樫山工業株式会社は、1986年に主力製品となるドライ真空ポンプの開発に成功し、多くの真空機器の製造・開発を行ってきた。「速く 少なく 簡単に」を社内全体の行動指針として掲げる樫山工業の製品は、業界ニーズに素早く対応することにより市場で高い評価を受けている。ドライ真空ポンプの業界シェアは、世界でトップクラスに位置しており、半導体や液晶パネルの製造では必要不可欠な存在だ。
樫山工業では加工部門を持ち、製品の性能を決める重要なパーツについては自社で加工を行ってきた。それ以外の部品は様々なサプライヤーへ発注している。1台の製品に使われる部品数は多いもので100種類にもなり、全種類の製品の部品を合計すると、1万5千種類もの部品が常時取り扱われてきた。また、樫山工業で製造する製品は、ベースとなる製品に対して、お客様の仕様に合わせた一品一葉の特殊品設計が多く行われる。それぞれのお客様ごとに図面が作成されるので、日々膨大な図面が作られていた。
図面は近年導入された図面管理システム内に保存されている。しかし、図面の詳細は設計担当者や、発注に関わった調達担当者しか分からない状態であり、過去の類似案件の図面を探すには、担当者に聞くか、予測して1枚ずつ見ていくしか方法がなかった。該当図面の検索に膨大な時間が必要となる。さらに、発注実績のデータと図面データは別のシステムで管理されていたため、該当図面が見つかったとしても、図面が使われた発注履歴を探すために発注管理のシステムを新たに開く必要があった。
発注は本来、複数のサプライヤーを比べ、最適なサプライヤーを選択することが望ましい。しかし、納期優先の案件も多く、選択は調達部担当者の経験に頼る部分が多くなっていた。このため、発注業務の属人化が進み、同じような案件でも、調達価格に最大で2、30%ものブレが生じることがあった。また、設計部門においても、検索に時間がかかるので、使用可能な類似案件の図面を使わず、新図を作成していることが多かった。過去の図面や知見の活用は設計者の経験に頼ることになる。こちらでも属人化が進んでいた。