フライス加工の基礎知識
生産 / 製造
フライス加工は複雑な形状から穴あけまで柔軟な加工ができる
フライス加工とは工作物を固定し、**工具を回転させながら工作物を削る**、切削加工の1つです。工具は回転運動をしながら上下に動き、工作物は前後左右に動して加工します。
切削加工によく使われる母材として、
の3つが挙げられますが、旋盤加工では丸棒(丸形状)の母材の加工を得意としているのに対し、フライス加工では四角棒など角材の切削を得意としています。
どちらの加工法も複雑な形状の加工から穴あけまで幅広く対応でき、特にフライス加工は平面・曲面と両方の加工が可能です。
フライス加工に用いられる加工機には4種類ある
フライス加工機
フライス加工は「立てフライス盤」、「横フライス盤」、「NCフライス盤」、「マシニングセンタ」の4つを使用します。まずはそれぞれの加工機の特徴をご紹介いたします。
立てフライス盤
汎用フライス盤と呼ばれる中の1つで、手動で動かす加工機です。主軸が垂直にあるのが特徴で、厚物加工に適しています。主軸が上下に、工作物を固定、支えているベッドが前後左右に動くことで3軸方向の加工が可能です。自動では対応できない微細な加工も可能です。
横フライス盤
横フライス盤と呼ばれるもう一つの加工機です。溝加工や切断加工が得意なほか、立てフライス盤では難しい深穴加工にも適しています。また板状の工作物の場合も立てフライス盤ではなく、横フライス盤を使用します。
NCフライス盤
NCとはNumerical Controlの略で、コンピュータによる数値制御によって自動で動くフライス盤です。NCフライス盤にも縦と横があり、工具の交換以外は自動で行えることが特徴です。3DCADデータで制御することにより、複雑な形も対応することができます。また主軸操作が手動によってコントロールできるため、全自動の加工機(マシニングセンタ)に比べ、切り込みが深かったり、切削速度の速い「重切削」の場合はNCフライス盤が適しています。
マシニングセンタ
マシニングセンタはよく「マシニング」と省略された形で呼ばれている加工機です。最大の特徴は「工具自動交換機能」が備え付けられていることにより、様々な加工法を無人で行うことが可能であるところです。
また近年、縦・横・上下の3軸に回転の2軸を備えた「5軸マシニングセンタ」が登場したことで、より複雑な加工が可能となっています。
フライス加工の工具
加工機に取り付ける付け替え刃のようなものです。大きく4つに分けることができ、形状によって工具を付け替えて加工を行います。以下ではそれぞれの特徴についてご紹介します。
正面フライス(フェイスミル)
正面フライスは立てフライス盤に取り付けることで平面加工を行う工具で、フェイスミル、フェイスミルカッターとも呼ばれます。カッターボディと呼ばれる中心部に複数の切れ刃のチップがついており、このチップは交換可能な消耗品です。切削効率が良く、高精度の平面加工を行えるため、ほとんどの平面加工はこの正面フライスを用いて行われます。
平フライス
平フライスは横フライス盤に取り付け、平面加工を行う工具です。切削効率は良いですが、加工後の表面は粗く、精度は正面フライスに劣ります。
エンドミル
エンドミルは立てフライス盤に取り付けることで、側面や段差、溝を掘ることのできる工具です。平面も加工可能ですが、正面フライスなどに比べ、1度にできる加工面積が小さいため、正面フライスで平面加工をするのが一般的です。
エンドミル自体はドリルのような細長い形状をしており、底面と側面の両方が切れ刃になっていて、2枚刃と4枚刃が主流です。
エンドミルには以下の4種類があり、種類によって得意な加工形状があります。
種類 | スクエアエンドミル | ラジアスエンドミル | ボールエンドミル |
テーパエンドミル
|
加工の特徴 | 半径Rがほぼなく、直角な切削が可能です。 | 少し半径Rがあることで、角を掘る場合、削り面にもRができます。 | 刃先が丸い形状をしているため、曲面に加工可能です。 |
刃先に向かって細くなる形状をしており、工作物に勾配を付ける場合に使用されます
|
側フライス
側フライスにはすり割りフライスとメタルソーがあります。そり割りフライスは横フライス盤に取り付けるもので、細い溝(スリット)を入れる際に使用します。刃の厚さが中心から刃先まで一定です。一方「メタルソー」と呼ばれる工具は、回転の中心部分に向かって刃が薄くなっているため、工作物との干渉を防ぐ働きがあります。
フライス加工は平面・曲面・溝まで加工可能
上記の工具を使うことでフライス加工では主に「外形加工」「側面加工」「溝加工」「曲面加工」「スリット加工」の5つの加工方法が可能です。
以下では5つの加工方法について説明いたします。
母材の外側を削る外径加工
外形加工とは工作物を平面に削る加工です。立てフライス盤に正面フライスを取り付けて行うほか、面積の小さい場合は立てフライス盤にエンドミルを、表面の粗さを気にしない場合は横フライス盤に平フライスをとりつけて行います。
母材の側面を削る側面加工
工作物の側面を削る加工で、最も行われているのはエンドミルを用いた方法です。これにより、段形状や円弧形状にできます。また浅く広い段の加工には正面フライスを用いることも多いです。
母材に溝を作る溝加工
工作物に溝形状を削る加工です。主にエンドミルを用いて行われてなわれます。また溝の形には種類がありるため、以下でご紹介いたします。
加工法 | 特徴 |
キー溝加工 | 平面に溝を掘るものです。
ストレートや片端丸形などの形がありますが、これはエンドミルの形を変えることにより対応できます。 |
T溝加工 | その名の通り「T字の溝」を掘る加工です。これのみ特別な「T溝フライス」という工具によって削られます。 |
アリ溝加工 | 右のような台形型の溝を掘る加工です。こちらも特殊な「アリ溝フライス」という工具が用いられ加工されることが多いです。 |
ポケット | 工作物に池のようなくぼみを掘る加工です。 |
曲面を作ることができる曲面加工
エンドミルによって行われるもので、工作物を曲面状にする加工法です。しかし複雑な場合いにはNCフライス盤や、マシニングによって行うこともあります。
より細い溝が作れるスリット加工
スリットは細い溝であるためエンドミルよりも、側フライスである、すり割りフライスやメタルソーを使って加工されます。
フライス盤で加工しやすい形状と加工しにくい形状
フライス盤で一番加工が難しいのが「ピンカド」、つまり半径Rが0の隅のものです。代表例として「三面角」が挙げられます。
「スクエアエンドミル」を使うと角形状の溝を掘ることができるため、三面角も加工可能なように思われがちですが、実はこのエンドミルをしようしても、必ず1辺は半径Rができてしまい、全辺直角の三面角は加工不可となっています。
対処法としては
- 隅に半径Rを付ける(深さの10分の1以上)
- 隅にニガシを設ける
の2つが考えられます。基本的に半径Rを付けた加工形状でも問題なければ半径Rをつけましょう。ほかの部品との関係でRが付けられない場合はニガシと呼ばれる、コーナーを広げる加工をすることによって回避するようにしましょう