モジュール設計とは?メリットや図面管理の課題解決までを解説
製品設計を行う多くの製造業では、効率化のために流用設計が一般的に採用されています。しかし、この流用設計には思わぬ落とし穴があり、多くの設計者が課題に直面しています。例えば、流用元を変更した際に不具合を引き起こしてしまったり、大元の流用元が不明確なために多くの顧客仕様が混在し、修正箇所が増えてしまうことがよくあります。
このような状況では、どの流用元を選択すれば良いのか判断が難しく、図面をすべて確認しなければならないケースも少なくありません。結果として、設計工数が余計にかかるという問題にもつながっています。
このような課題を解決する方法として注目されているのが「モジュール設計」です。
本記事では、モジュール設計のメリットや活用方法、さらに図面管理の課題解決に至るまで詳しく解説していきます。
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目次
モジュール設計とは
モジュール設計とは、製品やシステムを構成する要素(機能部品、部品群など)を「モジュール」という単位に分割し、それぞれのモジュールを組み合わせて多様な製品バリエーションやシステムを効率的に開発・生産する設計手法です。
分かりやすく言うと、あらかじめ共通化・標準化された「部品のセット」や「機能単位」を作り、それをプラモデルのように組み合わせることで、さまざまな製品をスピーディーに作り出すイメージです。
この手法により、特定の機能を持つ部品群を独立した塊として扱えるため、設計の再利用性が高まり、開発効率や生産効率の向上、コスト削減、品質安定などのメリットが期待できます。特に製品ラインナップが多い製造業において、その効果を発揮します。
例えば、自動車のプラットフォームやPCの内部部品などがモジュール化の代表例と言えるでしょう。
流用設計における問題の整理
流用設計における課題は、主に「流用モデル」と「派生モデル」に起因します。まずは、それぞれの定義を確認しましょう。
- 流用モデル:既存製品を基に新たな改良設計を加えたモデル(製品)のこと
- 派生モデル:流用モデルに顧客の特定要求や仕様を反映させ、さらに改良を加えたモデル(製品)のこと
この定義からも明らかなように、流用設計における課題の中心は「派生モデル」に潜んでいます。
例えば、5年前の製品が流用モデルであった場合、現在の製品はその派生モデルとして開発されたものです。この派生モデルの利用によりさまざまな問題が発生するケースがあります。
現状、これがさらに複雑な状況を生み出しています。その理由のひとつは、流用モデルから派生したモデルが多岐にわたり、数十種類にも及ぶ場合があることです。その結果、どのモデルがどの仕様になっているのかを一目で把握することが難しくなっています。
設計者は多くの派生モデルを前にして、仕様を確認するために膨大な量の図面を逐一確認しなければならない状況に陥りがちです。
このような混乱が、設計効率を低下させ、大きな課題となっているのです。
派生モデルの問題点
派生モデルは、流用モデルに改良を重ねた図面を基に新たに設計されますが、その結果、どの部分が改良箇所なのか、またどの部分が特定の顧客だけの要求によって変更されたのかが分からなくなってしまうことがあります。
これにより、派生モデルの仕様詳細が設計担当者以外には把握しづらくなり、修理やさらなる設計変更時に大きな支障をきたす可能性があります。
このように、適切な仕組みのない状態で流用設計を行うと、重大な品質問題を引き起こすリスクが高まります。
本来であれば流用設計が円滑に実施できるよう、バリエーションの管理や特定顧客の要求仕様の整理を徹底し、どの設計者でも迅速かつ容易に流用元が選定できる仕組みを整える必要があります。
モジュール設計が製造業にもたらすメリット
モジュール設計が製造業にもたらすメリットは、多岐にわたります。以下では、コスト削減、品質向上、納期短縮などの観点から、それぞれを詳しく見ていきます。
設計効率の大幅向上
モジュール設計を導入することで、設計作業の効率を向上させることができます。これは、設計の再利用性が高まるためです。
一度設計したモジュールを他の製品に流用することで、新規設計の手間を減らせます。また、分業化が可能になる点も大きなメリットです。各モジュールを別の担当者やチームで設計できるため、複数の工程を並行して進められるようになります。
開発・製造コストの削減
モジュール設計の導入により、部品の共通化が促進されます。これにより、必要な部品の種類を減らすことができ、製造コストの削減につながります。
さらに、部品の共通化に伴い在庫管理も効率化され、部品の在庫削減も可能になります。これらの効果により、全体的なコスト削減を実現できます。
製品品質の安定・向上
モジュール設計では、設計段階で繰り返し使用するモジュールを標準化するため、品質のばらつきを抑えることができます。
また、モジュール単位での試験や検証が可能となり、各機能の信頼性を向上させることができます。結果として、製品全体の品質が安定し、顧客満足度の向上にもつながります。
開発リードタイムの短縮
モジュール設計を活用することで、開発に要する時間を短縮できます。
設計の一部を既存のモジュールで補うことで、新規設計が必要な範囲を限定し、開発プロセスを効率化できます。これにより、新製品の市場投入までのスピードを速めることができ、競争優位性を確保することが可能です。
図面・部品管理と部門間連携の強化
モジュール設計を成功させるためには、図面や部品情報の整理が不可欠です。
設計情報が統一されていない場合、モジュールの選定や流用に時間がかかり、結果的に設計効率が低下してしまいます。
図面管理を徹底し、部門間で情報を適切に共有する体制を整えることで、モジュール設計のメリットを最大限に引き出すことができます。
モジュール設計の落とし穴!導入・運用で直面しうる課題と間違った運用
設計現場でよく耳にする「設計の負のスパイラル」という言葉があります。間違ったモジュール設計や運用によって、不具合が生じ、設計工程全体の悪循環をもたらす可能性もあります。モジュール設計の導入や運用で直面する課題について解説していきましょう。
モジュール化自体の難しさ
モジュール化は有効な設計手法ですが、その導入や運用にはモジュール化自体の難しさによる課題があります。
例として、受注生産の企業では「標準機」を設け、それを基に設計を進めるルールを作ることがあります。しかし、設計者は過去の似た製品を流用することが多く、標準機が使われないケースが少なくありません。
その理由は、標準機を使うと設計変更や追加作業に多くの時間がかかることが挙げられます。
この問題は、モジュールの設定が現場の実状に合っていないことに起因しています。標準機を固定的に設定するだけでは、多様な受注に対応することは難しいからです。
重要なのは、どのような受注にも柔軟に対応できる「組み合わせ設計」を可能にすることです。モジュールを多様化し、現場で活用しやすい仕組みを構築することで、効率的かつ実用的な設計環境を実現できます。
既存の図面・部品情報が整理されていないと、モジュール設計は機能しない
モジュール設計を機能させるには、既存の図面や部品情報が整理されていることが前提です。情報が分散していたり検索性が低いと、設計者は流用元を探すのに時間を浪費し、効率的な設計ができなくなります。また、仕様や改良履歴が不明確なまま設計を進めると、エラーや手戻りが発生しやすくなります。
理想的な状態は、図面や部品情報が一元管理され、検索や参照がスムーズに行えることです。さらに、各モジュールの適用範囲や依存関係が明確で、誰でも正しい選択ができるルールの整備も必要です。これにより、設計ミスやムダを防ぎ、モジュール設計のメリットを最大限に引き出せます。
現場での「モジュールが使えない」「選べない」といった問題
モジュール運用における課題として、「使えない」「選べない」といった問題が挙げられます。
モジュールには多くのバリエーションや変更可能な寸法が含まれますが、それらの選択や基準が明確でない場合、設計者が誤った仕様を選んでしまう可能性があります。
例えば、シャーペンを例に考えてみましょう。消しゴム付きのシャーペンを設計する際、消しゴムを受けるための部品が必要です。しかし、設計者がその部品の必要性を見落とすと、組み立てや製品仕様に不具合が生じます。
このようなミスは、3DCADで組み立て時に発覚して修正できる場合もありますが、部品の手配が進んでいると手戻りやムダな工数が発生します。
こうした問題の根本原因は、モジュール運用の基準や選択ルールの不備です。
基準がなければ、設計効率向上のために構築したモジュール化の仕組みが機能せず、かえって手間やコストが増加してしまいます。
さらに、モジュールを整備している企業でも、3DCADを活用してモジュラー設計に取り組む過程で、従来の流用設計に戻ってしまう事例が見受けられます。
その背景には、設計担当者から「3DCADでモデルを作るには多くの変更が必要で、2DCAD時代より時間がかかる」といった声があることが分かっています。
このような状況では、3DCADやモジュール設計の導入が本来の目的を果たしていません。運用基準の整備や選択ルールの明確化など、問題点を整理しながら具体的な改善策を検討する必要があります。
顧客の多様な要望に応えきれないケースがある
受注生産の企業でモジュール化を進める際、「すべての顧客要望に応えられなくなり、受注が減るのではないか」といった懸念が挙がることがあります。しかし、すべての要望に応えることが最善ではない場合もあり、対応には工夫が必要です。
顧客の要望に合わせて構造を変更すれば、新たな図面や加工方法が必要になり、そこから不具合やクレームが発生する可能性も高まります。そのため、同じ機能を持つ部品や形状で代替できる場合には、標準化されたモジュールを活用する方向で顧客に説明し、納得してもらうことが重要です。
モジュール構成を考える際には、過去の受注で対応した顧客要望を反映した仕様を網羅しつつ、今後受注の可能性が低い仕様については排除することがポイントです。このように決められた仕様の中から顧客に選んでもらう形にすることで、企業側の設計負担を減らしつつ、顧客のニーズにも対応できます。
図面管理の改善が、モジュール設計成功につながる理由
図面管理の改善はモジュール設計の成功に直結すると言えます。設計現場が混乱しないような仕組みを構築することで、モジュール設計による効率化の恩恵を最大限に引き出すことができるのです。
図面管理ができていないとモジュール設計でつまずく理由
特に受注生産を主とする会社では、受注生産のためモジュラー設計のようにあらかじめ図面を準備していない、もしくは顧客ごとの要望が異なるため、流用設計の概念はないという企業も多いです。このように、モジュラー設計の導入を避けているケースもあります。
このような企業の設計現場を観察すると、設計者が保管されている複数の図面一式を取り出し、どの図面を参考にすべきか悩みながら作業している姿を目にします。この「参考にする」という作業は、実質的に流用設計に近い行為ですが、明確な管理方法が整備されていないため、設計者個人の判断に頼ることになります。
結果として、過去の図面を参照し、流用可能な部分を探しながら設計を進めることになりますが、このプロセスには膨大な時間がかかります。特に図面が整理されていない場合、どの図面が使用可能で、どの部分が流用に適しているのかを把握するだけで多くの時間が浪費されます。このように図面管理が整備されていないと、モジュール設計を導入しても十分な効果を発揮できないのです。
理想的な図面管理の状態とは?
理想的な図面管理の状態とは、過去に使用した図面が明確に分類・整理され、必要な情報に迅速にアクセスできる仕組みが構築されていることです。
多くの企業ではコア技術や強みとなる技術・構造部分について、毎回同じ図面を使用していることが多くあります。同じ図面が頻繁に使用されているのであれば、その部分を「モジュール」として定義し、それを流用することで設計効率を大幅に向上させることができます。
理想的な状態では、図面やCADデータが機能ごとにモジュール化され、設計者が容易に選択・流用できるように整備されています。さらに、そのモジュールの適用条件や依存関係が明確に記載されていることで、設計ミスや手戻りの発生を防ぐことが可能となります。
このような仕組みを整えることで、設計者は無駄な作業を減らし、より効率的に製品開発を進めることができるのです。
まとめ
モジュール設計は、製造業における設計効率の向上やコスト削減、品質向上を実現する有効な手法です。一方で、その運用には図面管理の整備や設計基準の明確化が不可欠。複雑化しがちな流用設計を最適化するためには、CADDi Drawer(キャディドロワー)のような図面管理システムの活用が有効です。
CADDi Drawerを利用すれば、図面の一元管理により流用元の選定が効率化されます。モジュール化された部品や仕様を整理・登録し、それを設計者が簡単に検索・利用できるようになるため、設計の再利用性の向上にもつながります。
モジュール設計を成功に導き、製造業において設計効率の向上、品質の安定などを実現したい企業様はぜひご検討ください。