株式会社荏原製作所の歴史は古く、創業は1912年(大正元年)にさかのぼる。ポンプメーカーとして設立された同社は、100年以上たった今も、ポンプの製造を中心に、高い技術力で世の中を縁の下から支え続けている。現在、風水力機械カンパニー、環境事業カンパニー、精密・電子事業カンパニーの3事業部で事業を展開している。製品の出荷先は幅広く、上下水道などの水関連や、オイル、ガスなどのエネルギー分野で使われるポンプの他、半導体製造プロセスに使う真空ポンプなどがある。さまざまな分野で社会と産業、そして暮らしを支えているのだ。
同社がキャディとつながりを持つきっかけになったのは、精密・電子事業カンパニーでの増産だったと全社の業務改革を担う中村慶太氏は言う。半導体製造に使うCMP装置などを作っていたのだが、顧客からの引き合いが増え、既存の板金サプライヤーで扱える量ではまかないきれなくなってきた。そこで2022年のはじめ頃から、サプライヤーの新規開拓のためCADDi Manufacturingを利用することにしたのだ。これにより、板金の加工品の供給は安定。納期遅れもなく量産に繋げることができたという。そしてそこから社内の業務プロセス自体をより効率的にするため、CADDi Drawerに可能性を感じるようになったそうだ。
荏原製作所では、開発、設計、調達、生産で役割分担が行われている。それぞれの役割に応じて集中して業務が行える一方、仕事の流れに分断を感じている社員もいた。例えばある部品の設計において、調達で発生した困りごとが設計部門にはフィードバックされない。そのため同じような問題が繰り返し発生するのである。そのような中、中村氏は、開発段階からコストを作り込むメリットを社長に強くプレゼンしたという。顧客により価値のある製品を提供するためにも業務改革を進めていこうという強い意志があったそうだ。CADDi Drawerを初めて聞いたとき、図面データを使って組織の垣根を超え、各部署のナレッジを共有できる可能性を感じたのだという。
また、同社では図面データの「管理」はできているが「活用」は十分に出来ていなかった。特に、サプライヤー選定や見積もり判断に時間がかかっていることは生産リードタイムを短縮する上での大きな課題になっていた。昨今の社会情勢下では調達における不確実性が高まっており、現場への負荷も大きくなっている。中村氏はまずは調達部門に目をつけ、CADDi Drawerの導入を進めた。