複合加工機とは何か?基礎知識からメリットを理解しよう!
生産 / 製造
これだけは知っておきたい複合加工機のポイント!
- 複合加工機はマシニングセンタとNC旋盤の良いところを合わせた機械!
- 導入することでコストダウンから品質向上まで様々なメリットがある
- 稼働し始めるまでにかなりの手間がかかる
一台で複数の加工ができる画期的な機械!
複合加工機とは、NC旋盤の特性とマシニングセンタの特性を併せ持った工作機械です。
切削加工の方法を集客させることで、NC旋盤とマシニングセンタの両方を用意することなく1台ですべての工程を完結できます。
複合加工機であれば特殊な形状のものでも加工することができる
従来であれば専門の機械が必要となっていた、ボーリング加工や深穴加工、ホブ加工などを複合加工機によって加工できるようになっています。これによって、航空機で使用されるランディングギアなどの、特殊な形状のものを複合加工機1台で製作できるようになっています。
複合加工機の機能は大きく2種類あり、
- マシニングセンタにNC旋盤の機能を付属したもの
- NC旋盤にマシニングセンタの機能を付属したもの
があります。
マシニングセンタにNC旋盤の機能を付属したものは、NC旋盤にスピンドル (※1) を任意の角度で停止させる(インデックス化)機能を追加し、フライス加工用にミーリング (※2) スピンドルも加わったものです。
さらに従来のマシニングセンタのように加工した工具をATC(自動工具交換装置)で交換できるもの、また、NC旋盤のターレットに回転工具を取り付けることでミーリングを可能にしたものがあります。
NC旋盤にマシニングセンタの機能を付属したものはNC旋盤の刃物台に回転可能な工具を装着し、NC旋盤で通常行う旋削加工に加えて、ドリルで穴あけやエンドミル※3で中ぐりなどのマシニングセンタの機能も加えた複合加工機で、一般的にターニングセンターの名称で使用されています。
※1 スピンドルとは、回転するための軸のことで、ここでは旋盤の回転軸のことを指します。
※2 ミーリングとは、フライス盤等で加工物の平面や局面を加工する手法のことです。
※3 エンドミルとは、ドリルの形状をしているフライスです。ドリルと違う点はドリルは垂直方向に穴を空けるように進みますが、エンドミルでは側面で切削するという違いがあります。
工数の削減から品質維持まで様々なメリットがある
多工程を限りなく少ない工程に短縮することができる
複合加工機を使用しない場合、素材の移動や部品の組み換えなどを行う必要があるため、一つの製品を製作するための加工内容によっては、複数の機械を使用して加工から製作まで行う必要があります。
しかし、複合加工機であれば旋盤加工やフライス加工まで行えるようになっているため、通常であれば複数の機械を使用しなければできない加工も、複合加工機1台あればまかなうことができます。
高品質を維持することができる
汎用フライスなどの一つの機能しか持っていない機械となると、
<素材の取り付け>→<加工>→<取り外し>
という工程を毎回行わなければいけませんでした。
しかし複合加工機であれば、すべての工程を単一化することが可能となるので、さきほどの手順を行うことなく、一度の取り付けで全工程の加工を行うことができるようになります。
そのため、取り付け直しなどの微細なズレで生じる部品の品質の違いを減らすことができ、作業スピードを落とすこと無く高品質な部品を製作を維持することができます。
小スペースかつ省エネルギー
工業製品の加工機械はサイズが大きく場所を取るため、大きな工場が必要になります。しかし、複合加工機の場合は何台もの作業を1台でまかなうことができるので、複合加工機を設置できる場所の準備ができれば小スペースで加工を始めることができます。
さらに通電に関しても、何台もの機械に繋いで稼働させる必要がないため省エネルギーにも繋がります。
コスト削減に繋がる
複合加工機1台あたりの単価は高価ですが、ランニングコストの面を加味するのであれば、工程別に複数の工業機械を購入するよりも上述した通り電気代、人件費や維持費等を削減することができます。例えば、加工のために機械を3台使用していたのであれば、動作させるために3人が必要となるので、それだけの人件費がかかることになります。ですが、複合加工機が1台あれば、各工程ごとに機械を導入する必要もなくなるので、大幅にコスト削減を行うことができるでしょう。
少数から大量生産まで対応できる
手作業で行われていたときには、同じ部品でも熟練度などによって一つ一つの品質にバラつきがでてしまったり、作業者によって生産速度に差が出てしまうので大量生産が難しいという問題がありました。
ですが複合加工機では、NC制御などによって、一つ目のプログラミングさえ完了してしまえば、同じ部品を安定した品質で大量に生産することが可能となっています。
安全性を確保できる
複合加工機であれば、部品の交換を作業者が行うこと無く全工程を行えるようになっています。
そのため、加工途中に部品交換などで直接機械に触れることがないため、刃物などによる作業員の事故を未然に防ぐことができます。
設置にかかる費用と工数がかかる
1台あたりの単価が高価
1台でさまざまな工程の作業ができるようになっている反面、加工するための機械の部分や、さらに自動で行うためのNC制御装置、ソフトウェアなどが必要となるので導入するためのコストが高くなってしまいます。
設置にかなりの労力が必要になる
各工程ごとに必要な刃物や段取りの作業やNC制御装置を動作させるためのプログラム開発などが必要になります。そのため設置して稼働させるためには相応の知識が必要となるので、かなりの時間と労力が必要になります。
プログラムの知識が必要になる
他の工業機械と違い自動で行う箇所が多いので自動化する部分をプログラムで開発する必要があります。
そのため、汎用工業機械の加工方法などの知識に加えプログラミングの知識が必要になります。
故障した際のコストが高額
自動でさまざまな工程の加工を行うためそれに対する制御装置が複数あります。
その部分が故障してしまうと、一般の故障に対する修繕額と比べて高額になってしまいます。
稼働開始段階に莫大な手間がかかる
同一製品を複数製作する上ではこれ以上の機械はありませんが、最初の一つを製作するまでにプログラムのチェック、動作テスト、製品に異常はないか等の汎用工業製品にはない手間がかかってしまいます。
今後は現在の高度な加工が一般的な加工になる可能性がある
複合加工機は現在一般的に導入されているのはX軸、Y軸、Z軸の3軸、そして旋削主軸周りのC軸とY軸周りのB軸を加えた5軸の2種類があります。
しかし、今後は更に高度な加工をできるように多軸化が進んでいきます。
その多軸を使いこなすためには、今以上の性能を持つソフトウェアが必要になってきます。そのようなソフトウェアのみならず、NC制御装置を動作させるためのプログラム開発もさらに高度な技術が求められるようになります。
一つのソフトウェアだけでは競合に勝ち残ることはほぼ不可能に近いので自社にしかできない強み、そして自社独自の技術を駆使しソフトウェア開発から加工を進めていくことが必要となっていきます。
複合加工機を導入する企業が増えることで新規企業の参入も自ずと増えていくため、どのように時間を短縮し、どのように生産していくのかといった戦略を緻密に組み込むことができなければ衰退していくことになっていきます。