形彫り放電加工について知りたい!構造や特徴をご紹介!
生産 / 製造
これだけは知っておくべき形彫り放電加工のポイント
- 形彫り放電加工は工作物に「型を掘りこむ」
- 工作物に電極を近づけて放電して溶かしていく
- 硬い金属の加工も可能
- 加工に時間がかかる
形彫り放電加工は工作物に「型を掘りこむ加工」
形彫り放電加工は銅やグラファイトなどの電極の形状を加工物に転写する加工のこと。
複雑な形の金型を作る際などに用いられる加工技術です。
それでは形彫り放電加工とはどのような原理で行われるのでしょうか。
詳しく説明します。
形彫り放電加工は電極を工作物に「近づけて」放電し形を加工する
形彫り放電加工は、掘りたい形に加工された電極を工作物に近づけて放電させ、1秒間に1000~10万回火花を飛ばして工作物を少しずつ溶かし、希望の形に掘っていきます。電極が工作物に触れることはなく、一連の作業は加工液の中で行われます。
電極と工作物の間ははわずか0.005mm~1.0mmで、この隙間を「放電ギャップ」といいます。
電極にはグラファイトやタングステンなどの電気を通しやすい物が使われ、電極自体は簡単に加工することができる柔らかい金属であることが特徴です。
放電加工であるため、加工対象となる工作物の素材も電気を通す素材でなければなりませんが、硬度に関係なく加工することができます。
形彫り放電機の構造は主に5つのパーツから成る
形彫り放電機は以下の図のように、C型コラム構造が一般的で、主に以下の5つのパーツから構成されています。
- 電極が取り付けられる主軸
- 加工液を入れる加工槽
- 加工物を設置するX-Yテーブル
- NC(Numerical Control=数値制御)装置
- 電源装置
加工槽に入れる加工液には油系加工液が使われ、常に循環して加工粉や不純物をろ過しています。火災を防ぐため、温度検知センサーがついた自動消火装置を取り付けなければいけません。
加工用の電源は、通常の電源ではなくパルス電源が使われるため、電極と工作物の距離近づき、放電する距離になるとパチっと放電が発生し、工作物が少しずつ溶かされていきます。
形彫り放電加工のメリット・デメリットとは?
全ての加工技術にメリット・デメリットがあるように、形彫り放電加工にもメリット、デメリットの両方があります。
メリット | デメリット |
導電性がある材質ならば、非常に硬い金属でも加工できる 切削工具では無理な溝、コーナー部分、複雑な形状も加工できる ワイヤー放電と違い、貫通させなくてもよい |
導電性のない材料は加工できない
1回の放電で削れる部分は微々たるものなので、加工に時間がかかる |
非常に硬い金属でも加工できることから、金型の加工に主に用いられる形彫り放電加工。量産性はありませんが、複雑な形状も加工でき、貫通させずに加工できる点など、同じ放電加工技術であるワイヤー放電加工とも違います。
それではワイヤー放電加工とは主にどんなところが違うのでしょうか。
ワイヤー放電加工との違いは?
同じ放電加工である形彫り放電加工とワイヤー放電加工ですが、一体どのような違いがあるのでしょうか。
形彫り放電加工 |
ワイヤー放電加工
|
電極は工作物に加工したいものを転写した形状 |
電極は細い糸のようなワイヤー
|
掘っていくイメージ |
糸鋸で切るようなイメージ
|
貫通させない加工もできる (底つきなどのポケット加工ができる) |
貫通させる |
主な工作物:金型 |
主な加工物:プレス金型や刃先加工
|
表に示したとおり、形彫り放電加工は掘っていって型を加工していくイメージですが、ワイヤー放電加工は金属を「切る」というイメージですね。
用途もそれぞれ違うので、もちろんどちらが優れている、ということは言えません。それぞれの加工条件によりどちらの技術を用いるかを決めます。
まとめ
今回は形彫り放電加工について解説いたしました。
量産するための金型はこのようにして加工されていたんですね。時間のかかる加工技術ですが、精度も高く、複雑な形状でも加工できることから、いろいろな分野で必要とされています。
ワイヤー放電と同様、硬い金属でも導電性がある限り対応できるのも、大きな特徴です。