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旋盤加工の基礎知識

丸形状の工作が得意な旋盤加工とは

旋盤加工とは切削加工の一種で、工具を固定し、工作物を回転しながら工具に当てることで丸形状に削っていく「旋削加工」の一種です。旋削加工では母材として、

の3種類が使用されますが、旋盤加工ではその中でも「丸棒」を使用し加工します。

丸形状のものは加工面が上面、側面、底面の3面となるため、外形の加工の場合は角形状のものよりも比較的複数生産向きで、加工法により、早く安く加工することも可能です。加工の種類は大きく分けて、「外径の加工」「端面の加工」「内径の加工」「ねじ加工」が挙げられます。

また旋盤加工機は多くの場合左側の端面を固定し、側面や右端面を加工をする機構となっています。

外径から内面まで加工可能な旋盤の4種類の加工法

旋盤加工は以下のような種類でまとめることができます。

外径の加工

旋盤加工の中で最も一般的な加工です。回転している工作物に刃をおしあてることで側面を削ります。

外径削り

円柱形状に削ったり、それを応用して工作物に段をつける加工です。

テーパー加工

徐々に直径を変えていき、紙コップのように円の円周が徐々に広がっていくような形に加工できます。直径の変える度合いによって形は変わりまが、加工の仕方は外径削りと同じです。

溝加工

曲面状の側面の途中を削ることで溝をつくる加工です。刃の大きさで溝の幅や深さは変わります。

ローレット

滑り止めのような細かな凹凸上の加工を施すことをローレットと呼びます。

突っ切り

工作物の加工後、必要な部分だけを切り取る加工です。イメージとしては円柱状のものであれば金太郎飴を製造するときに似ています。この加工も工作物が回転している状態で行うため、工作物の中心(主軸)に向かって回転速度を速めて行う必要があります。

端面の加工

円柱の曲面ではない、端の部分の加工も可能です。しかし旋盤の工具の都合上、片方ずつでの加工となるため、端面を両面ともに加工する場合は片面加工終了後ひっくり返して加工を行う必要があります。そのため加工を自動で行えるNC旋盤を使用することで、段取りの時間的コストを削減することができます。

すり割り加工

ねじやシャフトの円状の面についている溝などの加工はこのすり割り加工を用います。端面の加工でのご紹介していますが、外径の加工時にも使用されます。

内径の加工

穴あけ加工

内径の加工の代表例は、穴あけ加工で、ドリルを使ってあけていきます。

中ぐり

指定の穴が大きくドリルの穴では対応できない場合に、バイトと呼ばれる刃を使って中を削っていく方法で穴を指定サイズに広げます。これを中ぐり加工と言います。

ねじ加工

ねじ加工は工作物の外周にねじの溝を作るおねじ加工と工作物に穴をあけ、その穴にねじの溝を掘るめねじ加工があります。

旋盤加工機種類

旋盤加工機には以下の6つがあります。

①**普通(汎用)旋盤**

一般旋盤とも言われ、送り作業や交換作業を手作業で行うのが特徴です。

主軸台、心押し台、チャック、往復台、送り装置、ベッドからなる最も基本的な構造をもつ旋盤と言われます。

普通旋盤の構造

【主軸台】

工作物を回転させるための軸やモーター、変速機を含む部分を主軸台と言います。回転速度はメーカーによって変わります。

【チャック】

工作物を支えるのに用いられる部分で、主軸台に取り付けて使用します。チャックで工作物を支えることをチャッキングと呼び、工作物の固定はもちろん、工作物と旋盤の回転の中心をあわせる働きも担っており、この作業を「心出し」と言います。

【心押し台】

心押し台は主軸とは反対側、ベッドの上に位置しています。通常工作物はチャックで支えて固定し、加工が行われますが、特に細長い工作物の場合はたわみが生じやすいため、この心押し台を支えとして使用します。使用にあたり側面に「センタ穴」と呼ばれる穴をあけ、その穴に心押し台の先端の「センタ」と呼ばれる尖った部品を食い込ませることで工作物を支えます。

【往復台】

往復台はバイト(工具)を前後左右に動かす送り運動を与える装置のことを指します。手動・自動のどちらでも動かすことができ、往復台の上には「刃物台」がついております。

【送り装置】

工具を縦横に動かすことのできる装置です。往復台よりも動く範囲は狭いですが、範囲を0.01mm以下でコントロールできるため、精密な加工を要するときにも対応できます。

【ベッド】

旋盤の本体部分であり、往復台や、心押し台を支えています。

また、上述したチャックには様々な種類があり、以下でそれぞれについてわかりやすく解説します!

チャックの種類

チャックには以下の4種類があります。

三つ爪スクロールチャック
チャックの側面の穴に着脱可能なハンドルがあり、そのハンドルを操作することで、3つの爪を開閉できるチャック。硬爪と生爪の2つがあり、硬爪は直径の変化に対応可能だが、傷つけやすく、生爪は傷つけないが、工作物に合わせて作られる爪のため専用品となる。
四つ爪インデペンデントチャック すべての爪が連動して動くスクロールチャックと違い、4つの爪が独立して動くチャック。角形状の工作物を加工するときや、意図的に偏心させることで端面の中心以外を加工したい場合に用いられる。しかし逆に心出し(工作物の中心と機械の動きの中心を合わせること)には時間がかかってしまう。
コレットチャック
上記2つの爪を用いるチャックと違い、工作物と接する面の広いチャックのため、小さくてもしっかりと工作物を固定する。特に小さな工作物や、銅などの柔らかい素材のものを固定するのに適している。
マグネットチャック
その名の通り磁力によって工作物を固定するチャック。永久磁石と電磁石を用いるものの2つがある。しかしアルミニウムや銅などには磁性がないため、使用することができない。

卓上旋盤

小型の旋盤です。旋盤を英語で「lathe(レース)」ということから、ベンチレースとも呼ばれます。作業台にのせて小さな部品の旋盤加工を行うことができるのが特徴です。

正面旋盤

正面旋盤は普通旋盤の刃を90℃回転させた向きで加工行います。そのため一度にできる加工範囲が広く、比較的大きなサイズの加工が得意です。大きなものに対応するため、工作物の固定にはチャックではなく面盤(面板)と呼ばれる円板を用います。円盤の中に4つあるボルトのようなものを工作物のに合わせて動かすことで、チャック同様複雑な形状の工作物も固定することができます。

立て旋盤

立て旋盤は普通旋盤をそのまま垂直方向に立てた形の旋盤で、普通旋盤では支えることのできない重い工作物を水平な面で固定することで加工可能にします。主軸が垂直に移動し、工作物が水平に回転することで工作物を加工していく加工機です。近年では大きなサイズの旋盤でも正面旋盤ではなく立て旋盤を用いて加工する場合が多くなっています。

タレット旋盤

複数の工具を同時セットしておくことができる回転式の刃物台をもつ旋盤を、タレット旋盤と言います。刃の付け替え作業の手間と時間を省くことができ、早く、また大量に生産することが可能です。

NC旋盤(CNC旋盤)

NCとはNumerical Controlの略で数値制御のことを意味します。そのためNC旋盤とは普通旋盤に位置や速度を自動で制御するNC装置(数値制御装置)がついている旋盤です。コンピュータを用いることで作業全体を自動で行うことができます。工具の交換も自動で行うことができるため、省力化可能です。

※NC旋盤のメリット・デメリット

NC旋盤と普通旋盤では使われている機械の性能はほとんど変わらず、NC装置(数値制御装置)がついているかどうかが最大の違いです。以下では普通旋盤・NC旋盤を用いた場合のメリット・デメリットをご紹介します。

メリット デメリット
普通旋盤 ・導入費用が比較的安価
・ちょっとした追加工や、小ロット生産に対応可能
・加工に対する事前準備時間が少ない
・担当者の熟練度合いによって品質が変化する
・量産に時間がかかる
・製造時に担当者が手作業で加工する必要あり。
NC旋盤 ・品質が安定している
・普通旋盤よりも量産が容易
・コスト削減が可能
・製作時の無人化も可能なため、夜間など人が見ることができないときも加工を続けられる</td>
・導入コストがかかる
・プログラミング担当者が必要
・プログラミングによりコストがかかるため、小ロット品では1個あたりのコストが高い

普通旋盤とNC旋盤の最大の違いは「自動で製作を行える」かどうかです。NC旋盤の場合は自動で製作しているため、安定した品質を実現できます。また一度プログラム化すれば量産がしやすく、プログラムにより無駄なくすべて自動で製作できるため、無人化が可能になり、結果コスト削減につながります。

一方で、技術者だけでなく、プログラミング担当者が必要になります。プログラム自体に時間がかかるため、小ロットの場合はNC旋盤よりも普通旋盤を使うべきでしょう。

旋盤加工図面作成時の押さえておきたいポイント

旋盤加工の図面を描く際、いくつか注意すべきポイントがあります。ここではそのポイントをご紹介いたします。

①図面の部品の向き

上述の通り、一般的に普通旋盤をはじめとする旋盤加工機は左側のチャックによって固定され、右側から加工がおこなわれます。そのため、

  • 外周の加工の場合:直径が細いほうを右側に描く
  • 穴あけの場合:直径の大きな穴になっているほうを右側に描く

のが鉄則です。

①-1

①-2

 

②できるだけ加工時に工作物の入れ替え不要な形にする

部品の加工に対し右からだけでなく左からもアプローチのある形状の場合、工作物を左右反対にして片側面ずつ加工する必要があります。チャックを一度外しての加工となるため、入れ替え作業の手間だけでなく、右側と左側の中心軸が最低でもΦ0.02~0.05程のずれを生じます。①-1や①-2のような入れ替えをしない形状での設計であれば中心軸はぶれず、手間が減るため、より生産性が向上します。

 

③段付き加工の隅の半径R

以下のような段付き加工の場合、直径の大きい部分と小さい部分に隅部が生じます。その隅部にはバイトの形状により、少なからず半径Rができるため、図面作成時に他の穴部品に引っかからないよう、Rの寸法指定をする場合も少なくありません。

しかしこの隅部の半径は使われるバイト(工具)の先端の刃の部分の半径に等しく、もしR指定がある場合加工時にそのバイトを使うことで対応します。しかしこのバイトの半径は隅部のRだけでなく、他の表面粗さや加工効率にも影響を及ぼします。そのためできる限り大きさの範囲を広げ、〇mm以下というような形での寸法指定をし、加工者にできるだけ工具の選択肢を与えるようにしましょう。

 

④精密な軸の加工

例えば軸と穴の公差がかなり近い場合、少しのゆがみや、ゴミが入ると軸と穴がはまらなくなってしまいます。それを避けるために「逃げ加工」を行い、途中から半径を小さくすることで、軸と穴がはまりやすくなります。逃げ加工の寸法をしてする場合は直径での指定ではなく「逃げ深さ〇mm」というような形で指定するとよいでしょう。

 

⑤センタ穴の可否

一般的に直径に対し4~5倍の長さのある工作物の場合、心押し台を使用して工作物を支えます。しかし上述の通り、心押し台を使用する場合は「センタ穴」をあける必要があり、この指示が図面にない場合は可否確認を設計者の方に問い合わせなければなりません。センタ穴の深さは加工者が決めるため基本的に指定は不要ですが、もし深さに指定のある場合は「センタ穴可」の次に「深さは〇mm**以下**」と指定します。

やむをえずセンタ穴を残せない場合は「センタ穴不可」と記載するようにしましょう。

旋盤で加工しやすい形状と加工しにくい形状

◆加工しやすい形状

一番加工しやすい形状は右側からのアプローチのみで加工できる形状のものです。また穴であれば貫通しているもの、溝などでは浅い形状であれば加工がしやすいと言えます。

 

◆加工しにくい形状

加工しにくい形状で最も多いのが深くて狭い溝や穴です。またCのように右端が中ぐりの直径よりも小さい場合や、側面に2つの小さな縦溝があるような複雑な形状の場合は加工がしにくくなります。

 

◆加工できない形状

密閉されている穴形状や、深い縦溝、迷路のような入り組んだ形状の溝のある形状は加工ができません。

そのため、加工時にどこかで分割して別々に加工し、その後溶接などで一部品にするなどの工夫が必要になります。

意外と知らない旋盤加工による代表的な加工品

旋盤加工品の代表的な例は、

ボルト、アクチュエータ、ペアリング、ワッシャ、ボールねじ、台形ねじ、ガードレール

などが挙げられます。

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