1973年に創業した高口精密工業では、主に精密機器の部品加工を行っている。例えば、半導体製造装置の構成部品や産業用ロボット、自動車部品などが代表的だ。近年は、医療関係の血液分析装置を構成する部品製造も請け負っている。今後、半導体を中心に需要が増えていくことが想定されている中で、業務効率化や属人化の解消を目指している。
代表取締役常務である髙口氏は、日々膨大な業務に忙殺されていた。特に、見積業務は大きな負担となっていた。見積もりに時間がかかる理由は、主に2つある。
1つ目は、見積もりの参考となる過去の図面を探すのに時間がかかることだ。高口精密工業では、毎月1,000枚以上の図面を扱っており、PDF化して保管している。単価情報を書き込んだ1枚の図面を探すために、10万枚もの図面の中からPDFを1つ1つ開いて確認する必要があった。特に、同じ部品であっても、異なる納品日であれば別の図面として保管していたため、同じ部品の図面が数十枚にも及んでいた。探しやすいようにフォルダ構成やファイル名の工夫をしていたが、膨大な数の中から目的の図面を探すのは困難だ。
2つ目は、時期によって異なる材料費の反映である。同じ図面・同じ加工であっても材料費の変動によって見積もり額も変動する。過去図面の見積額に対して材料費変動分を反映させる必要があるため、当時の材料費はいくらだったかを材料メーカーに確認していた。
さらに、見積もりの精度についても課題を感じていた。見積額算出の前提条件となる加工設備や加工方法が実態に合っていない案件があったのだ。実態に合わせた見積もりを行うと赤字になっている案件もあったため、見直しが必要な状況だった。
髙口氏は、見積もりに追われる状況についてこのように話す。
「見積もりの他に、製造現場からの相談やお客様対応、採用関連の業務も私の担当業務です。見積もりは社長が一部を担当していますが、それ以外はすべて私が担当しているので、朝8時から始めて17時までずっと見積もりをするような日もありました。業務の分散を進めて、各現場を担当する主任とのコミュニケーションや自分しかできない業務に時間を充てたいと考えていました。」