多品種少量生産でよくある課題や対策、取り組み事例を解説
目次
多品種少量生産には、人材育成の難しさや業務の属人化、ヒューマンエラーの発生など、さまざまな課題があります。
この記事では、多品種少量生産におけるよくある課題と対策を解説します。また、多品種少量生産で業務改善を果たした企業の事例も取り上げるので、ぜひ参考にしてください。
非生産的業務にお困りなら
\ 過去の類似図面や製造情報、発注実績を瞬時に参照・活用できます / |
多品種少量生産の基礎知識
多品種少量生産は、1つの工場で多様な種類の部品・製品を、それぞれ少量ずつ製造する生産方式です。この方式は、製品メーカーと部品メーカー(サプライヤー)の双方で採用されています。
- 製品メーカー:完成品を製造
- 部品メーカー(サプライヤー):各種部品を製造
また、生産方式は大きく2つに分類できます。1つは需要予測に基づいて生産を行う「見込み生産」です。食品や日用品、アパレル、家電製品など、主にBtoC製品を扱う企業で採用されています。
もう1つは、注文を受けた分量と予備のみを製造する「受注生産」です。産業機械や工作機械、各種部品など、主にBtoB製品を扱う企業で見られます。
なお、多品種少量生産の対となる生産方式が「大量生産」です。大量生産は同じ製品を大量に製造する方式で、多品種少量生産とは異なるアプローチを取ります。
多品種少量生産でよくある課題
多品種少量生産には、大量生産と異なり大量の在庫を抱えなくてよいなどのメリットがありますが、多品種少量生産を採用した企業では以下のような課題が発生することが多いです。
- 人材育成が難しく、業務が属人化しやすい
- ノンコア業務が多い
- ヒューマンエラーが起きやすい
- 生産にかかる時間の予測が難しい
- リードタイムが長い
それぞれの詳細を見ていきましょう。
人材育成が難しく、業務が属人化しやすい
多品種少量生産の現場では、類似しながらも微妙に異なる図面や書類をたくさん作成する必要があります。これらの資料(非構造化データ)は、構造化してデータ化して体系的に整理することが困難であり、探索も難しいため、ノウハウの伝承がスムーズに行えません。
その結果、業務遂行には個人の経験値が非常に重要となり、特定の社員に知識や技術が集中する属人化が進みやすい環境となっています。このような状況では、新人の人材育成が難航し、組織全体の生産性向上の妨げとなってしまいます。
また、部品調達における適正価格の算出も、経験がものを言う業務の一つです。多品種少量生産では調達先の規模も様々で、複雑な価格設定が必要となるため、数年の経験を積まなければ適正な価格を予想することが難しく、技術継承が難航しやすいです。
受注生産では、顧客のニーズに合わせた生産を行うため、製造現場の作業内容が頻繁に変更されます。しかし、生産頻度が低い、あるいは製品の種類が多いなどの理由から、作業手順書やマニュアルの作成や更新が追い付かず、現場の課題となるケースも少なくありません。
工程 | 主な課題 |
設計・調達段階 |
|
製造段階 |
|
技術継承にお困りではありませんか? \ 経験の浅い担当者の戦力化までの期間が3年→半年に短縮(事例)/ 製造業データ活用クラウド「CADDi Drawer」なら、 |
ノンコア業務が多い
多品種少量生産では、部品の設計・調達から製造に至るまで、多くのノンコア業務に時間を取られがちです。
例えば、設計・調達段階では、類似品の製作が必要な場合でも、膨大な過去の図面や資料から適切な参考情報を見つけることが困難です。結果として、既存の類似品があるにもかかわらず、ほぼゼロから設計をやり直すことが少なくありません。
また、調達先の規模が様々で、品種ごとの見積もり依頼や査定に多くの時間が必要です。さらに、大手企業から小規模企業まで多様な調達先があり、それぞれに応じた管理方法が求められるため、サプライヤー管理も複雑化しがちです。
さらに、製造段階では、製品ごとに金型や治具の交換、設備の設定変更、原材料の変更といった段取り替えが必要になります。この段取り替え中は生産ラインが停止するため、生産時間がロスされ、生産効率が低下します。
このように、図面探索などのノンコア業務は本来の生産活動を圧迫し、生産性の低下を招いています。
工程 | 主な課題 |
設計・調達 |
|
製造 |
|
ヒューマンエラーが起きやすい
多品種少量生産の製造現場では、3H(初めて・変更・久しぶり)に該当する作業が多く、ヒューマンエラーが発生しやすいです。
まず、製品数が膨大なため、新人は初めての作業に頻繁に直面します。また、手順や材料などの4M(Man:人、Machine:機械、Material:材料、Method:方法)が変更されることで標準作業が変わり、その都度新しい作業に適応する必要があります。さらに、特定の製品の生産頻度が低いため、久しぶりに行う作業では手順を忘れてしまいがちです。
このように3Hが頻発する環境では、品質トラブルや安全上の問題につながるヒューマンエラーが起きやすくなります。
生産にかかる時間の予測が難しい
多品種少量生産では、顧客への納期回答に時間がかかりやすい点も課題です。顧客一人ひとりに合わせた製品を製造するため、注文内容ごとに生産プロセスが異なり、仕入れる資材や原料も製品によって変化するためです。
この点は少品種大量生産とは大きく異なります。少品種大量生産では、同じ形状の製品を大量に生産するため、生産プロセスがパターン化されており、生産にかかる時間を予測しやすく、顧客からの納期問い合わせにもスムーズに対応できます。
しかし、多品種少量生産では、製品ごとに異なる生産工程の時間を見積もる必要があり、正確な納期回答までに時間を要してしまうのです。
リードタイムが長い
多品種少量生産では、製品ごとに生産プロセスや生産ラインの調整が必要になるため、製造準備に時間がかかり、製造期間が長期化する傾向があります。
多品種少量生産で生産性を向上させるコツ
業務の属人化など多品種少量生産でよくある課題を解消し、生産性を向上させるには以下が効果的です。
- 生産工程を見直す
- 汎用性の高い部品などは在庫をあらかじめ確保する
- 受注を分析して、生産方法を最適化する
- 段取り替えを最適化する
- 生産管理システムを導入する
- データ基盤を構築し、必要な情報をすぐに検索できるようにする
それぞれの理由やポイントを見ていきましょう。
生産工程を見直す
生産工程全体を見直すことで、これまで気付かなかった無駄を発見でき、効率化できる点を見つけられます。特に、部門をまたいだ視点で工程を確認することで、より大きな改善効果が期待できます。
例えば、部門間のコミュニケーション方法を見直し、情報共有をスムーズにすることで、作業の手戻りを減らせます。また、生産ラインのレイアウトを最適化することで、部品や製品の移動距離を短縮できるでしょう。さらに、部品表の記載ルールを統一し、誰が見ても分かりやすい形式にすることで、作業ミスを防止できます。
一つひとつは地道な施策ですが、それらを積み重ねることで生産工程の効率化が可能です。
汎用性の高い部品などは在庫をあらかじめ確保する
多品種少量生産において、汎用性の高い部品や継続的な販売が期待できる製品は、あらかじめ在庫を確保しておくと生産性を高められます。生産のたびに部品を仕入れると、その都度発注や納品待ちの時間が発生し、その分の生産機会を逃してしまうでしょう。
しかし、例えば、複数の製品に共通して使用できるネジやボルトなどの汎用部品は、まとめて発注・在庫することで、発注回数を減らせます。また、定期的に注文が入る製品の主要部品も、ある程度の在庫を持つことで、注文を受けてから生産を開始するまでの準備時間を短縮できます。
受注を分析して、生産方法を最適化する
多品種少量生産では、全ての製品を一律の受注生産で対応するのではなく、製品特性に応じて受注生産と見込み生産を使い分けることで、全体の生産効率を向上させることができます。
なぜなら、全ての製品を受注生産で対応すると、頻繁な段取り替えにより生産効率が低下し、採算が取れなくなる可能性があるためです。一方で、全ての製品を見込み生産にすると、在庫リスクが大きくなりすぎてしまいます。
そこで、製品ごとの受注特性を分析し、最適な生産方式を選択する必要があります。例えば、製品を受注頻度(高・低)とロットサイズ(大・小)の2軸で分析し、頻繁に注文が入る製品には見込み生産を検討し、注文頻度が低い製品は受注生産で対応するなど、バランスよく組み合わせることで、段取り替えの効率化や在庫リスクの適正化が可能になります。
生産管理システムを導入する
工場内の製造業務を一元管理できる生産管理システムの導入は、生産効率の向上に有効な手段です。生産管理システムでは、生産スケジュールの作成から受注生産品の内容確認、在庫管理、原価管理まで、幅広い業務を一括で管理できます。
例えば、原価管理機能であれば、材料費や人件費、設備の減価償却費など、製造に関わる様々な費用を正確に集計でき、純原価を明確化できます。それにより、適切な販売価格の設定や、生産工程の改善点の特定が容易になります。
また、生産ラインの稼働状況や在庫の推移なども数値化して把握できるため、製造現場の課題発見と解決にも効果的です。
データ基盤を構築し、必要な情報をすぐに検索・活用できるようにする
多品種少量生産において、データ基盤を構築し、生産に必要な情報へ素早くアクセス・活用できる環境を整えることが生産性向上の要となります。例えば、図面情報をデータベース化することで、設計者は過去の類似図面や製造情報を即座に参照でき、既存の設計ナレッジを活用した効率的で品質の高い設計が可能です。
また、発注情報のデータベース化により、見積もり依頼や査定の際に過去の発注履歴や価格情報を迅速に確認できるようになります。それにより、適正価格での発注判断がスムーズになり、調達業務の効率化が図れます。
その他、紙のファイルやPLM/PDMなどに散在する以下のようなデータを構造化し活用できるようにすることがポイントです。
- 仕様書
- 不良写真
- 不具合情報
- やり取り記録 など
このようなデータ基盤の整備により、各工程での作業時間が短縮され、特定の担当者の経験や知識に依存しない業務進行が可能です。さらに、部門間での情報共有や確認作業も円滑になり、生産性の向上につながります。
多品種少量生産で生産性を向上させた事例
多品種少量生産を採用している受注生産のメーカーで、生産性を向上させた事例を紹介します。自社での取り組みの参考にしてください。
大東精機株式会社:経験の浅い担当者の戦力化までの期間が3年から半年程度に短縮
課題・背景
鋼材加工機の設計・製造・販売を手がける大東精機株式会社では、多品種少量生産における部品調達の課題を抱えていました。部品のコスト計算が複雑で、適正価格の算出には数年の経験が必要でした。また、過去の類似図面を探して発注実績を確認する作業にも半日以上を要し、業務効率の低下を招いていました。
取り組み内容
そこで同社は、製造業データ活用クラウド「CADDi Drawer(キャディドロワー)」を導入。同システムでは、過去の図面データと発注実績が紐付けられており、類似図面・発注実績の即時検索が可能です。同システムの導入によって、新規図面と過去の図面を比較できるようにするなど、価格検討の手がかりを得やすい環境を整えました。
成果
その結果、購買担当者の戦力化までの期間が3年から半年程度に短縮。図面検索の工数も大幅に削減され、新入社員でも自立的な業務遂行が可能になりました。また、誰でも過去の図面データにアクセスできるようになったことで、部門内のコミュニケーションも活性化しています。
参考:CADDi「大東精機株式会社様」
まとめ
多品種少量生産の現場では、図面検索や価格査定に多くの時間を要し、業務の属人化が進みやすい点が課題。また、製品切り替えの度に発生する段取り替えや、膨大な図面・発注履歴の探索など、ノンコア業務の負担も大きいです。
こうした課題に対しては、検索性の高いデータベースの構築による情報の一元管理や、受注パターンに応じた生産方法の最適化、生産管理システムの導入などが有効な対策となります。
製造業データ活用クラウド「CADDi Drawer」では、検索性の高いデータベースにより、図面検索や類似品のゼロからの図面設計、価格査定の工数を大幅に削減できます。また、過去の発注実績を活用した適正価格の算出も容易になることなどによって、若手社員の早期戦力化も可能です。多品種少量生産の各種課題に直面している企業の方は、ぜひ以下のサービス資料をご覧ください。
非生産的業務にお困りなら
\ 過去の類似図面や製造情報、発注実績を瞬時に参照・活用できます / |