AIを活用した不良品検品とは?導入メリット・ステップを紹介
目次
製造業では製品の高度化や品質要求の厳格化、それに伴う熟練作業者の業務の属人化によって、品質がばらつきやすい状況が深刻化しています。不良品の流出リスクが高まることは、顧客クレームや信頼低下につながるケースも少なくありません。
こうした状況を打開する手段として注目を集めているのが、AIを活用したシステムの導入です。
しかし、AIシステムの導入には適切なデータ整備や自社の課題の明確化など、いくつかの重要なポイントがあります。この記事では、AIを活用したシステムの基本的な仕組みから、導入のメリット・デメリット、具体的な導入ステップまでを解説します。
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AIでの不良品検品とは?
製造現場では、品質管理にAIを活用する取り組みが広がっています。これまでの品質管理は、熟練作業者の目視や経験による判断が中心でしたが、AIを導入することで製品の品質データを自動的に収集・分析できるようになります。
例えば、AIなどのデジタル技術を活用することで、図面や不良品情報などのデータを可視化できます。見落としがちな不良品のデータを素早く確認できるため、不良品による手戻りを未然に防ぐことが期待されています。
AIによる品質管理は、人手に頼る検査工程の自動化を目指すものではなく、製造プロセス全体の最適化を通じて品質向上を実現するアプローチです。データに基づく予防保全や工程改善により、不良品の発生そのものを減らすことができます。
製造現場が直面する品質管理の課題
製造現場が直面する品質管理の課題としては、従来の検査方法への限界や業務の属人化などが挙げられます。この章では製造現場が直面する品質管理の課題を3つ解説します。
従来の検査方法の限界
従来の製造現場における品質検査は、熟練作業者による目視検査が中心でした。しかし、作業員の体調や集中力によって検査精度にばらつきが生じ、長時間作業での疲労による見落としのリスクが高まります。
また、図面に紐づく不良品情報を他部署へ聞いて回らねばならず、手間と時間を要します。このように、人による目視検査には本質的な限界があり、多くの製造業で品質管理における重大な課題となっています。これらの課題を解決するため、新たな検査方法の導入が求められています。
業務の属人化
製造業では、熟練作業者による業務属人化が課題です。例えば、不良品の目視検査では「何となく違和感がある」という経験則による判断が重要になります。熟練作業者の経験や勘に頼る部分が大きく、その技術を標準化することが困難です。
このことから若手社員への技術継承が必要なのですが、熟練作業者は、先輩の背中を見てノウハウを習得してきたため、感覚的な判断基準を若手にうまく指導することができません。
若手に技術継承できなければ、各社員の持つ品質管理のノウハウに差異が生じ、不良品の発生を増加させることになるでしょう。
顧客満足の低下
製造工程で見逃された不良品が市場に流出した場合、企業は深刻な影響を受けることになります。クレーム対応や不良品の回収・交換費用の負担が発生するだけでなく、取引先からの信用やブランドイメージの低下につながるでしょう。
特にSNSが普及した現代では、製品の不具合情報は瞬時に拡散されます。たった1件の不良品流出が、企業の売上減少や取引停止など、経営を揺るがす重大な問題に発展するリスクがあります。
このように、不良品の流出を防ぐことは、単なる品質管理の問題ではなく、企業の存続にも関わる重要な経営課題となっています。
AIを活用した不良品検品のメリット
AIを活用した不良品検品には製品の品質向上やノウハウの標準化といったメリットがあります。この章ではAIを活用した不良品検品のメリットを2つ紹介します。
製品の品質向上
AIシステムにより、図面データと不良品情報を連携させることで、設計段階から品質リスクを予測し、事前対策が可能になります。
例えば、過去の不良品データを分析することで「特定の形状で加工不良が発生しやすい」「この寸法指定では公差を満たすことが難しい」といった傾向を早期に発見できるでしょう。
さらに、不良品の発生を抑制することで、手戻りによる追加工程や再製作のコストを削減できます。AIによる早期発見・予防は、品質向上とコスト削減の両立を実現する有効な手段となります。
蓄積されたノウハウを標準化できる
熟練作業者の経験や勘に頼っていた品質基準が、AIシステムの導入により数値化・可視化できるようになります。
例えば、過去の不良品データや履歴を一元管理することで、若手社員でも必要な情報にすぐにアクセスできます。これにより、熟練作業者と若手社員の間で生じていた判断のばらつきが解消され、誰もが同じ基準で検査を行えるようになるでしょう。
さらに、蓄積されたデータを分析することで、「特定の工程で不良が発生しやすい」「この時期に品質が低下する」といった傾向を把握できます。これまで熟練作業者の頭の中にあった品質管理のノウハウを、組織全体で共有・活用できる財産として残せる点も大きなメリットです。
AIを活用した不良品検品のデメリット
AIを活用した不良品検品にはメリットがある一方、コスト面やデータの蓄積だけではシステムを活用できないなどの課題もあります。この章ではAIを活用した不良品検品のデメリットを2つ紹介します。
相応なコストがかかる
AIを搭載したデジタルツールの導入には、システム構築費や運用費などの費用が必要です。一般的な導入費用は、小規模なシステムで数百万円から、大規模なシステムでは数千万円規模となることも珍しくありません。
企業規模や導入範囲に応じて費用は大きく変動するため、投資対効果や投資回収期間を慎重に検討することをおすすめします。特に、生産量や不良品発生率、現状の検査コストなどを詳細に分析し、導入による具体的な効果を試算したうえで判断することが重要です。
データを蓄積するだけでは活用できない
システムの導入では、データの蓄積だけでなく、体系的な管理基盤が不可欠です。
製造業では、過去の図面や関連データなどの情報をデータとして蓄積しています。しかし、蓄積されたデータが紙の図面や個別のExcelファイルなど、さまざまな形式や場所に保管されている企業も多いでしょう。
このようなデータを活用してシステム導入するには、大量のデータを正しく分類・整理しなければなりません。そのため、単にデータを蓄積しているだけでは、AIシステムを効果的に活用することは困難です。
AIを活用した不良品検品の導入ステップ
AIを活用したシステムを導入するには、課題を把握したり、構造化されたデータ基盤を整えたりなどが必要です。この章ではAIを活用した不良品検品の導入ステップを解説します。
品質管理に関する課題を把握する
導入する前に、まずは自社の課題を詳しく分析する必要があります。例えば、不良品はどの程度の頻度で発生しているのか、また、その不良品にはどのような傾向があるのかなどです。
また、実際に検査を行っている現場作業者からの声を丁寧に聞き取ることも欠かせません。日々の検査業務で感じている困難な点や判定基準があいまいで迷う項目などについて、具体的な事例を集めます。
これらの現状分析と課題の洗い出しを通じて、自社が本当に必要としているシステムの要件が明確になります。その結果、導入するAIシステムの選定をより適切に行うことができ、効果的な品質管理体制の構築につながるでしょう。
構造化されたデータ基盤を整える
AIシステムの効果的な運用には、検査データを整理しながら収集・保存することが不可欠です。具体的には以下のような項目を統一的に整理します。
- 製品ID(製品の個体管理番号、ロット番号など)
- 製品仕様(寸法、材質、表面処理など)
- 品質データ(傷の大きさ、変形量、色むらの度合いなど)
- 検査日時(検査を実施した年月日、時刻)
- 検査箇所(製品表面、内部、接合部など)
- 不良の種類(傷、汚れ、変形、異物混入など)
これらのデータを適切に構造化し、データの基盤を整えることで、システムの導入時にスムーズな運用が実現するでしょう。
まとめ
品質管理の課題を抱える製造現場において、AIによるシステム導入は有力なソリューションとなります。品質管理のノウハウを標準化できたり、情報の可視化により製品の品質向上につながったりと、メリットも生まれるでしょう。
ただし、導入に際しては、導入前の現状分析と課題の明確化、構造化されたデータ基盤の構築が必要です。まずは自社の課題や活用できるデータを整理し、スムーズなシステム導入を目指しましょう。