SUS316についての基礎知識
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SUS316とは
SUS316はクロム(Cr)-18%、ニッケル(Ni)-12%、モリブデン(Mo)-2.5%を添加したステンレス鋼です。SUS304と同様に磁性のないオーステナイト系ステンレスに分類される鋼種です。SUS304などと比べると市場流通性は少なく、価格もやや高い材料となっております。特徴としてはSUS304よりも耐食性が良いことが挙げられ、船舶部品や薬品タンクなど耐食性が求められる製品によく使われます。
SUS304・SUS316・SUS316L の特性比較
SUS304 | SUS316 | SUS316L | |
成分(%) | Cr18(クロム18)、Ni8(ニッケル8) | Cr18、Ni10~14、Mo2.5(モリブデン) |
Cr18、Ni12~15、Mo2.5
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特性 | オーステナイト系ステンレスに分類され、ステンレスの中で最も使われているステンレスと言われている。クロムが11%含まれている場合、不動耐被膜を自ら生成できるため、錆に強い。 しかし熱膨張しやすく、硬く、粘り気があるため、切削加工がしにくい。 |
SUS304よりも耐食性に優れている。Crが18%含まれているため、SUS30と同じく不動耐被膜を持ち、かつ被膜に切れ目が入ったとしても自ら被膜を作り出すことができる。またクロムが被膜を生成できない環境下、主に海水などの高濃度の塩酸溶液下でもモリブデンを有しているため、自ら被膜を生成し、錆を防ぐことができる。 |
SUS316LのLはLower Coarbonのことを指し、SUS316よりも低炭素鋼材である。そのため焼鈍状態での硬化加工性に優れている、耐粒界腐食性に優れている、また冷間加工性を含めた耐食性に優れている、という特徴があげられる。
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SUS316の化学成分表
上記でも少し触れていますが、SUS316・SUS316LにはSUS304には含まれてないモリブデンが含まれております。このモリブデンはSUS316に耐食性に大きな影響を及ぼします。SUS304を代表とするステンレス鋼は酸化被膜(不動態被膜)が表面を覆うことに錆の進行を防いでいます。鋼中のクロム(Cr)により不動態被膜は自己修復能力があるため被膜が破れても再生することができます。SUS316の場合はクロム(Cr)に加え、モリブデン(Mo)も不動態被膜を形成する成分であり、モリブデンの不動態被膜の緻密さはクロムの約三倍と言われています。通常の使用環境であればSUS304程度の耐食性でも大丈夫ですが、海水などの塩化物環境下ではSUS316の耐食性が必要になります。ただ、SUS316は硝酸環境などの酸化性酸環境においては耐食性が劣ってしまうため、SUS304のほうが優れた耐食性を示します。
化学成分 | C | Si | Mn | P | S | Ni | Cr | Mo |
SUS316 | 0.08以下 | 1.00以下 | 2.00以下 | 0.045以下 | 0.03以下 | 10.00~14.00 | 16.00~18.00 | 2.00~3.00 |
SUS316L | 0.08以下 | 1.00以下 | 2.00以下 | 0.045以下 | 0.03以下 | 12.00~15.00 | 16.00~18.01 | 2.00~3.00 |
SUS304 | 0.08以下 | 1.00以下 | 2.00以下 | 0.045以下 | 0.03以下 | 8.00~10.50 | 18.00~20.00 | 0 |
SUS316の物理的性質
SUS316はSUS304と同じオーステナイト系のステンレスのステンレスのため、磁性はありません。比熱はSUS304 < SUS316 < SUS316Lの順に高くなっています。それにより、保温性や、熱を加えたときに影響を受けやすい耐粒界腐食性が高くなります。
密度 | 比熱 | 熱膨張係数 | 熱伝導率 | 電気抵抗 | ヤング率 | 磁性 | |
g/cm3 | J(㎏・K) | (0~100℃)10-6/K | W/(m・K) | μΩ・㎝ | N/m㎡ | ||
SUS316 | 8.03 | 502 | 16 | 16.3 | 74 | 193,000 |
無(加工によって生じる可能性あり)
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SUS316L | 8.03 | 602 | 15.9 | 16.3 | 74 | 193,000 |
無(加工によって生じる可能性あり)
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SUS316の機械的性質
SUS316の耐力はSUS304と同程度ですが、SUS316Lは少し劣ります。また引張強さにおいても、ニッケルを少し減らしているため、SUS316LはSUS316と比較して劣ります。
耐力(N/mm²) | 引張強さ(N/mm²) | 伸び(%) | 硬さ(HV) | |
SUS316 | 205以上 | 520以上 | 40以上 | 200以下 |
SUS316L | 175以上 | 480以上 | 40以上 | 200以下 |
主な加工時に使われる形
JIS規格が定めるSUS316 (またSUS316L, SUS304, SUS304Lと合わせて) の板(フラットバー)と丸棒をそれぞれ、JISG4304・JIS G 4303と呼び、アメリカのASTMではA240もしくはA167と呼ばれます。
その他ステンレスとの比較 (SUS430、SUS303、SUS310S)
SUS430
SUS316と違い磁性を持つ。フェライト系に分類され、SUS316>SUS304>SUS430と耐食性が劣る。安価なことから家庭用キッチンシンクなどに使われることが多いです。
SUS303
SUS304に硫黄を足すことで、切削性を高めたステンレス鋼材。加工がしやすい反面、耐食性がSUS304、SUS316に劣ります。
SUS310S
ステンレス鋼の中でかなり熱に強い規格。耐熱性はSUS316よりも高く、その分価格も一般的に高価です。
SUS316の規格
外国の規格との比較
日本工業規格 |
国際規格 ISO 15510
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_=\5. 外国規格
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JIS | ISO | 欧州規格 | アメリカ | 中国 | ドイツ | フランス | ||
EN | UNS | AISI | GB | DIN | NF | |||
SUS316 |
4401-316-00-I
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1.4401 | S31600 | 316 | S31608 | X5CrNiMo17-12-2 | Z7CND17-11-02 Z6CND18-12-03 |
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SUS316L |
404-316-03-I
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1.4404 | S31603 | 316L | S31603 | X2CrNiMo17-12-2 | Z7CND17-11-02 Z6CND17-13-03 |