製造業AIデータプラットフォーム CADDi

CADDi
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社名
株式会社カシイ
設立
1965年
所在地
富山市
業界
サイン・エクステリア
事業内容
①エクステリア製品(テラス、カーポート、デッキ等)の企画開発・製造 ②掲示板、サイン看板、電飾サイン看板等の企画開発・製造 ③エクステリア商品、外構等の施工、販売 ④建設工事等の請負、施工、設計、監理
株式会社カシイ

事例 CADDi Drawer

「紙がないと仕事ができない」状態を脱却。半世紀以上の歴史を持つメーカーが挑んだオントロジー(AI用データの「関係性」の整理)実践への道

開発設計部 部長 PIM課 課長

東野 智

開発設計部 PIM課

塚本 晃子

導入前・導入後

①情報探索・管理:業務の大半に紙が必要で、何かを生み出すためにまず紙を探す状態。ベテランでも過去の資料(図面など)探しに半日以上かかることがあり、新人は探すことさえ困難だった。
②情報のサイロ化:部署ごとに情報が分散し、横連携がうまくできていなかった。他部署にデータがあってもその存在を知らずに探す労力がかかっていた 。また、本社、支店(東京・大阪)、富山工場間で情報が分断されていた。「形材マスタ」などの重要データは富山工場の管理部にしかなく、確認のためには担当者へ問い合わせるか富山工場のデータを探しに行く必要があった。
③資料管理体系の複雑さ:形材図、工作図、部品図、形材一覧など、複数の図面/書類を製品ごとに1つのバインダーにまとめる運用のため、図面変更時に大量のバインダーから影響範囲を特定することが困難だった。
④営業・見積業務:営業担当者が顧客から見積依頼を受けた際、製品の条件や範囲等の確認に手間がかかり、見積準備に時間を要していた。

①情報探索・管理:製造業AIデータプラットフォームCADDiの導入により、探索にかかる時間が劇的に短縮。「半日かかった資料が10秒で見つかる」事例も。新人でもベテラン同様に瞬時に情報へ到達可能になった。
②情報のサイロ化:部門間をまたぐ情報探索の手間が解消され、ユーザーがブラウザ上で同じ情報にアクセス可能に。本社、東京・大阪支店、富山工場間で図面や形材マスタといった資料の情報共有が実現した。
③資料管理体系の複雑さ:CADDiによるデータの関係性の整理(オントロジーの実践)により、親となる「形材図」と子となる「工作図」の双方向リンクを実現。どの形材がどの製品に使われているかが一目瞭然となった。
④営業・見積業務:営業担当者がCADDiを最も頻繁に利用する層となり、見積部門へ依頼する前に自らスペック確認を行うことで、回答のリードタイムを短縮した。

インタビュー

「紙がないと何もできない状態」。モノづくりの老舗が直面した、60年の歴史が生んだ「紙の壁」と情報のサイロ化

駅の地下鉄サインや郵便局の看板といった「パブリックサイン」、そして戸建て住宅向けの「エクステリア商品」。株式会社カシイの製品の根幹を成すのは、「形材(かたざい)」と呼ばれるアルミ押出形材だ。一つの形材は、切断や穴あけといった加工を経て、多種多様な製品へと組み込まれていく。カシイは半世紀以上にわたり、アルミの押出形材を核としたモノづくりで社会の風景を彩ってきた。

 

しかし、その歴史の長さゆえに、社内には「紙」という重い足かせが存在していた。「紙がないと何もできないといっていいほどで、モノを探すのが非常に大変だった」── 開発設計部 部長兼PIM(プロダクトインフォメーション・マネジメント)課 課長の東野氏は、導入前の状況をそう振り返る。

 

東野氏
「一番大きな問題は、会社の大半が紙での仕事であり、何かを始めるには必ず紙情報が必要という状態だったことです」

 

「例えば『形材1』は製品AとBに使われているが『形材2』は製品AとBとCに使われている、といったことが多くあります。製品ごとに紙のバインダーで管理していたのですが、ある形材に変更があったときにどの製品に影響するのか、紙のバインダーの中から抜け漏れなく探し出すことはとてつもなく大変でした。またバインダーは各部署に存在し、差し替え漏れなどのミスが発生しやすい構造的課題もあります」

 

さらに深刻だったのは、情報の物理的な分断である。例えば、図面のCADデータはアクセス制限のある開発設計用のサーバーにある一方、形材の寸法や長さなどの詳細なスペック情報(形材マスタ)は管理部の生産システムに存在していた。

 

東野氏
「開発が形材のマスタ情報を知りたい時は、管理部の担当者に聞くか、生産システムのCSVデータを探しに行く必要がありました。また社内にあるデータが部署間で共有されていなかったため、互いに存在していることすら知らない場合があり、『あるならもっと早く言ってよ』となることもありました」

 

過去にはペーパーレス化を目指し、既存システムの活用も検討したが、数百万円単位の改修費用や図面情報をすべて手入力する手間が障壁となり断念した。そんな折、東野氏がセミナーで出会ったのが、キャディの製造業AIデータプラットフォームCADDiと、そのアプリケーションである製造業データ活用クラウドCADDi Drawerだった。ほぼ同時期に情報システム部へキャディからのアプローチもあり、同氏は導入検討を開始する。

 

東野氏
「直感的に『これだ』と感じましたが、そこから自社の複雑な図面体系にどう適用するか、慎重に検討を重ねました」

「紙がないと何もできない状態」。モノづくりの老舗が直面した、60年の歴史が生んだ「紙の壁」と情報のサイロ化

会社を動かした「DXとして面白そうだ」という熱意と推進体制

現場の課題感とツールの可能性は合致していたが、導入への道のりは必ずしも平坦ではなかった。東野氏は、社内承認のプロセスをこう振り返る。

 

東野氏
「開発や富山工場の管掌役員に『DXとして面白そうだ』と興味を持ってもらえたことで、初期の検討はスムーズに進みました。しかし、導入にあたっての最大の課題は『費用対効果はどうなのか』『全社でどう活用するのか』ということでした」

 

単なるプロダクト導入ではなく、全社的な業務改革であることを示す必要がある──。そこで大きな役割を果たしたのが、2023年に新設された「PIM課」だ。3名でスタートしたDXや業務改善を推進するこの専門部署が情報システム課とタッグを組み、1年近い時間をかけて検討と協議を重ねた。

 

東野氏
「情報の探索時間が削減されることは理解されましたが、時間短縮以外の会社全体での創出効果や費用対効果という本質的な価値を問われました。最終的には製品に関連するデータの活用を軸に、部門横断的な改革を進めることで、導入への合意を取り付けました」

会社を動かした「DXとして面白そうだ」という熱意と推進体制

1日がかりの議論で導き出した「オントロジー」のカギ。アルミ形材 × 工作図の正解とは

導入後のCADDi活用に当たって、最大の難関となったのが同社特有のデータ構造の整理である。カシイのアルミ形材ビジネスの特徴は「大量生産」と「多品種少量生産」の両面を併せ持つ点にある。大元の「規格品」は大量生産されるが、そこから派生する「特注品」はそれぞれの製品でオーダーメイドのように多岐にわたる。PIM課・塚本氏はこう説明する。

 

塚本氏
「1つの形材から何十枚もの工作図が生まれることもあります。形材の設計変更を行ったとき、それがどの製品の、どの工作図に影響するのか。紙のバインダー管理では、その影響範囲を網羅的にミスなく確認することは非常に困難です」

 

同社の図面などの資料管理において最も重要だったのは「この形材がどの工作図や図面に展開されているか」「どの製品と紐付いているか」というデータの意味的な関係性(リレーション)の定義であった。だが、この社内の誰もが共通認識を持つべき図面間の関係性と用語の定義は難航した。現場によって異なる名称で呼ばれていた図面や資料を統一する必要があったためだ。

 

これは情報科学において、AI文脈で登場する「オントロジー(概念と関係性の構造化)」そのものである。それはつまり、単に紙をスキャンして電子化するのではなく「形材とは何か」「工作図とは何か」、そして「それらはどのように関連し合っているのか」という概念の体系を定義し、データに意味を持たせる作業だ。

 

東野氏
「製品規格と呼ばれるバインダーの見方、製品ごとの構成。最初は当たり前になりすぎていてうまく可視化できない状態でした。

 

キャディのカスタマーサクセス(以下、CS)と何度も数時間の議論を重ね、最後には丸一日かけてディスカッションを行い、ホワイトボードを使って、『この図面とこの図面はこういう関係性』『工事明細と梱包明細、加工図と工作図はそれぞれ同じ』などと整理しきった時、CSの方が『これこそが、全ての情報を繋ぐキーですよ!』と言ったのです。

 

議論の末、製品を構成する『ある管理項目』こそが全ての情報のハブになるという結論に至りました。ここでようやく『これならいける』と確信できたのです」

 

この「オントロジー」の定義こそが、ブレイクスルーとなった。このディスカッションを通じてはじめて、形材図(基礎情報)と工作図(加工情報)といった図面同士が持つべき本質的なリレーションが解明され、ナレッジ構造化の「キー」が確立されたのである。

リリース直後の「ドキュメント紐付け機能」をフル活用。担当CSと共にデータの関係性を整理し、構造化された資産へ

特定されたこの『共通ID』をキーとして、開発の図面データと工場のマスタなどがCADDi上で統合、紐付けられた。これにより、そのIDを検索すれば、関連する工作図や製品情報、そして形材のスペック情報までが「芋づる式」に見える化される環境が整った。

 

運命的だったのは、このオントロジーの解明とほぼ同時期に、CADDiの「ドキュメント紐付け機能」がリリースされていたことだ。

 

担当CSは「当初、図面と図面を紐付ける運用は想定されていなかったが『この機能を使えば共通IDをキーとして、形材図と工作図のように図面同士を紐付けられる』ことに気づいた。リリースが早すぎても遅すぎても課題解消につなげられなかったかもしれず、本当に絶妙なタイミングだった」と話す。

 

これにより、紙のバインダー管理では不可能だった「図面間の関連性」をデジタル上で完全に再現し、CADDi上に構造化されたデータ資産として蓄積することが可能になったのである。

 

こうしたキャディCSとの「関係」について、東野氏は「キャディさんのCSはレスポンスが早いし、言ったことは必ず守るというところが素晴らしいです。毎週打ち合わせでテーマを決めて、しっかり記録を取りながら漏れなくやってくれる。そういう姿勢だから、こちらもそれについて行こうという気持ちになれるし、とても良い影響を受けています」と話す。

 

以上が、カシイ固有のオントロジーを定義するプロセスである。推進チームはキャディCSの伴走のもと、同社の複雑な「形材」と様々な図面や情報の関係性を深く分析。単に図面を保存するのではなく、ファイル単位でデータを綺麗に分割・整理し、相互にリンク可能な状態へと再構築した。これにより、CADDiというプラットフォーム上で、独自のナレッジ構造(セマンティクス)に即したデータ環境が完成したのであった。

半日かかった探索が10秒に。「埋もれた資産」が営業の武器へと変わる

上記の環境整備プロセスにおいて、中心的な役割を果たしたのが入社2年目のPIM課・塚本氏である。塚本氏は実務担当者として五十嵐氏(2025年12月現在、育児休暇中)と共に社内のデータ整備を一手に担ってきた。同氏の地道な努力が、同社固有のデータの検索性を支えている。

 

塚本氏
「主にデータのアップロードや最新版管理など、環境整備を担当しています」

 

「図面のアップロードは図面ごとにファイル種別を付与する必要があったため、1ファイル1ページのルールのもと、データをひとつずつ手作業でPDFに変換しました。そしてファイル名を整え、属性情報を付与してアップロード。地道な作業でしたが、先輩の五十嵐さんにリードしてもらいながら、2人でやりきりました。これが検索性の向上に繋がっています」

 

入社以来、ずっと担当してきたCADDi導入業務で、構造化データ活用の筋道がついた瞬間であった。

 

このオントロジー実践によるデータの構造化と紐付けは、業務効率に劇的な変化をもたらした。これまでベテラン社員の記憶と勘に頼っていた情報探索が、新人でも瞬時に行えるようになったのだ。「半日かかった資料探しが10秒になった」という声も上がるほど、その効果は鮮明だ。

 

特に予想以上の成果を上げているのが、営業部門での活用だ。

 

東野氏
「実は今、CADDi Drawerを一番使っているのは営業部門の、特に若手の担当者なんです。お客様から見積依頼があった際、見積部門に依頼を投げる前にCADDi Drawerで製品の製作範囲や条件等を確認することで手戻りを防ぎ、見積回答のスピードアップに繋がっているようです」

 

さらに、情報の「場所」という制約も消滅した。以前は「形材マスタ」などの重要情報は富山工場の管理部にしかなく、確認のため都度問い合わせをしたりデータを探しに行ったりしていた。しかし現在はCADDiを通じ、すべてのユーザーが同じ情報にアクセスできる。

 

東野氏
「情報のサイロ化が解消され、営業、工場、開発が横連携しやすくなりました。社内にデータがあるのに、存在自体が知られていないといった機会損失はもう過去のものです」

半日かかった探索が10秒に。「埋もれた資産」が営業の武器へと変わる

「変化しながら進化せよ」。AIデータプラットフォームが拓く製造業の未来

カシイの挑戦は、単なる探索時間の短縮に留まらない。同社は現在、キャディの伴走のもと、さらなる高みを目指している。導入して半年経過した現在の短期的な目標は、まだ環境が整っていない工場の現場への展開を進め、全部署がCADDiを活用することである。

 

また、情報システム部門と連携し、ブラウザの拡張機能を独自開発して、ローカルリンク経由でCADDiから直接CADソフトを起動してCADデータを開く仕組みを構築するなど、使い勝手の向上にも余念がない。さらに、今後は工場内でPCを持たないスタッフのために、バーコード連携による図面閲覧を可能とする仕組みも計画中だ。

 

6月に就任した新社長が新たに掲げたスローガンは「変化しながら進化せよ」。PIM課の二人の推進者はこの言葉を胸に、さらなるデータ活用の未来を描いている。

 

東野氏
「これまでは目先の探索時間削減に注目していましたが、これからは『AIだからできること』『CADDiだからできること』をもっと追究していきたい。新人もベテランも同じように情報を使いこなし、業務を進化させていく。そのための基盤として、このプラットフォームを育てていきます」

 

塚本氏
「いずれは私一人ではなく、全社員が自律的にデータを管理・活用できる状態にしたいですね。まだ道半ばですが、誰もが当たり前に使えるツールになるまで社内に広めていきます。また、現在は利用率が低いユーザーもいますが、『当たり前の業務の一部』として使ってもらえるよう、各部署へのヒアリングやサポートも行う予定です」

 

紙のバインダーに縛られていた技術情報は、いまやデジタル資産として解き放たれ、カシイの「変化と進化」を加速させるエンジンとなっている。その視線の先にあるのは、部門や拠点の壁を越え、全社員がデータを武器に新たな価値を創造する未来だ。

「変化しながら進化せよ」。AIデータプラットフォームが拓く製造業の未来
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