製造業AIデータプラットフォーム CADDi

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社名
株式会社アルファーシステムズ
業界
一般産業機械
事業内容
自動化システムの提案・企画設計・製造、機械・制御装置の設計製造、機械・制御装置のOEM(加工・組立・調整)、機械・制御装置の保守サービス
株式会社アルファーシステムズ

事例 CADDi Drawer

技術継承課題に立ち向かう – ベテランの暗黙知を若手に伝えるために

導入前・導入後

創業から30年以上の実績を持つ装置メーカーとして、膨大な図面資産を有していたが、それらが体系的に管理されておらず活用しきれていなかった。図面が見つけられない、同じ図面が複数存在する、設計から部品表への情報転記でミスが発生するなど、属人化した業務フローが課題だった。特に技術者の高齢化が進む中で、ベテラン層の暗黙知を如何に継承していくかを求められていた。

製造業データ活用クラウド「CADDi Drawer」の導入により、過去の類似図面や価格情報を短時間で探し出せる。その結果、特に若手設計者を中心に、部品設計時の参考情報として活用し始めている。さらに、Drawerにある機能を応用した部品表チェッカーの開発など、当初想定していなかった活用方法も生まれた。キャディによる伴走支援もあり、着実にデジタル活用の文化が根付き始め、今後は技術継承ツールとしての活用も視野に入れ、設計根拠となる計算結果なども含めた情報資産化を進めていく。

インタビュー

創業30年以上の実績を持つ装置メーカーが抱える技術継承の課題

アルファーデザイン株式会社(以下、アルファーデザイン)と株式会社アルファーシステムズ(以下、アルファーシステムズ)は、産業用機械の設計・製造を手がける企業だ。アルファーデザインは「仕立てるスーツを作る」と例えられる提案型の装置製作、アルファーシステムズはお客様の仕様に基づく受注生産型の装置製作を行っている。創業から30年、グループ全体では40年近い実績を持つ。

 

アルファーシステムズ技術開発統括部長の篠原氏は、同社の強みについてこう語る。
「これは一つ、経験に尽きると思っています。やはり、引き出しをたくさん持っているというところですね。創業してから40年近くになります。その実績が非常に強みになっていると思います。しかし、年齢が上がってきていて、そうした”引き出し”が失われるリスクも含んでいます。そこは正直、不安に感じるところですね。」

 

技術開発統括部は現在50〜60名程度の規模で、機械設計が半分、制御設計が半分という構成だ。近年は親会社経由の採用もあり、若手社員も増えてきている。年齢構成としては30代と50代・60代が多く、40代が少ないという特徴がある。世代間のギャップが存在する中で、ベテラン層の知見をいかに継承していくかが大きな課題となっていた。

過去図面の活用が個人裁量に委ねられていた従来の設計プロセス

過去図面の活用が個人裁量に委ねられていた従来の設計プロセス

 

アルファーシステムズでは、案件ごとに新しく図面を作成するのが基本的な流れだった。過去の図面を活用するかどうかは完全に個人の裁量に任されており、統一されたルールやプロセスは存在していなかった。

 

機械設計課 主任の薄井氏はこう振り返る。

薄井氏「過去の図面があったとしても、それがどこにあるのかも分からない上、同じ図面が何枚も存在していた、なんてことも普通にありました。」
このような状況は、単に作図工数の増大だけでなく、設計から部品表への情報転記におけるミスなど、品質面の課題も引き起こしていた。篠原氏によれば、そうしたミスが原因で部品の手配日が1〜2週間遅れるなど、実際の業務に大きな影響が出たケースもあったという。

 

設計情報の探しにくさについて、薄井氏は「あるかもしれないけど探せない」「どこにあるか分からない」状態だったと表現する。こうした課題を解決するため、CADDi Drawerの導入が検討されることとなった。

検索のアプリケーションではない!CADDi Drawerの機能を応用し成果へ

検索のアプリケーションではない!CADDi Drawerの機能を応用し成果へ

 

CADDi Drawer導入の発端は、森澤社長がキャディ社主催のイベントでプロダクトを知ったことだった。「図面の作成工数を減らしたい」「見積業務にも活用できそう」といった期待から、導入の検討が始まった。

 

篠原氏は最初にCADDi Drawerを見た印象をこう語る。
「最初に見たときは、これはまるでGoogleのようだなと思いました。最近は画像検索やGoogleレンズみたいな機能があるじゃないですか。ああいう感覚で使えるものだと思いました。」

 

当初は「図面検索のプラットフォーム」として、部品を引っ張り出すためのツールというイメージだったが、実際に使い始めると単なる検索の範囲には収まらないアプリケーションだった。特に象徴的だったのは、CADDi Drawerの機能を応用して作成した部品表チェッカーだ。

 

CADDi Drawerで図面に記載されている情報を抜き出して構造化し、それをExcelに落とし込んで部品表との整合性をチェックする仕組みを構築した。従来であれば、ひとつひとつ目視で確認する必要があり、時間がかかる上に作業ミスが発生しやすい業務であったが、この仕組みによって、部品と組図の整合性をより早く正確に担保することが可能となった。

 

薄井氏にとっては、図面を並列で一覧できる点が新鮮だった。

「最初の印象としては、図面を並列で一覧できるという点が新鮮でした。似たようなものを比較しやすいし、価格情報も確認できるので、『これは使える道具だな』と思いました。特に今は、技術継承の観点から『図面の書き方』や『設定値』などを調査することが多く、検索で簡単にそれらを見つけられるのは非常に助かっています。」

業務フローへの組み込みと現場での反応

CADDi Drawer導入時の現場の反応は、必ずしもポジティブなものばかりではなかった。薄井氏はこう振り返る。

 

薄井氏「正直、業務が増える、と受け止められる人が多かったと思います。だからこそ、何が減らせるのかを明確に示す必要がありました。今でもそこは課題だと思っています。便利にはなったけれど、やることが減ったという実感がないと、なかなか浸透しないんですよね。」

 

篠原氏も同様の認識を示す。
篠原氏「そもそも今のやり方で業務が成り立っているので、そこに新しいツールを導入しようとすると、やっぱり抵抗感はありますよね。私は導入のタイミングで作図工数を5割削減しましょうといった大きな目標を掲げて説明会を行ったんですが、皆あまりピンと来ていなかった印象です。説明会をやったときも、そんな面倒なことはやらないよと思われていたと思います。」

 

現在、CADDi Drawerは若手設計者を中心に活用が進んでいる。特に部品図を書く際に過去の図面を参考にしたり、価格情報と照らし合わせたりする用途が多い。薄井氏によれば、設計のベースは従来通りだが、そこに「CADDi Drawerで探す」という工程が加わった形だという。

技術継承ツールとしての可能性と今後の展望

技術継承ツールとしての可能性と今後の展望

 

徐々に技術継承ツールとしての可能性も見えてきている。薄井氏は過去の図面を簡単に閲覧できるようになったことで、新たな文化が生まれてきたと話す。

 

薄井氏「過去の図面を見るということ自体が非常に簡単になったので、「残してくれてありがとう」という感覚が社内に出てきています。図面から読み解くことがしやすくなりました。ただ、図面に書ききれない情報――たとえば『作った後どうだったか』『うまくいったのかどうか』といったフィードバックまでは、まだ現状は取れていないですね。そのあたりも今後やっていきたい部分です。」

 

篠原氏も、「部品図をCADDi Drawerにアップロードして、それを技術継承に使おうという発想自体が、正直これまでなかった」と話す。高齢化の進行という現実がある中で、引き継ぎの手段としての可能性を感じ始めたという。

 

今後の活用について、篠原氏はメカ設計だけでなく電気設計への展開を期待している。
「今はメカ設計だけで使っていますが、将来的には電気設計にも活用できたらいいなと思っています。」
薄井氏は設計時の計算結果の保存に可能性を見ている。

「私個人としては、設計時に行った計算結果を残したいと思っています。構造力学的な計算、たとえばモーメントなどの数値は、ネットではなかなか出てきません。設計の根拠としてそういった数値を残しておけば、それが技術伝承の要素にもなりますし、将来的な意思決定の裏付けにもなると思っています。」

DX推進の鍵となるパートナーシップとカスタマーサクセスの価値

アルファーシステムズのCADDi Drawer導入成功の背景には、キャディのカスタマーサクセスチームによる継続的な伴走支援があった。多くの企業でDX施策が頓挫する原因として、「導入したものの活用が進まない」「現場に定着しない」といった課題が挙げられるが、同社では週次の定例ミーティングを通じた着実な推進が功を奏した。

 

篠原氏は、カスタマーサクセスの意義についてこう評価する。
「正直、ここまで半年で進められたのは、畠山さん(キャディ社のカスタマーサクセス担当)が頻繁に連絡をくれてコミュニケーションできていたからこそだと思っています。これがもし社内だけでの取り組みだったら、私は業務に追われてここまで計画的には動けなかったと思います。週1回の定例ミーティングという形で強制的にでも時間を取ってもらえたことも、本当に良かったと感じています。進める中で多少壁にぶつかることもありますが、それでもしっかり引っ張っていってもらえたのはありがたかったです。」

 

キャディのカスタマーサクセス部によるサポートは単なる技術支援にとどまらず、「社内では気づけないことを外部の視点でどんどん提案してくれる」という点で、変革推進の原動力となっていたと言う。プロセスの変化の最終製品に及ぼす影響が大きい為、変化をもたらす事自体が難しい環境において、新しい風を吹き込む存在として、その役割は大きい。
薄井氏もキャディによる伴走の存在価値をこう語る。

 

「本当に、キャディさんの勢いがすごいと感じています。日々、機能も進化していますし、1年後どうなっているのか全然想像がつかないという意味で、すごく楽しみです。設計の世界って、変わりにくいところがあると思うんですが、そこに対してどんどん新しい風を入れてくれる存在として、今後も期待しています。」

 

ツールの導入は、単なるシステム実装ではなく、業務変革のきっかけとなる。特に長年の慣習が根付いた製造業では、外部パートナーと二人三脚で進めることで、内部からの抵抗を乗り越えていくことができる。

 

今後の連携について篠原氏は「パートナーとして伴走してもらえると非常に助かります」と期待を寄せる。高齢化が進む製造業において、デジタルツールを活用した技術継承の取り組みは始まったばかりだ。社内の知識資産をいかに次世代へ引き継いでいくか、そのソリューションの進化と現場への定着が、これからの課題となるだろう。

DX推進の鍵となるパートナーシップとカスタマーサクセスの価値
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