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調達改革に取り組もう➁ ~企業利益は調達で決まる~ 「SCM強化プロジェクト」

1.調達パラダイム・シフト
~調達部門の守備範囲がサプライチェーンマネジメントまで大きく広がった~

 新型コロナ感染症拡大時に半導体サプライチェーンの寸断が大きな社会問題になりました。サプライチェーンは、調達、製造、物流、販売、保守サービスまでのモノ(供給)の流れです。グローバル化や生産工程の高度化、情報技術の発展などにより、企業間の連携やデータの連携で、サプライチェーンはますます複雑化しています。

 サプライチェーンが複雑化する中、サプライヤー企業との関係性が強く、多くの企業とデータを共有している調達部門がサプライチェーン全体を管理しようとする取り組みが製造業を中心に加速しています。サプライチェーンマネジメントはこのモノ(供給)の流れを最適化することを目的としています。

 サプライチェーン全体の情報を見える化し、サプライチェーンを効率化・最適化することで、コスト低減、納期短縮、品質向上、顧客満足度向上、リスク管理など、様々なメリットを実現しようとしています。これにより、調達部門の守備範囲は従来の狭い範囲の調達業務だけでなく、サプライチェーン全体を包括的に管理するサプライチェーンマネジメントへと大きく拡大しています。

2.サプライチェーンマネジメント強化の必要性
~サプライチェーンマネジメントに取り組む調達部門のメリット~

 新型コロナ感染症拡大時に、多くの企業がサプライチェーンの混乱を経験し、サプライチェーンマネジメントの重要性を認識しました。これにより、調達部門の守備範囲もサプライチェーンマネジメントへと大きく広がりました。しかし、多くの調達部門はサプライチェーンマネジメントについて、そもそも何をどのようにして取り組めればよいか苦慮しており、結果的に調達業務プロセスの狭い範囲の改善やデジタル化による情報共有だけに留まっているケースが見られます。そこで、まずは、サプライチェーンマネジメント強化の必要性と、これに取り組むことで調達部門にどのようなメリットがあるかについて説明します。その後、次章でサプライチェーンマネジメントの取り組みのポイントについて説明します。

(1)激変する市場環境への適応

 市場環境はグローバル化やデジタル化の進展により、急速に変化しています。サプライチェーン全体を柔軟かつ効率的に管理し、顧客ニーズや市場環境の変化に迅速に対応できるようにするために、サプライチェーンマネジメントを強化する必要があります。これに取り組むことで調達部門では、調達計画や納期管理などの調達業務も効率化することができます。

(2)コスト低減

 最適な調達先、最適な製造、最適な物流ロジスティックス、最適な販売、最適な保守サービスのためにサプライチェーンマネジメントを強化する必要があります。これにより、製品・部品の仕様とコストの最適化ができ、トータルコストやライフサイクルコストの低減につながります。これに取り組むことで調達部門では、調達コスト低減や需要予測の精度向上や在庫管理の最適化により、無駄な在庫も低減でき、部品コストを低減することができます。

(3)納期短縮

 サプライチェーン全体の各工程におけるリードタイムを見える化することで、リードタイムの問題や課題を発見でき、これらを解決することで、製品のトータルリードタイムを短縮することができ、製品の納期短縮に寄与します。このため、サプライチェーンマネジメントを強化する必要があります。調達部門では、部品や原材料のリードタイムの短縮や納期短縮に寄与することができます。

(4)品質向上

 サプライヤーの品質管理体制を製造や物流、販売、保守サービスの観点から評価と改善指導ができ、サプライヤーからの不良品を効率よく低減することができるようになるため、サプライチェーンマネジメントを強化することが必要です。調達部門では、サプライヤーから入手した品質情報を直ちにサプライチェーン全体で共有でき、問題点の早期発見に役立ちます。

(5)リスク管理の強化

 サプライチェーン全体のリスクを部門を横断して評価し、その対策を講じることで、リスクによる影響を最小限に抑えることができるため、サプライチェーンマネジメントを強化することが必要です。サプライチェーンリスク発生時の対応策をBCP(事業継続計画)として事前に策定しておくことで、迅速かつ効果的に対応することができます。調達部門では、サプライヤー評価について、製造などの他部門の視点を取り入れることで、調達先のリスク管理を強化することができます。

(6)情報共有の促進

 サプライチェーン全体の情報を一元管理することで、関係者間の情報共有を円滑化することができるため、サプライチェーンマネジメントを強化することが必要です。情報共有プラットフォームを導入することで、関係者がリアルタイムで情報共有することができます。調達部門では、調達品の発注数量や納入数、納期、価格交渉などに影響する販売計画や生産計画の情報が一元管理することでリアルタイムに共有でき、調達計画や交渉業務に役立ちます。

 以上、サプライチェーンマネジメントは、激変する市場環境への適応やコスト低減、納期短縮、品質質の向上、リスク管理の強化、情報共有の促進などに有効で、これらは企業利益向上に貢献します。そのため、これを強化する必要があります。

3.サプライチェーンマネジメント強化プロジェクトの3つのポイント

 サプライチェーンマネジメントを効率良く、効果的に取り組むにはどうすれば良いか。サプライチェーンマネジメント強化プロジェクト活動のポイントを3つ説明します。

(1)明確な目的と目標の設定

 プロジェクトを推進する前に、経営層や関係者間でサプライチェーンマネジメント強化の目的と目標を明確に共有することが重要です。なぜサプライチェーンマネジメント強化に取り組むのか?何を達成したいのか?例えば、ローコストオペレーションの実現やトータルリードタイムの短縮、トータル在庫数の低減など。具体的な定量目標を設定することで、プロジェクトの進捗状況を測定し、効果を検証することができます。サプライチェーンは、企業内部だけでなく、サプライヤーや物流業者など外部のステークホルダー(利害関係者)も含めたネットワークで構成されています。プロジェクトを成功させるためには、関係者全員が目標を共通に理解し、協力して取り組むことが重要です。関係者との合意形成を図るために、定期的な情報共有や意見交換会、ワークショップの開催などをお薦めします。

(2)現状分析と課題の特定

 現状のサプライチェーンを徹底的に分析し、課題を特定することが重要です。サプライチェーン全体の各プロセスにおける問題の洗い出しや、コスト、リードタイム、品質、リスクなどの指標に基づいた現状評価などによって、現状のサプライチェーンの課題を明確にすることで、具体的な改善策を検討することができます。課題解決に向けて、サプライチェーンマネジメントの解決策を選定することも重要です。

(3)デジタル技術の活用

 ビッグデータ分析やAIなどのデジタル技術を活用することで、サプライチェーンマネジメントをより高度化することができます。デジタル技術を積極的に活用することで、サプライチェーン全体の見える化と最適化を実現することができ、需要予測の精度向上や在庫管理の最適化、オペレーションの効率化、リスク管理の強化が可能になります。またサプライチェーンマネジメントシステムを導入する際には、自社のニーズに合致した機能を備えているか、導入コストや運用コストは許容範囲内か、導入実績やサポート体制は充実しているか、様々なソリューションを比較検討し、最適なものを選択する必要があります。

 以上、サプライチェーンマネジメント強化プロジェクトの取り組みでは、明確な目的と目標の設定、現状分析と課題の特定、デジタル技術の活用の3つが大きなポイントです。これらのポイントを意識して取り組むで、サプライチェーンマネジメントを効率良く、効果的に取り組むことができ、企業競争力向上に貢献することができます。

4.まとめ

 調達パラダイム・シフトにより、調達部門の守備範囲がサプライチェーンマネジメントまで大きく広がりました。サプライチェーンマネジメントは、激変する市場環境への適応やコスト低減、納期短縮、品質質の向上、リスク管理の強化、情報共有の促進などに有効で、これらは企業利益向上に大きく貢献します。そのため、これを強化する必要があり、調達部門では、サプライチェーンマネジメントの強化がこれまで以上に必要になりました。

 そこで、サプライチェーンマネジメントを効率良く、効果的に進めるために必要なサプライチェーンマネジメント強化プロジェクト活動の3つのポイント、➀明確な目的と目標の設定、②現状分析と課題の特定、③デジタル技術の活用について説明しました。この3つのポイントを参考に、プロジェクト活動を進め、調達パラダイム・シフトを乗り切っていただきたいと思います。


株式会社福原イノベーション研究所代表取締役社長兼 CEO 福原政則

1995年、株式会社日立製作所入社。研究開発部門で半導体技師、本社調達統括本部にて全社製品コスト競争力強化コンサルタントや海外集中集約購買、調達システム開発に従事し、事業体にて原価企画・部品標準化プロジェクト主任技師、製品開発コストマネージャ、全社原価企画戦略責任者等を務め、2011年から現職。総合電機、総合重工、医薬品、制御機器、総合食品、保守サービス、商社などの企業の調達改革等のコンサルティングおよび研修を実施し、支援実績数は350社を超える。

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