5軸加工とは何?基礎知識やメリットを紹介!
生産 / 製造
これだけは知っておきたい5軸加工のポイント
- 同時多面加工によって工程集約による段取り時間を削減できる
- 高精度かつ精密な形状の加工が可能
- プログラミングが複雑となり相応の技術が必要
5軸加工は複雑で精密な加工が可能
5軸加工の説明を行う前にまずは軸の説明をしますが、以前までは3軸加工(3次元加工)が一般的でした。
3軸ではなく3次元と表現すると解りやすいと思いますが、X軸・Y軸・Z軸の3次元構成で加工が行われており、1次元では穴あけ加工、2次元では平面加工、3次元では立体の加工といったように機械が進化していくほどに加工のバリエーションも増えていきます。
そして今回紹介する5軸加工は今までのX軸・Y軸・Z軸の3軸に加え、回転軸と傾斜軸を追加して更に複雑で精密な加工ができるようになった加工方法のことを指します。
5軸加工においてはこの回転軸と傾斜軸の使い方によって2種類の加工方法が存在します。
その加工方法を紹介していきます。
割り出し5軸加工
割り出し5軸加工とは、加工前に回転軸、傾斜軸を任意の角度で固定し、加工中はX軸、Y軸、Z軸の3軸のみを稼働させて加工する方法です。
この加工方法は、現在最も需要のある加工方法になっており、様々な方向から加工を行うことができるため、3軸加工と比べると、工数の削減、そして精密な加工ができるので品質の高い成果物を作成することができるようになりました。
同時5軸加工
前述の加工方法は3軸のみを動作させ加工を行いますが、この加工では名前の通り、5軸全てを同時に動作させて加工する方法になります。
加工中にどの軸も好きな角度に変更することができるので立体の局面加工でよく使用される加工方法です。
複雑な加工でもこの加工方法では自動で簡単に行うことができ、工具同士の干渉を回避することで滑らかな加工を実現することが可能になっています。
5軸加工にすることで起こるメリット
5軸加工のメリットは大きく5点挙げられます。以下ではそれらのメリットについてご紹介いたします。
突き出し量の少ない工具
3軸加工では工具のホルダとワークの干渉を避けるため、工具の突き出し量をとらなければいけませんが、突き出し量を長くするほど工具の剛性(たわみが大きくなる)は低くなるため、精度を維持することができません。 限界まで突き出すこともできますが、工具が届かない場合がありますので最終的には放電加工に頼る必要がありました。
しかし5軸加工では、工具もしくは加工物を傾けることによって、短い突き出し量で加工できるので、 高精度加工ができ、放電加工を回避することができます。
加工位置の選択が可能
5軸加工では、工具もしくはワークを傾けることによって、取り付け面を除いた5面を段取り換えなしで一度に加工できます。
5軸加工は、同時多面加工による高精度維持や工程集約による段取り時間の削減、 また加工冶具(部品や工具の作業位置を固定するための器具)の簡素化(冶具の省略)による冶具費の削減に効果があります。
さまざまな角度で切削などを容易にすることができるので、3軸加工で必要だった特殊工具や専用治具を使用する必要性がなくなります。余計な工具を購入せずに済むため、加工コストを削減することが期待できます。
1回のチャッキングでできる加工の数
5軸加工では、エンドミルとワークの接触箇所を選べるという利点があります。先端部分が球場の切れ刃となっているボールエンドミルの場合、工具先端は周速度がゼロになりますのであまり加工には適しませんが、3軸加工では工具先端を使わざるを得ません。一方 5軸加工では、工具先端の加工を避けることができ、切削条件の良い工具の部分で加工することができます。
加工時間を短縮できる
加工軸が少ないと、一度に作成できる加工機データは限られてしまいます。そのため、工程を細かく分解して、定期的に部材の角度を変えながら加工していく必要があるのです。工程ごとのツールパスが必要となり、それに合わせてNCデータも増えていきます。問題やトラブルが引き起こされる原因となる上に、全ての工程を終わらせるためには、かなり時間がかかってしまいます。
5軸加工は、1回の段取りで多くの部分を加工することができるので、作業を高速化させて短時間で目的の形状を作り上げることが可能です。
周速ゼロ点を回避できる
ボールエンドミル加工などを行う場合、3軸加工では工具先端の周速ゼロ点で加工されてしまいます。面粗度や加工精度が悪くなる要因の一つでありますが、5軸加工ではボールエンドミルを傾斜させることが可能なため、周速の高い部分で加工することができるでしょう。
5軸加工にすることで起こるデメリット
プログラミングが複雑
メリットでも説明しましたが、5軸加工機は加工を一括で行える反面でNCデータも増えていきます。必然的にプログラミングが複雑となっていくため、より深い知識が必要になります。
3軸から5軸加工にすることで工程を削減できる
3軸加工の場合は、ワークを正面に見て、Ⅹ軸(横)・Y軸(縦)・Z軸(高さ)となり、この3軸を同時に制御します。マシニングセンタを例とすると、3軸の動きは刃物が常に垂直になります。
そのため複雑な加工で角度や向きを変えるときには、刃物の向きにワークを合わせるために専用の治具を作り、その治具にセッティングしてから加工します。
専用の治具を製作しなければいけないので、部品加工費用や、治具製作費用も別途で必要になります。
しかし5軸加工の場合は、3軸のX軸・Y軸・Z軸に加え、回転軸と傾斜軸が追加され5軸になりこの5軸を同時制御することで、工程を集約できます。
複合角度や複雑な局面でも加工治具を製作することなく、一度の段取りで加工することができます。
5軸加工の精度の重要性
5軸加工では、3軸加工と比べて精度の高い状態を維持することが最も大事な課題になります。しかし軸が2つ増えてしまう分、ほんの少しの誤差で、最終的に大きな誤差に繋がってしまいます。
だからこそ5軸加工を最大限効果的に使用するためには、この直線軸と回転軸を確実に理解し、使用することで5軸加工の工作機械の性能を最大限に使用することができます。