムの導入がおすすめです。この章では、製造業の受発注業務システムを導入するメリットを紹介します。

リードタイムを短縮できる

受発注業務システムの導入により、発注から納品までのリードタイムを大幅に短縮できる可能性があります。従来の受発注業務では、見積書の作成と確認、納期調整の電話やメール、受注確認書の返送といった工程に日数を要していました。

しかし、システム導入後は見積から発注までワンストップで完結し、リアルタイムでの在庫確認が可能です。また、納期の自動調整機能や承認フローのデジタル化により、最短で即日発注から受注確認までの工程が完了することもあります。

電話やFAXなどに要していた時間を削減し、業務工程の削減に繋がるでしょう。

受発注業務を一元管理できる

受発注業務システムを導入することで、見積書・発注書の作成から承認までの流れ、取引先ごとの受発注履歴、納期の進捗管理などの情報を一元化できます。

複数の拠点や部署間でリアルタイムに情報を共有できるため、「あの書類はどこにある？」といった無駄な確認作業も削減できます。

ミスやトラブルを軽減できる

受発注業務システムを導入することで、注文数量の入力ミスや納期の記入間違いなどのヒューマンエラーを軽減できます。過去の取引データを参照できるため、経験の浅い担当者でも適切な受発注が可能です。

また発注履歴がシステム上で一元管理されるため、同じ注文を重複して行うリスクが低減されます。さらに、システムによるチェック機能により、数量や単価の誤りも未然に防げるでしょう。

システム上で承認フローが設定されているため、必要な承認を得ずに発注してしまうといったトラブルも回避しやすくなります。

ペーパーレス化を実現できる

注文書や請求書などの紙の書類を電子化できるため、保管スペースや印刷コストの削減、書類の紛失リスク低減といったメリットが生まれます。

特に製造業では、図面や仕様書など大量の書類を扱うため、ペーパーレス化による効果は大きいです。 例えば、1案件あたりの書類をデジタル化することで、保管場所の確保が不要になり、複数人でのデータ共有が可能になります。また、紙の経年劣化を心配する必要もありません。

システムを導入することで、これまで紙で管理していた書類をクラウド上で安全に保管し、関係者間でリアルタイムに共有できます。

見積データを資産化できる

受発注業務システムの導入は、見積情報を企業の重要な資産として蓄積・活用することを可能にします。システムに蓄積された見積データはデータベース化され、類似部品の過去の取引価格や相場価格を瞬時に確認できるようになり、特定の取引先との見積履歴や価格推移も容易に参照可能です。

蓄積されたデータは、サプライヤーとの価格交渉において具体的な根拠として活用できます。過去のデータ分析に基づいた調達戦略の立案や、サプライヤーのパフォーマンス評価の判断材料としても活用できるでしょう 。

製造業に受発注業務システムを導入するときの注意点

受注発注システムは、業務効率化を向上できる一方、導入時に注意すべきポイントがあります。

取引先との連携が必要である

受発注業務システムを導入する際、取引先とのスムーズな連携が重要です。システムを導入しても、取引先が対応できなければ効果が半減してしまう可能性があります。

特に注意が必要なポイントは、取引先のシステム環境の確認、データフォーマットの統一、運用ルールの擦り合わせです。 例えば、取引先が異なるシステムを使用している場合、データ連携の方法を検討する必要があります。また、受発注データのフォーマットが異なると、変換作業が発生し、かえって業務が煩雑になるリスクがあります。

このため、システム導入前に主要取引先との事前協議を行い、システム導入の理解と協力が得られるか、相互のシステムの互換性はあるか、などを確認しましょう。

システム障害による業務停止のリスクがある

デジタル化は業務効率を向上する画期的なツールですが、システム障害が発生した際のリスクを考慮する必要があります。 主なリスクとしては、サーバーダウンによる受発注業務の停止、データの消失や破損、セキュリティ侵害による情報漏洩などが挙げられます。

リスクに備えるためには、定期的なデータバックアップの実施やサポート体制の有無などを確認しておきます。またシステム復旧フローを事前に構築して取引先と連携したり、旧来式のアナログのやり方で一次対応したりするなど、事前の対策を行うと良いでしょう。

システムベンダーのサポート体制や、障害時の復旧時間についても確認しておきましょう。

製造業における受発注業務システムの選定ポイント

この章では、システム導入の注意点を踏まえて、システム選定のポイントを紹介します。

製造業に必要な機能が搭載されているか

受発注業務システムを選定する際は、業界特有の業務に対応した機能が実装されているかを確認しましょう。 製造業では、図面や仕様書の添付・管理機能、見積書・注文書の発行機能、取引先ごとの単価管理機能などが必要です。

特に図面管理において、CADデータや3Dデータなど、大容量のファイルを扱えるかどうかも確認しておきましょう。

自社の業務フローに合わせてカスタマイズできるシステムを選ぶことで、より効率的な運用を目指せます。

導入しやすいか

受発注業務システムを導入する際は、コストと運用方法の両面から慎重に検討しましょう。

導入コストの観点では、初期費用や月額利用料にくわえ、ユーザー数が増えた際の追加ライセンス料や、自社に合わせたカスタマイズ費用なども視野に入れておきます。

運用面では、導入時のサポート体制が整っているか、操作はしやすいか、問い合わせへの対応は迅速かといった点を確認します。

クラウド型システムなら、初期費用を抑えながら段階的に機能を拡張できるため、導入のハードルが下がります。

使い勝手がいいか

受発注業務システム を選定する上で、実際の業務フローに即した「使いやすさ」は重要なポイントです。システムを導入しても、現場の担当者が直感的に操作できなければ、定着せずに形骸化してしまうリスクがあります。

例えば、現在Excelで受発注情報を管理している企業であれば、Excelからのデータ一括取り込み機能があるシステムを選ぶことで、スムーズに移行でき、導入後のデータ入力の手間を大幅に削減できます。

また、システム導入によってかえって新たな作業工程が増えてしまわないか、という点も注意が必要です。データを手作業で入力しなければならない項目が多いシステムや、過去の取引データが適切に蓄積・活用されないシステムを選んでしまうと、社員の業務負担が増大し、システム導入の効果が得られない可能性があります。

既存の複雑な業務フローをシステムによってシンプル化し、担当者の入力作業や確認作業といった負担を実質的に軽減できるシステムを選択することが望ましいでしょう。無料トライアルなどを活用して、実際の操作感を試してみることも有効です。

自社の課題を解決するシステムか

システム選定において重要なポイントの1つは、自社が抱える具体的な課題を解決できる機能が備わっているかです。そのため、まずは現状の受発注業務における課題を詳細に洗い出すことから始めましょう。

例えば、手入力や転記によるヒューマンエラーが頻発しているなら、入力内容の自動チェック機能や承認フローによるミス防止機能が備わっているかを確認します。

導入後にシステムがどのように課題を解決し、業務がどのように変化するか、具体的な運用イメージを持つことで、より自社に最適なシステムを選定できるでしょう。

受発注業務システムの導入事例

受発注業務システムを導入した企業では、従来の課題解決に加えて、大幅な業務効率化や組織変革を実現しているケースがあります。以下では、実際に受発注業務システムを導入した企業の成果をご紹介します。

見積の効率化と属人化の解消｜株式会社アルファーシステムズ様

自動化システムの提案・企画設計・製造、機械・制御装置の設計製造を手がける株式会社アルファーシステムズでは、調達業務の属人化と非効率な見積プロセスという課題を抱えていました。

紙ベースでの図面管理と個別メール対応によって、進捗確認の手間やミスが発生し、担当者不在時の対応が困難な状況でした。特に部品表の材質ごとにフォルダを作成し、図面を印刷して管理するという煩雑な作業が必要で、過去の見積履歴を探すのにも時間がかかっていました。加えて2022年頃からの原材料費や人件費の高騰により、価格の妥当性判断も困難になっていたのです。

同社は製造業AI見積クラウド「CADDi Quote」の導入を決定しました。「まとめて一括で依頼ができるので、今までのように個別にフォルダを作って図面をアップして…という手間がなくなり、しかも抜け漏れがなくなる」点に魅力を感じたといいます。

導入の結果、一括での見積依頼と進捗管理が可能になり、ダッシュボードで一目で状況確認ができるようになりました。複数の担当者が同じ情報を共有できるようになったことで属人化が解消され、担当者不在時も業務が滞らなくなっています。過去の見積もり履歴もワンクリックで確認できるようになり、サプライヤーからの回答率も向上し、発注までのリードタイムが短縮されました。

導入後の主な成果

• 進捗管理の可視化：ダッシュボードでリアルタイム状況確認を実現
• 属人化解消：担当者不在時でも業務継続が可能に
• リードタイム短縮：見積回答の早期化により発注プロセスを効率化
• 履歴管理効率化：過去見積もりデータへのワンクリックアクセスを実現

参考：株式会社アルファーシステムズ様｜製造業AIデータプラットフォームCADDi

調達業務の専門性向上と営業・設計との連携強化｜ハカルプラス株式会社様

計量事業を中心に多様な「はかる」技術を提供するハカルプラス株式会社（創業1916年、従業員254名）では、4つの事業部それぞれで必要な専門知識が異なるため、ベテランに業務が集中し属人化が顕著でした。

調達システムと図面管理システムが異なっていたため、図面の参照が速やかにできず、顧客からの問い合わせのたびに設計への確認が必要という非効率な状況でした。また、計測・計装・計量・メディカルケア機器の4事業部をすべて担当する調達では、適正な価格や手配先の判断が困難で、経験や専門知識を持つ人材に難易度の高い業務が集中していたのです。

同社は設計が先行してCADDi Drawerを導入していたことをきっかけに、CADDi Quoteの導入を検討しました。特に社歴が浅いメンバーからのポジティブな声が多く挙がり、若手の活躍が属人化解消に繋がることから導入が決定されました。

導入後、CADDi QuoteのAIアシスト機能により、若手でも高い精度のサプライヤー選定が可能になりました。これまでベテランでも10~15分かかっていたサプライヤー選定が数分で完了するようになり、過去実績の見直しにも繋がっています。また、設計からも調達部品の手配状況を確認できるようになり、手配漏れのリスクが大幅に低減されました。

導入後の主な成果

• 属人化解消：AIアシスト機能により若手でも高精度な業務遂行を実現
• 業務効率化：サプライヤー選定時間を10~15分から数分に短縮
• 部門間連携強化：設計と調達の情報共有によりリスク低減
• アナログ作業削減：コミュニケーション方法の集約により大幅効率化

参考：ハカルプラス株式会社様｜製造業AIデータプラットフォームCADDi

まとめ

製造業の受発注業務における根本的な課題は、業務プロセスの非効率性と情報の分散管理にあります。それによって生じる手作業による転記ミスや属人化による業務停滞は、企業の成長を妨げる恐れがあります。

受発注業務システムの導入は、これらの課題を解決する有効な手段です。しかし、システム導入の効果を最大化するには、図面データとの連携を含めた包括的なアプローチが重要になります。AIによる類似図面検索や過去実績の活用によって、受発注業務の課題を解消しましょう。

適切なシステムの選定により、受発注業務の変革と競争力の持続的な向上を実現できるはずです。