製造業のベテラン社員が持つ重要な知見のTOP3はQCD(品質・コスト・納期)
製造業のデジタル変革に挑むキャディ株式会社(本社:東京都台東区、代表取締役:加藤 勇志郎)は、製造業に従事する1,000名を対象に「2025年の崖」「知見継承」について調査を実施しました。
経済産業省から「2025年の崖(※)」が提唱されてから約6年、日本の製造業界では十分にDX化されたと言えないのが現状です。対応の遅れが日本企業の競争力低下を招くとされる中、この「2025年の崖」と呼ばれる課題は、単なるシステム更新の遅れに留まらず、ベテラン社員の持つ貴重な知見が失われ、次世代に継承されないリスクも含んでいます。
本調査では、製造業界で勤務する人たちに向けて「2025年の崖」に対する認識、DX化の現状、そしてDX化が進まないことによる知見継続へのリスクについて深掘りしました。
(※)2025年までに企業がDX化を進めなければ、老朽化したシステムの維持管理に多額のコストがかかり、事業継続や競争力の低下など、日本経済全体に年間約12兆円規模の経済損失が発生するリスクがあるという警鐘です。
■ 調査サマリー
・「2025年の崖」への認識について、説明できる人はわずか10.7%に留まり、60.1%が「知らない」と回答。この課題に対する理解は依然として進んでいない状況が明らかに。
・「2025年の崖」に対する解決策として、属人化している情報の「見える化」が最も選ばれた。 ・ベテラン社員の持つ知見については、製造業にとって欠かすことのできない重要な要素である品質・コスト・納期(QCD)に関する知見である品質管理のノウハウ、製造トラブルへの対応方法、生産・納品の管理に関する知見の3領域が特に重要視されており、これらで全回答の55.6%を占める結果となった。 ・こうした重要な知見の保存・共有方法について、4割強(42.6%)の回答者が「ない」と答え、知見継承の仕組みが十分に確立されていない実態が浮き彫りに。 ・知見共有の方法が存在する場合でも、基幹システム・業務システムの活用は40.8%と半数以下に留まっており、多くの企業がExcel等のデジタルデータや口頭での伝達に依存している状況が判明。 |
■ 調査結果
「2025年の崖」について説明できる人の割合は10.7%と低く、知らない人の割合は60.1%という結果。課題の自分ごと化が進んでいない実態が明らかに。
Q1.「2025年の崖」という言葉を知っていますか?(回答数:1,000名)
属人化している情報の「見える化」が「2025年の崖」の課題解決に。
Q2.「2025年の崖」という課題に対する解決策として取り入れたいと考えるものを選択してください。(回答数:1,000名/1~3位を取り入れたい順に選択)
ランキング順で見ると「属人化している情報の見える化」(31.6%)がトップに。
「2025年の崖」で直接的に提唱されている古いシステムの刷新以上に、ベテラン社員の頭の中に蓄積された知見の継承が求められていることが明らかになった。
ベテラン社員が持つ知見:業務上重要な項目は「品質」「トラブル対応」「コスト・時間管理」
Q3.あなたの部署のベテラン社員が持つ知見として、業務上重要だと感じるものを選択してください。(回答数:1,000名/1~3位を重要度が高い順に選択)
製造業界のベテラン社員が持つ知見は多数ある中で上位3項目で55.6%を占めており、これらを継承していくことの重要性が明らかとなった。
では、これらの知見を保存・共有し、継承していく方法は取られているのか?次の設問で調査を実施した。
ベテラン社員の知見は4割強(42.6%)が「保存・共有されていない」と回答。ベテラン社員の知見を重要視している人が多い一方で、それが保存・共有されていない事実が明らかに。
Q4.現在あなたがお勤めの会社では、ベテラン社員の持つ知見を保存・共有する方法はありますか?(回答数:1,000名)
調査では、ベテラン社員の知見を保存・共有する方法が「ある」と答えたのはわずか29.6%。一方で、「ない」「分からない」で約7割に達しており、知見が組織的に共有・保存されていない実態が明らかに。
ベテラン社員の知見を保存・共有するために「基幹システム・業務システム」を最も活用している人は40.9%。DX化の浸透はできていない現状。
Q5.現在あなたがお勤めの会社では、ベテラン社員の持つ知見はどのような形で保存・共有されていますか。最も活用している方法を活用頻度の高い順に選択してください。(回答数:296名※Q4で「ある」と回答した方/1~3位を活用度が高い順に選択)
最も活用されているのは「基幹システム・業務システム(40.9%)」であり、次いで「デジタルデータ (PD、Excel、PowerPoint、Wordなど)(34.5%)」であった。紙・口頭でのアナログな伝達方法は一定程度脱却したと言える一方、過半数がDX化を活用できていない状況が浮き彫りとなった。
デジタルデータの保存・共有だけではなく、なぜDX化が必要なのか?次の設問でデジタルデータを活用しきれていない人に向け、活用できていない理由を聞いてみることでDX化の利点も見えてきた。
デジタルデータ活用の課題:検索性や分散管理が障壁に。
Q6.デジタルデータとして保存されているものの活用されていないと感じる理由を3つ選択してください。(回答数:54名※Q5「デジタルデータ」を選択し、デジタルデータを「活用できていないと回答した方を抽出/1~3位を活用されていないと感じる順に選択)
デジタルデータを活用できていない理由を調査したところ、データの検索性の悪さ、情報の不確かさ、部門ごとの分散管理が主な要因として挙げられました。
<解説>
「2025年の崖」では、老朽化した既存システムの維持コストやIT人材不足が主に注目されています。しかし、調査結果が示すようにDX化の遅れがもたらすもう一つの重要な課題として、ベテラン社員の持つ暗黙知の継承問題が浮き彫りとなりました。
特に製造業において、業務上重要だと感じるものとして回答に上がった、品質を保つ知見(19.9%)、不良品・製造トラブルへの対応方法(19.8%)、生産・納品の管理に関する知見(15.9%)など、ベテラン社員が長年培ってきた知見は、企業にとって極めて重要な無形資産です。しかし、これらの知見を保存・共有する仕組みが「ある」と答えた回答者はわずか29.6%に留まっています。
さらに、知見を共有しているという回答者においても、基幹システム・業務システムでの管理は40.9%に留まり、多くの企業でDXによる効果的な知見の継承が実現できていない実態が明らかになりました。データの検索性の低さや、部門間での分散管理など、既存のデジタルデータ活用にも課題が存在します。
これらの課題を解決するためには、単なるデジタル化ではなく、業務プロセスの見直しを含めたDXの推進が不可欠です。属人化した情報の「見える化」と、古いシステムの刷新を通じて、ベテラン社員の知見を企業の資産として効果的に継承していくことが、「2025年の崖」を乗り越えるための重要な鍵となります。
===調査概要=======================
調査名称:キャディ 製造業の知見継承調査
調査期間:2024年 11月15日(金)~11月18日(月)
調査方法:インターネット調査
調査対象者:製造業従事者
有効回答数:スクリーニング調査 10,000名、本調査 1,000名
表記:四捨五入し、小数第1位までの値で記載
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