剱持氏はCADDi Quoteがもたらした原価効果として、新たに見つけた価値6つを挙げる。
剱持氏
「一つ目は『相見積による自社見積の現在地がわかる』という価値です。齊藤たち現場の人間の頭の中にしかなかった社内見積の比較が可視化されました。
二つ目は『自社設備にないものでも受注できる』という価値。
三つ目は『失注したものを残して活用できる』という価値。これは上述の『記録』のことで1年後、2年後と時が経つにつれて強く効いてきます。
四つ目は『新しい協業の機会創出』。CADDi QuoteやCADDi Drawerの導入企業同士の新たな協業が生まれています。
五つ目は『他者の行動や判断、興味を可視化し指摘できる』という価値。例えば、私はCADDi Quoteを定期的に見ているので、万一そこで何か問題を見つけたらすぐに指摘することができます。以前はブラックボックスだったので、状況を知りたければ『あれどうなってる?』と聞くしかありませんでしたが、今ではCADDi QuoteとCADDi Drawerを見れば全て一目瞭然になっています。
そして六つ目は『重複作業を削減し、物理的限界を見極められる』という価値。これにより、今自分自身がやっていることが最短、最速、最善なのかを問うことができます。つまり、個々の知識や経験に頼ることなく仕事ができるということです」
また、その上で「我々がCADDi Quote導入で得た一番の価値は、担当者二人の成長です」と語る剱持氏。データという根拠を得たことで若手社員が自ら考え、意思決定できる組織風土が醸成されたという。この剱持氏の思いを確かに受け止めて、齊藤氏と小林氏はそれぞれ以下の抱負を語った。
齊藤氏
「今、サプライヤーの情報もCADDi Quoteに入れたいと思っています。『この会社にはこういう設備があって、この加工が得意』といった情報も、結局その知識があるかないかに依拠するので容易に属人化してしまう。これらをCADDi Quote上で共有することができれば、依頼を出す/出さないという判断も、その情報を元に誰でもできるようになるはずです」
小林氏
「最終的に実現したい目標として『世界中のCADDi Quoteのユーザー同士で見積りを発出し合いたい』という野望を抱いています」
この二人の先進的かつ野心的な吐露を受け、剱持氏は自身の抱負と展望を次のように語る。
剱持氏
「我々はこれまで小さな認知の中でしか仕事をしてきませんでしたが、製造業の世界は我々の認知など遥かに超えて外に大きく広がっています。世界がこのCADDi Quoteのネットワークに繋がったら一体どうなるでしょうか?どの企業も皆、物理的限界を超えて得意な技術を徹底的に追究したり、『うちも負けていられない』と新たな技術革新を模索したりするはずです。これこそが、製造業における切磋琢磨の本質だと思います。こうしたプロセスを経ることでもう一度、日本のモノづくり産業全体が元気になると確信しています。
弊社は上述のようにサプライヤー70社を行脚して今もお付き合いがありますが、ポテンシャル解放という観点からすると『本当に70社でいいの?』とも言える訳です。そこは本来、200社、300社あったっていい。つまり、これもまた物理的限界の話なんです。CADDi Quoteの導入・活用によって初めて『そこに固執しているから殻を破れないんじゃないの?』という定数を見直す視点が生まれてくるようになりました」
「日本や世界のモノづくり産業全体のポテンシャルを解放したい」というキャディの思想に共鳴し、未来への投資としてCADDi Quoteを導入した富士油圧精機。その挑戦は一社のサクセス事例にとどまらず、変化の時代を生き抜くすべての製造業にとっての道標となるだろう。