日本を代表する重電メーカーである明電舎の創業は1897年(明治30年)。事業を興してから間もなく130年を迎える。エンジン発電装置や水力発電設備といった電力インフラ関連製品の他、水のろ過処理関連の製品やシステム、電気自動車の検査機器や鉄道の架線検査装置など、世界初の製品も数多く手がけている。
その中にあって太田事業所は、大型回転機の開発や製造を主に手がける。太田事業所の回転機設計部門では、これまで手がけきた案件や製品をアルファベットや番号でコード管理し、ツリー状に関連図面やドキュメントが紐づけられるかたちで、各種図面やデータを保存していた。そのため過去に作成した図面などのデータを参照したいときには、求める図面や関連データのコード番号をシステムに打ち込めば、閲覧できるようになっていた。
しかし、参考にしたい案件のコード番号がそもそも何番なのか。また、今回の案件で参考となり得るデータが、ツリーのどこまでの階層まで辿ればよいのか。このような情報、つまり過去のプロジェクト内容や関連データが頭の中に入っているような、設計経験が豊富なベテランでないと、判断することが難しかった。
そのため経験が乏しい若手メンバーが図面や各種データ検索を行う際には、ベテランに聞かないとスムーズに進まないなど、時間を要していた。場合によってはベテランに頼ることなく自分で進めてしまい、辿り着いた図面やデータが違うことも少なくなく、一から異なる別のツリー階層を一つずつ確認していく。あるいは検索したデータが正しいと思い、そのままその図面やデータなどを参考に、新たな図面やドキュメントを作成してしまう。その後、間違っていることをベテランから指摘され、再び図面やデータなど検索ならびに、図面やドキュメントの作成をやり直す。このような状態が日常化していた。
「コードが分からないと、参照したい図面やドキュメントのデータを呼び出すことができませんでした。つまり、呼び出すデータの内容が分かっていないと、参照できない。正直言って製品知識が豊富で無いとスムーズに参考図面にたどり着くのが難しい状態でした。」同部門の部長を務める村松氏はこのように、設計業務における課題を述べた。