製造業AIデータプラットフォーム CADDi

CADDi
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社名
富士油圧精機株式会社
設立
1965年
従業員数
85名
売上高
非公開
業界
印刷機・製本機
事業内容
各種省力化機械・油圧プレス・専用工作機等の設計、製造、販売
富士油圧精機株式会社

事例 CADDi Quote

利益1.3倍、調達コスト3割減。QCDを“定数”から“変数”に変えた、富士油圧精機の調達DX戦略

取締役

剱持 卓也

製造管理課

齊藤 彩乃

小林 凌平

導入前・導入後

①見積業務:担当者ごとにFAXやメールで見積依頼がバラバラ。依頼や回答が共有されず、重複依頼が発生。紙での見積依頼作成に1件あたり30分かかっていた。

②働き方:見積回答が1件でもあれば、その確認のために出社が必須だった。

③サプライヤー:新規サプライヤー開拓は年間1社程度。相見積は多くて3社が限界だった。

④コスト・売上:従来のサプライヤーとの固定的な取引が中心。

⑤組織・文化:調達業務がブラックボックス化し、属人化が進行。「社内に設備がない」などを理由に失注することも。

①見積業務:依頼フォーマットが統一され、誰でも進捗を確認可能に。見積依頼にかかる時間が1分に短縮。

②働き方:DXですべてシステム上で完結するようになった結果、テレワークが実現し。育児との両立も可能に。

③サプライヤー:1年弱で23社の新規サプライヤーを開拓。手間を気にせずに相見積を取ることが可能に。

④コスト・売上:AI活用と相見積の徹底により、調達コストが約3割削減。売上・利益が過去最高となり売上昨年対比10%向上、利益1.3倍を達成。

⑤組織・文化:データに基づき若手社員が意思決定できるように。外部ネットワークを活用し、受注機会の増大へ。

インタビュー

「これは未来への投資だ」内製率8割の企業が調達DXに踏み切った理由

創業から60年近く、製本・印刷業界で日本の出版文化を支えてきた富士油圧精機。業界全体がデジタル化の波に押される中で、同社はトレーディングカードのパッケージングという新たな収益の柱を確立。コロナ禍の巣ごもり需要も追い風となり、一度は落ち込んだ業績も、その後V字回復を果たすに至った。

 

一見、順風満帆に見える同社だが、元製造部部長で現取締役の剱持氏は見えざる課題の存在を感じていたという。それは、長年の経験と勘に依存しブラックボックス化された「調達」という業務領域だった。製造業AIデータプラットフォームCADDiとアプリケーションである製造業データ活用クラウドCADDi Drawerを先行導入していた同社は、これを機にCADDiのアプリケーションである製造業AI見積クラウドCADDi Quoteの検討を始めた。

 

剱持氏
「CADDi Quoteの紹介を受けたとき『内製率が8割を超える弊社にとって、調達DXはすぐに関係のある話ではない』というのが第一印象でした。しかし、CADDi Drawerを先行導入していた経験から、CADDi上に乗るCADDi Quoteとのデータ連携には計り知れない可能性があると感じたのです」

 

剱持氏が見据えていたのは、目先の業務効率化だけではなかった。「5年後、10年後というスパンで見たときに、CADDi DrawerとCADDi Quoteのデータ統合は絶対にプラスになる。これは未来への投資だ」。その確信こそが、導入の決め手となった。

「これは未来への投資だ」内製率8割の企業が調達DXに踏み切った理由

30分の見積書作成時間が1分に。情報共有がもたらした働き方改革

導入後、最も劇的な変化が訪れたのは日々の見積発出業務だった。製造管理課の齊藤氏はCADDi Quote導入以前の状況をこう振り返る。

 

齊藤氏
「以前は見積の回答が紙で届くため担当者しか内容を把握できず、情報が全く共有されていませんでした。誰かが既に見積を取ったことを知らずに、別の担当者が同じサプライヤーに再度依頼してしまい、お叱りをいただくといった重複作業も頻繁にありました」

 

見積依頼のたびに、宛名を書き換え作成した見積書をFAXで送る作業には約30分を要していた。また担当者が休みを取ったり、極端な場合は持ち場を離れていただけで業務が停滞してしまうこともあったが、CADDi Quoteはこのアナログな業務フローを根底から覆した。

 

齊藤氏
「今では誰がいつ、どの部品の見積を依頼してどんな回答があったのかすべてシステム上で確認できます。席を立たずにわずか1分で複数社への依頼が完了する。見積のためだけに出社する必要もなくなり、子育てをしながらでもテレワークで業務を完結できるようになったことは、本当に大きな変化です」

 

情報の可視化は単なる業務効率化にとどまらず、社員一人ひとりの心理的安全性も高まる柔軟な働き方を可能にしたのである。

30分の見積書作成時間が1分に。情報共有がもたらした働き方改革

70社行脚によるサプライヤーとの関係再構成と、年間1社→23社の新規開拓

CADDi Quoteの導入効果を最大化する上で不可欠だったのがサプライヤーの協力であった。製造管理課の小林氏は、自身が新入社員であった導入初期の苦労を語る。

 

小林氏
「導入にあたり約70社のサプライヤー様を訪問しました。それまでは担当者ごとにFAXやメールと依頼方法がバラバラだったため『フォーマットを統一してほしい』というお声も頂戴する一方で、ネット環境がなかったり、電子化そのものに抵抗感をお持ちの企業様もいらっしゃって大変でした」

 

断られることも一度や二度ではなかった。しかしデジタル化やDXを推進する上で、既存の体制ありきで考えるのではなく、どういう会社と付き合っていくかという観点を必要とする剱持氏の「ダメだったら他のサプライヤーを開拓する。これは関係を見直す良い機会でもある」という激励の言葉に背中を押され、小林氏は粘り強くCADDi Quoteの導入メリットを説いて回った。

 

小林氏
「CADDi Quoteは弊社だけでなくサプライヤー様にとっても、作業の効率化や紙・インク代といった物理的なコスト削減に繋がることを丁寧に説明しました。結果的に多くのサプライヤー様にメリットを感じていただき、協力体制を築くことができました」

 

剱持氏
「『これを使うと見積りの返信が楽になりますよ』というくらいの気持ちでいいんじゃないかと伝えました。このように少し割り切って考えることで、サプライヤーとの関係を見直すいい機会にもなったと思います」

 

この地道な活動が後に大きな成果を生む土台となった。従来は多くて3社が限界だった相見積がCADDi Quote上で簡単に10社以上に行えるようになり、新たな取引先が次々と見つかったのである。結果として、従来は年に1社程度だった新規サプライヤー開拓が、1年弱で23社開拓できるまでの飛躍的増加を遂げるに至った。

 

剱持氏
「従来は相見積を取るとき、メールで1件1件文書を作成して送らなくてはいけなかったのですがCADDi Quoteだと5社、必要に応じて10社以上とまとめて依頼できるのでとても簡単です。そのため従来は『たくさんメール送るのが手間だから、ちょっと減らして見積取ろうか』などと考えていたのが、今では『こことここにも見積依頼を出してみたら面白いかも』などと考えられるようになりました。

 

そうやって実際に出してみたら『うちもできますよ』『うちの協力会社だったらできるので、他の図面もください』というサプライヤーが次々に出てきて、どんどん開拓を進めていくことができました。これまでは「ここの会社さんはこの加工しかできないから、その見積だけ出してね」と言っていたところが、実際は全く違う分野の外注加工も得意としていたことが判明したり、あるいは同じ加工を得意としていた従来のサプライヤーに比べて圧倒的に値段が安かったりなど、新しい発見もありました」

 

剱持氏が強調するのが、CADDi Quoteによって物理的限界を超える「ポテンシャル解放」だ。

 

剱持氏
「重要なのは物理的限界を超えられることで、以前は『相見積といえば三社が限界、なぜならすごく手間がかかるから』というような『常識』の中にいました。しかし、CADDi Quoteならその限界を超えることができるので『必要に応じて10社以上でも出せる』ということになるわけです。そのようにサプライヤーの分母を増やすことは非常に効果的で、具体的な数字面での向上にも繋がっています」

70社行脚によるサプライヤーとの関係再構成と、年間1社→23社の新規開拓

「失注」は宝の山―。データが導く自社の原価改革

剱持氏が話すように、サプライヤーネットワークの拡大は直接的なコスト削減にも繋がった。

 

剱持氏
「CADDi Quoteによって最適なサプライヤー様を見つけられるようになった結果、調達にかかる費用は全体で3割ほど下がっています。そこに至る途上は例えば、これまで20円で買っていたものが新規の取引先では10円でできるといった発見の連続でした」

 

しかし、同社の変革はそこで終わらない。CADDi Quoteがもたらした最大の価値の一つは「失注データの資産化」にあると剱持氏は言う。

 

剱持氏
「我々は発注側であると同時に、お客様から図面を預かり見積を提出する受注側でもあります。CADDi Quote上には、我々がお客様に提出して失注した見積もすべて記録として残ります。その中では、発注回答したけど受注にならなかったということも当然起こり得る。そうなったときに、これまではどうしていたかというと『残念だったね』で済ませてしまっていたんです。思考停止して捨ててしまっていたため、情報としては何も残らなかった。

 

しかし、今はそうではなくすべて記録として残して『なぜ失注したか』を分析しています。原因が価格なのか、納期なのかなどは最初はわかりませんが、受注に至らないのは必ず何か問題があるからなんです。今、原価低減の仕組みをCADDi Quoteで必ず回すようにしています。我々としても失注したお客さんに『どこがまずかったですかね?』と正直に聞くわけです。そこで『ちょっと高くてね』という話になったら、次にすべきことは社内の努力だという形で跳ね返ってくるのです。

 

失注したもののうち、当社の原価が高いということが判明したものに関しては、社内での加工に対してもう一度原価の見積をかけます。それによって、見積に反映することができれば市場競争力が高まる。つまり、失注がきちんと見直しのきっかけになっているわけです。これに関しては、我々のサプライヤーや他社にも『これこそが真の競争力ですよ』と伝えていきたいです」

 

剱持氏が話すように「価格が高かった」というフィードバックがあれば、即座に社内の加工費や原価設定を見直す。こうしたサイクルを回すことで、自社の市場競争力を常にアップデートし続けることができる。以前はただ記憶から消えていたはずの失注が、今では未来の受注に向けた改善の起点へと変わったのだ。

 

剱持氏
「最初は『うちの価格って、そもそも適正なの?』というところからCADDi Quoteを使って調べ始めました。それに対して一定の効果が出て、さらに進んでこの1年で23社のサプライヤーを増やすことができたことは、まさに『ネットワークを広げる』ことの効果だと言えると思います。

 

そうすると、次は当然『日本のモノづくりそのものの絶対値が明確になるのではないか』という発想に繋がってきます。キャディさんは北海道から沖縄まで、色々な会社にソリューションを導入してもらっているのですから、もし我々がそれら他の導入企業と繋がることができれば『この部品に関しては関西が強い』『この案件に関しては東北が強い』といった形で、地域性を活かしたコラボレーションも可能になるのではないかと期待しています」

「失注」は宝の山―。データが導く自社の原価改革

必要なのは“聖域定数”からの脱却。QCDは“変数”になる

一連の改革を通じて、剱持氏は製造業に根付く固定観念や物理的限界といった「聖域定数」からの脱却こそが重要と確信したという。

 

剱持氏
「調達に限らず、会社組織の中には固定化された専門性の高い業務がたくさんあります。そして、それらは往々にしてブラックボックス化します。例えば『既得権益の温床』という言葉をよく聞くと思いますが、社長が思い立って『調達を変えよう』と言っても『いや、その考えではうちの課題は解決できません』『どうせ実態について知らないでしょう』などといった言葉が横行し、そこでストップしてしまう。こうした障壁が『聖域定数』です。

 

そのように『この業務は変えることのできない定数なんです』と言い切ってしまう人が出てくる。例えば『社内設備で製造できるものしか対応できません』『社内原価以下のものは受注できません』『社内設備で対応できる物量しか扱えません』といった具合に既得権益側に『ないない尽くし』を並べ立てられて受注に繋がらなくなるのです。そして会社側も、本当かどうかもわからないのに『できない、できない』という言葉を鵜呑みにしてきたということです」

 

こうした状況を打開できるのがCADDi Quoteだと剱持氏は説く。

 

剱持氏
「CADDi Quoteを使うと、外部サプライヤーの力を借りることができます。社内に設備がないなど自社で完結しない案件であっても、サプライヤーの協力を得て対応することができるようになります。また価格に合わせて発注するサプライヤーを探すこともできる。そして納期に関しても、複数のサプライヤーに対応してもらうことで納期遅延をなくすことが可能になります。

 

このように、実はこれまで『定数』だと思っていたQCDがコントロール可能な『変数』に変わるのです。この『従来できなかったことができるようになること』は、おそらくまだ多くの会社さんでは停滞している部分だと思いますが、そこに対してはCADDi Quoteという新たなソリューションを導入することで、ブレイクスルーが可能であるという一つの証明になっていると思います」

 

社内に設備がなくても最適な加工先を見つけて受注する。自社のキャパシティを超えても複数のサプライヤーに協力を仰ぎ納期に応える。CADDi Quoteは富士油圧精機の事業のあり方そのものを変え、いわば受注を逃さぬ『無限のキャパシティ』を手に入れるための強力な武器となった。この変革が、外販(部品単品受注)における売上昨年対比10%向上、利益1.3倍で過去最大の数値を上げ続けているという驚異的な成長を支えている。

必要なのは“聖域定数”からの脱却。QCDは“変数”になる

キャディと本気で目指す、モノづくり産業のポテンシャル解放

剱持氏はCADDi Quoteがもたらした原価効果として、新たに見つけた価値6つを挙げる。

 

剱持氏
「一つ目は『相見積による自社見積の現在地がわかる』という価値です。齊藤たち現場の人間の頭の中にしかなかった社内見積の比較が可視化されました。

 

二つ目は『自社設備にないものでも受注できる』という価値。

 

三つ目は『失注したものを残して活用できる』という価値。これは上述の『記録』のことで1年後、2年後と時が経つにつれて強く効いてきます。

 

四つ目は『新しい協業の機会創出』。CADDi QuoteやCADDi Drawerの導入企業同士の新たな協業が生まれています。

 

五つ目は『他者の行動や判断、興味を可視化し指摘できる』という価値。例えば、私はCADDi Quoteを定期的に見ているので、万一そこで何か問題を見つけたらすぐに指摘することができます。以前はブラックボックスだったので、状況を知りたければ『あれどうなってる?』と聞くしかありませんでしたが、今ではCADDi QuoteとCADDi Drawerを見れば全て一目瞭然になっています。

 

そして六つ目は『重複作業を削減し、物理的限界を見極められる』という価値。これにより、今自分自身がやっていることが最短、最速、最善なのかを問うことができます。つまり、個々の知識や経験に頼ることなく仕事ができるということです」

 

また、その上で「我々がCADDi Quote導入で得た一番の価値は、担当者二人の成長です」と語る剱持氏。データという根拠を得たことで若手社員が自ら考え、意思決定できる組織風土が醸成されたという。この剱持氏の思いを確かに受け止めて、齊藤氏と小林氏はそれぞれ以下の抱負を語った。

 

齊藤氏
「今、サプライヤーの情報もCADDi Quoteに入れたいと思っています。『この会社にはこういう設備があって、この加工が得意』といった情報も、結局その知識があるかないかに依拠するので容易に属人化してしまう。これらをCADDi Quote上で共有することができれば、依頼を出す/出さないという判断も、その情報を元に誰でもできるようになるはずです」

 

小林氏
「最終的に実現したい目標として『世界中のCADDi Quoteのユーザー同士で見積りを発出し合いたい』という野望を抱いています」

 

この二人の先進的かつ野心的な吐露を受け、剱持氏は自身の抱負と展望を次のように語る。

 

剱持氏
「我々はこれまで小さな認知の中でしか仕事をしてきませんでしたが、製造業の世界は我々の認知など遥かに超えて外に大きく広がっています。世界がこのCADDi Quoteのネットワークに繋がったら一体どうなるでしょうか?どの企業も皆、物理的限界を超えて得意な技術を徹底的に追究したり、『うちも負けていられない』と新たな技術革新を模索したりするはずです。これこそが、製造業における切磋琢磨の本質だと思います。こうしたプロセスを経ることでもう一度、日本のモノづくり産業全体が元気になると確信しています。

 

弊社は上述のようにサプライヤー70社を行脚して今もお付き合いがありますが、ポテンシャル解放という観点からすると『本当に70社でいいの?』とも言える訳です。そこは本来、200社、300社あったっていい。つまり、これもまた物理的限界の話なんです。CADDi Quoteの導入・活用によって初めて『そこに固執しているから殻を破れないんじゃないの?』という定数を見直す視点が生まれてくるようになりました」

 

「日本や世界のモノづくり産業全体のポテンシャルを解放したい」というキャディの思想に共鳴し、未来への投資としてCADDi Quoteを導入した富士油圧精機。その挑戦は一社のサクセス事例にとどまらず、変化の時代を生き抜くすべての製造業にとっての道標となるだろう。

キャディと本気で目指す、モノづくり産業のポテンシャル解放
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