イベントレポート
【CES2026レポート①ロボティクス】2026年はロボット元年になるか

1月6日から9日まで、米ラスベガスで世界最大のテクノロジーイベント「CES2026」が開催された。会場はLVCC(Las Vegas Convention Center)やVenetian Expoなど数カ所で、会場ごとにテーマを分けての展示が行われた。CES2026で最も目立っていたのがロボティクス関連の展示だ。
目次
洗濯物も畳める指先器用なロボット

LGエレクトロニクス『LG CLOiD』
LGエレクトロニクスは2本アームを持つ家事向けのロボット『LG CLOiD』を公開した。移動こそ車輪を使うが、5本指のロボットハンドが搭載されており、カメラや3D/2D LiDARで障害物を認識するほか、マイクによりユーザーの認識も行う。またAI機能も搭載しており、スマートホームシステムと接続。洗濯物を洗濯機に入れて洗濯プログラムを開始し、乾燥後は洗濯物を取り出してテーブルの上に置いて畳む操作までを行う。同社ブースでは実際に洗濯物を畳むデモが行われた。遠い将来に実用化される製品かと思われたが、2027年に韓国その他一部の国でフィールドテストを行う予定だという。
家事を補助するロボットは多くのメーカーが展示を行った。LGエレクトロニクス同様に「洗濯物を畳む」という動作はロボットの細かな動きを操作するセンサーやモーターの制御のデモとして最適なのだろう。数社のブースで指先を使ってタオルやシャツをきれいに畳む姿が見かけられた。
DYNA Roboticsの洗濯物畳みロボットは、上半身だけで移動はしない2本腕型ロボットだ。カメラを使いAIベースの画像認識で洗濯物を認識、畳むだけではなく畳んだ洗濯物をずれなく重ねる操作までを行う。家庭向けにも応用できるが、現在はランドリーやホテル向けに開発されており、実際に米サクラメントにあるMonster Laundryに2025年末にテスト導入されている。

DYNA Robotics
PaXiniの『TORA ONE』も上半身は2本の腕、下半身は車で自走するロボットである。左右の指先と手のひらに合計2,000個以上のセンサーを搭載し、触ったオブジェクトの質感や弾性などをリアルタイムに計測して最適な圧力で握ることができる。ブースではコーヒーカップに入れた飲料をふるまうデモが行われたが、紙コップをつぶさずに人間のように手に取って来場者に手渡していた。

PaXini『TORA ONE』
このようにモノを認識して握る、動きを細かく修正して衣類を畳むなど、ロボットの実用化がようやく現実のものになってきたと感じられた。家庭への導入には安全性や作業可能な内容、さらに価格など、まだまだ詰めなくてはならない部分があるが、あと10年もすれば各家庭や商用施設でこのようなロボットが家事や給仕をしていることが当たり前の光景になっているのだろう。
ロボットの「華」2本足走行モデルも多数登場
アームや手が家事を行う姿は、近い将来のロボットの商用化を現実のものとして見せてくれたが、多くの消費者が求めているのは人間のように2本足で歩くロボットや、ヒューマノイド型ロボットだろう。CES2026の会場には人間と変わらぬ動きをするロボットも多く展示されていた。
とはいえ、ただ歩行するだけでは他社の技術と差別化できないということからか、EngineAIは2体のロボットにボクシングや格闘を行わせてブースに人を集めていた。ヒューマノイド型の『T800』とサイズを小型にした『PM01』を出展し、高トルクアクチュエータと多自由度関節を動かして、キックやパンチなど激しい動きを見せた。

EngineAI『T800』『PM01』
同社は2025年から中国・深センでロボット格闘技大会を開催しており、展示されていたロボットもまるで人間のボクサーのようにパンチをしたり、飛び上がったり、前転したりと、その動きはまさに人間そのものだった。関係者によると「実証実験・マーケティングとしての出展」とのことだったが、このまま商用製品として出せるレベルの動きをしていた。
ただし完全に2本足走行を行ったり、AIによる自律的な歩行や作業をするロボットの展示は少なく、フレームにワイヤーでつながれ関節の動きなどを見せるに留まったモデルも多い。Zeroth Roboticsのヒューマノイドも設計上は二足歩行が可能だが、歩行・自律移動を想定した自社開発のモーション制御スタック「Technology DNA」の説明を行うにとどめていた。

Zeroth Robotics
ロボットの展示の全体的な流れを見ると、2本足走行ロボットはブースに人を集めるための集客ツールとしての側面が強く、実際の商用化時期はどのメーカーも未定との回答だった。CES2026にロボット関連企業の出展が多いことから、各社は急いで2本足歩行ロボットの展示を間に合わせたと考えられる。
歩行のほかでは、人間のように会話できるロボットも開発が進んでいる。NEURAは『4NE1 Gen 3.5』を展示。認知ロボティクス用OS「Neuraverse」と物理トレーニング環境「NEURA Gym」を採用。会話機能としてマイク・スピーカーとコンテキストAI「AuraI」を搭載し、自然言語での指示入力やブース案内、簡単な雑談が可能だ。ブースでは実際に会話のデモも行われた。

NEURA『4NE1 Gen 3.5』
Realbotixは感情認識・対話AIと組み合わせた「Bust」モジュールを展示した。ロボットの顔の目の内部に小型カメラを組み込み、顔認識や視線追従によってユーザーを識別、表情や首の向き、まぶたの動きなどを連動させ、会話内容やトーンに応じた「感情表現」を行える。今後ロボットが商用化される際には「いかにも機械」という顔ではなく、人間に近い表情をする製品が求められるはずであり、AIによる会話だけでなくロボットそのものの「人間化」を目指す技術というわけだ。

Realbotix『Bust』
家事ロボットの商用化を実現するロボットハンドの展示
さて、家事用ロボットの商用化には、ロボットを動かす関節や細かい指先の動きを制御できるロボットハンド、そしてロボット全体の動きを制御できる動作・歩行システムの開発も必須だ。
Richtech Roboticsのドリンクサーブロボットの胸には「Accelerated by NVIDIA」の表記がある。NVIDIAのJetsonやIsaac ROS(ロボット用ソフトウェアパッケージ群)でAI処理を実行することで、ローカルでロボットの自律操作を可能にする。展示ブースでは、このようにNVIDIAのロゴを掲げた製品が目立っていた。

Richtech Robotics
ロボットハンドの開発メーカーは、ゆで卵をつかんだり、折り紙ができるなど、指先のセンサーやロボット搭載のカメラが物体を認識して、人間の指先のようにやわらかいものでも壊さずにつまめる製品などを展示。
Mind.roのアプローチは異色だ。もともとはモーター駆動の義手を開発していたが、その知見を活かしロボット用のハンドの開発を進めている。3Dプリントによる軽量なマジックハンドなどが展示されていた。

Mind.ro
ロボットの動きを陰で支える「ロボット用アクチュエータ」は、中小メーカーの出展も目立つ。韓国のZeroErrは『eRob Rotary Actuator』シリーズとしてモーター、減速機、エンコーダを一体化した関節用アクチュエータモジュールを展示。ヒューマノイドの肩・肘・膝・腰など部位別にトルクの異なるモデルをラインナップしている。今後ロボット産業の発展が進めば、このような企業でも大きなビジネスチャンスをつかむことができるだろう。

ZeroErr『eRob Rotary Actuator』
商用化は産業用ロボットが先か
コンシューマー向けを意識したロボットの展示が目立っていたが、産業向けにもロボットアームだけではなくヒューマノイド型ロボットの開発も進んでいる。工場や倉庫で重い荷物を運ぶなど、人間に代わるオートメーション機器として、こちらも実用化が進められている。
Hyundai Motor Groupは、傘下のBoston Dynamicsが開発したヒューマノイドロボット『Atlas』のプロダクト版を初めて公開した。完全電動式で、56自由度・全関節ほぼ360度回転、最大約50kgを持ち上げられる高出力アクチュエータと、人間サイズの多指ハンド+触覚センサーを備え、部品搬送やパレット積み替えなど肉体労働に対応できる。

Hyundai Motor Group / Boston Dynamics『Atlas』
2026年中にHyundaiグループ内の工場や研究拠点で試験運用を開始し、2028年には米ジョージア州のEV工場「Metaplant」で量産を開始。2030年頃にはより複雑な組立工程へ投入予定だ。
DexTeleop Intelligenceは、遠隔地からの作業を行う遠隔操作ロボットを出展した。VRベースの遠隔操作に特化しており、ロボット本体は上半身のみの構成。左右に多関節ロボットアームと5指ハンドを備え、頭部にデュアル超広角カメラを搭載して、遠隔地からの操作者に人間の視界に近い立体映像を送信できる。
オペレーター側はVRヘッドセットとハンドコントローラーを装着し、自分の手の動きや姿勢をそのままロボットの腕・ハンドにミラーリングして操作。危険環境での作業支援や倉庫の仕分け、リモート保守などを想定している。ソリューションとしての展示であり、市場投入時期は未定だ。

DexTeleop Intelligence
ロボット関連の展示は、とにかくヒューマノイド型のモデルが多く、産業向けの多関節アーム型ロボットの展示は限定的にしか見られなかった。ミネベアミツミもロボットハンドの最新モデルを展示しており、ぬいぐるみやテープ、やわらかいボールをつぶさずにしっかり持つ動作をデモしていた。CES2026で大量に登場したロボット関連の展示で目立つためには、従来型のロボットアームではなく来場者の目を引く製品や技術が必要だったとも言えるだろう。

ミネベアミツミ
一過性のブームではなく、ロボット時代が到来する
1年前の「CES2025」ではここまでロボットの展示は目立っておらず、ヒューマノイド型モデルも2本足で立つのがやっとというレベルのものも多く、ロボットの商用化はまだまだ先になると思われた。ところが、CES2026ではロボットの展示が主役ともいえる状況だった。数年後には2本足走行ロボットの商用化が実現しそうだと感じられた。
目立っていたのは中国企業だが、韓国は同国産業通商資源部が主導する「KOREA HUMANOID M.AX」ゾーンを設置。韓国のロボット企業や研究機関を集めた共同ブースを展開した。ロボットアーク、ロボットアクチュエーター、制御ソフトウェアなど、ロボットの基幹となる技術を約10社が展示。
ロボットそのものの自社開発には大きなリソースが必要だが、ロボット産業向けにハードウェアやソフトウェアを提供することで、グローバル市場でも存在感を示そうとしていた。特に産業向け分野では、仕分けロボットやそれに採用されるパーツなどをスタートアップや中小企業が展示していた。

KOREA HUMANOID M.AXゾーン『ALICEシリーズ ピッキングロボット』
フィジカルAIの分野が立ち上がってからまだ日が浅いとはいえ、CES2026では日本企業のプレゼンスが十分とは言えない点にやや物足りなさも残った。一方で、2026年はロボット関連技術が一気に加速する年だと実感させられた。数年以内の商用化はもはや時間の問題だ。CES2026を振り返ると、ロボットは遠い未来のテクノロジーの象徴ではなく、現実の産業や社会を変え始めつつある「いまそこにある技術」だということがはっきりと示されたと言えよう。
(取材・執筆:P.P. Communications)
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キャディは「モノづくり産業のポテンシャルを解放する」というミッションを掲げ、製造業AIデータプラットフォームCADDi を提供しています。 このミッションを全世界で実現するための活動の一環として、2026年1月5日〜9日にラスベガスで開催された「CES2026」にもブースを出展いたしました。
本レポートでは、出展に合わせて現地で視察した「製造業を変革するために不可欠な最先端テクノロジー」や「最新のトレンド」について、全6回にわたりお届けします。
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