製造業における品質管理とは?課題と改善のポイント
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目次
製造業における品質管理とは、顧客の期待を超える製品を安定して提供し、企業の信頼と成長を支える重要な取り組みです。近年、顧客ニーズの多様化や製品の高度化が進む中で、製造業における品質管理の重要性はますます高まっています。しかし、人材不足や属人化、部門間の連携不足、複雑化する工程管理など、多くの企業がさまざまな課題に直面しているのも現実です。
この記事では、製造業における品質管理の基礎知識から、現場で起こりうる具体的な課題、そしてその解決策を段階的に解説します。自社の品質管理体制を見直したいときの参考としてください。
製造業における品質管理とは?
製造業における品質管理とは、顧客に提供する製品が一定の品質基準を満たすように、製造工程全体を管理する一連の活動です。製品の設計から、材料の調達、製造プロセス、検査、出荷に至るまで、全ての段階で品質を維持・向上させるための取り組みが含まれます。
品質管理の重要性
近年の市場環境は、顧客ニーズの多様化、製品ライフサイクルの短期化、そして製品品質に対する要求の高度化によって、絶えず変化しています。
適切な品質管理は、このような状況下において、顧客からの信頼と企業ブランドの評価を高めるだけでなく、市場シェアの拡大や安定した収益の確保にも貢献します。さらに、不適合品の発生に伴う手直しや廃棄ロスの削減、クレーム対応コストの最小化を通じて、コスト効率を高めます。これにより、生産性の向上や納期遵守率の向上も期待できます。
また、品質管理は製品の安全性を確保し、関連する法令や規制を遵守する上でも不可欠です。法令遵守は企業の社会的責任を果たす上で重要な要素であり、企業の信頼性を維持するために欠かせません。
このように、品質管理は製品の品質を保証するだけでなく、企業の持続的な成長を支える基盤として、その重要性はますます高まっています。
品質保証との違い
品質管理と品質保証は、どちらも製品の品質に関わる活動ですが、その視点と範囲が異なります。品質管理は「作り手」の視点で、製造工程における不良品発生を未然に防ぎ、安定した品質を確保することに重点を置いています。一方、品質保証は「買い手」の視点に立ち、顧客が安心して製品を使用できるよう、製品ライフサイクル全体を通して品質を保証する活動です。
簡単に言えば、品質管理は「製品を作る際に不良品を出さない」ための活動、品質保証は「顧客に安心して製品を使ってもらう」ための活動となります。
品質管理は主に製造工程内での活動に限られますが、品質保証は製品の企画・開発から、原材料調達、製造、販売、そして販売後のサポートまで、幅広い範囲をカバーします。顧客からのフィードバックを製品開発に活かしたり、製品情報を明確に伝えたりすることで、顧客との信頼関係を構築する役割も担います。
つまり、品質管理は品質保証という大きな枠組みの中で、製造段階における重要な役割と言えます。
製造業における品質管理の主要3業務
製造業における品質管理は、主に「工程管理」「品質検証」「品質改善」の3つの業務で構成されます。これらは相互に関連し合い、製品の品質維持・向上に重要な役割を果たします。
工程管理
工程管理は、製品の製造工程を管理する業務です。製造工程をラインごとに統一し、作業手順を標準化することで、品質のばらつきを抑え、安定した品質の製品を生産することを目指します。また、従業員教育や設備メンテナンスも工程管理に含まれます。
品質検証
品質検証は、製品が品質基準を満たしているか検査する業務です。受け入れ検査、工程内検査、完成品検査、出荷検査など、さまざまな段階で検査を実施することで、不良品の出荷を未然に防ぎます。JISやISO規格などの基準に基づき、厳格な検査を行うことで、顧客の信頼獲得につながります。
品質改善
不良品の発生原因を分析し、再発防止策を立案・実施する業務です。QCストーリーを活用し、現状把握から対策実施、効果測定まで、体系的に品質改善活動を進めることで、継続的な品質向上を目指します。
製造業における品質管理の課題
製造業の品質管理には、さまざまな課題が存在します。ここでは、代表的な課題を5つ解説します。
人材不足
製造業における人材不足は、品質管理に深刻な影響を及ぼす大きな課題です。製造業に対する「3K」イメージや待遇面への懸念から、採用難や人材流出の問題が起こっています。このような若手人材の不足と高齢化による熟練技能者の減少が、長年培われてきた技術やノウハウの継承停滞を招き、品質維持や向上を難しくしています。
また、IoT、AI、データ分析などの新しい技術に関する知識やスキルを持つ人材の育成も追いつかず、人材不足に拍車をかけています。
属人化しやすい
特定の熟練工に作業が集中してしまう業務の属人化も、品質管理の課題です。属人化が進むと、担当者が不在の際に品質が維持できなくなるリスクがあります。また、組織全体のスキルアップを阻害する可能性もあるでしょう。属人化の背景には、過去の経験やノウハウが体系化されず、個人のスキルに依存している状況が挙げられます。
部門間の連携がとりにくい
品質管理を円滑に進めるためには、品質管理部門と製造部門の連携が不可欠です。しかし、品質情報が関連部門(製造、設計、営業など)とタイムリーに共有されず、連携がうまくいかないケースが散見されます。部門間の連携不足は、過去の情報やデータが適切に共有・活用されていないことが一因と言えるでしょう。
ヒューマンエラーの発生
製造プロセスにおけるヒューマンエラーは、品質問題の大きな原因のひとつです。特に、複雑な作業や集中力を要する作業では、ヒューマンエラーが発生しやすくなります。また、作業者の疲労やストレスも、ヒューマンエラーのリスクを高める要因です。過去のヒューマンエラー事例を分析し、再発防止策を講じることが重要ですが、情報共有の不足により同様のエラーが繰り返されるケースも少なくありません。
データのサイロ化
製造業では、品質管理に関するデータがさまざまな部門(設計、製造、検査、営業など)やシステム(生産管理システム、品質管理システム、顧客管理システムなど)に分散して管理され、連携が行われていない「データのサイロ化」が起きています。 各部門がそれぞれ独自のシステムやExcelファイルでデータを管理している場合、部門間の情報共有が困難になり、全体像を把握することが難しくなります。
また、データ形式の不統一やデータ入力の誤りなども、データ活用の精度を低下させる要因です。結果として、迅速な意思決定や効果的な品質改善活動の阻害につながり、顧客満足度の低下やコスト増を招く恐れがあります。
製造業における品質管理の改善ステップ
製造業の品質管理を改善するには、現状把握から施策の実行・評価まで、段階的に進める必要があります。改善活動を通じて、サプライヤーや製造部門など、関係部署からのフィードバックを積極的に活用できる状態を目指しましょう。
ステップ1.品質管理体制の現状把握
品質管理体制の現状を把握することが、改善の第一歩です。現状把握をしっかり行えば、どこに問題があるのかを明確にし、効果的な改善策を立てることができます。
現状把握には、主にチェックリストを用いた現状分析と現場ヒアリングによる課題特定という二つの方法があります。チェックリストを活用し、現状の課題や問題点を明確にすると同時に、現場担当者へのヒアリングで課題の深堀りや潜在的な問題の洗い出しを行います。
チェックリストを用いた現状分析
品質管理体制の現状を把握するためには、チェックリストを用いることが有効です。リストの様式は自社で作成しても良いですが、雛形を参考に作成するのも良いでしょう。ただし、項目作成は、収集したデータをどう活用するかを考えながら行うことが重要です。
点検用チェックリストと記録用チェックシートのそれぞれで、現状分析に活用できる項目例を以下に示します。
チェックリストの種類 | 項目例(現状分析に活用できるもの) |
点検用チェックリスト |
|
記録用チェックシート |
|
現場ヒアリングによる課題特定
品質管理体制の具体的な課題の特定には、関係部署へのヒアリングが効果的です。現場担当者から直接話を聞くことで、現場が抱える課題や潜在的な問題に気付くことができます。
以下のように表形式で質問事項をまとめ、現状の把握や課題の特定に役立てましょう。
質問項目 | 回答 |
品質管理に関する課題認識はあるか? | ある or ないを記載 |
課題をどのように捉えているか? | 具体的な内容を記載 |
どのような品質管理ツールを使用しているか? | ツール名・使用頻度・活用状況を記載 |
品質管理に関する教育体制は整っているか? | 教育内容・頻度・課題を記載 |
部署間の連携はスムーズに行われているか? | 部署名・連携状況・課題を記載 |
顧客からの品質に関するクレームはどの程度発生しているか? | 件数・内容・対応状況を記載 |
品質改善活動は行われているか? | 活動内容・頻度・効果・課題を記載 |
ステップ2.改善施策の立案
課題がはっきりしたら次は改善施策の立案です。ここでは、工程管理、品質検証、品質改善のそれぞれの施策例を紹介します。自社の課題に合わせて適切な施策を選択することが大切です。
工程管理の施策例
工程管理は、製造工程全体を適切に管理することで製品の品質を安定させる取り組みを指します。
以下は、工程管理の改善の施策例と想定できる効果です。これらの施策を適切に組み合わせ、実行することで、製造工程全体の品質管理レベルを高めることが期待できます。
施策例 | 効果 |
作業手順、設備の操作方法、品質チェック項目などを明確に定義し、文書化する | 作業のバラツキを抑制し、安定した品質の製品を製造できる |
設備の故障や不具合を早期に発見し、適切なメンテナンスを行う | 不良品の発生を未然に防ぎ、生産効率の向上につながる |
作業員に必要な知識・技能を習得させるための教育・訓練を実施する | 作業員のスキルアップを図り、作業ミスやヒューマンエラーの発生を抑制できる |
製造工程で発生するデータを収集・分析する | データに基づいた客観的な意思決定ができ、効率的な品質改善が可能になる |
整理・整頓・清掃・清潔・躾の5S活動を推進する | 作業ミスや事故の発生リスクを低減し、安全で効率的な作業環境を実現する |
品質検証の施策例
品質検証を適切に行うには、検査項目を明確化し、検査基準を設けることが必要です。加えて、検査記録を残し、後から追跡できるようにしておけば、品質問題発生時の迅速な原因究明が可能になります。
具体的な施策例は以下の通りです。
施策例 | 効果 |
製品寸法、重さ、外観など、検査対象を具体的に決定する | 検査漏れや見落としを防止し、担当者によるバラツキを抑え、検査精度が向上する |
寸法の許容範囲、重量の許容範囲、外観の基準など、具体的な数値や状態を基準として設定する | 合格/不合格の判断基準が明確になり、客観的な品質検証が可能になる |
検査日時、検査担当者、検査結果などを記録し、データベース化して保存する | 検査結果の追跡が可能になり、品質問題発生時の原因究明、今後の品質改善に役立てられる |
品質改善の施策例
品質改善のためには、品質不良が起こる要因に合った対処法が求められます。以下は具体的な施策例です。
施策例 | 効果 |
なぜなぜ分析、QC7つ道具、FTAなどを用いて不良品発生の根本原因を特定する | 不良発生の抑制や不良品発生時のコスト削減につながる |
統計的プロセス管理(SPC)を活用し、管理図を用いて工程の異常を早期に検知・対策する | 品質のばらつきを低減し、顧客要求を満たす製品の安定供給が可能になる |
顧客フィードバック(クレーム、要望、アンケート結果など)を収集・分析し、製品・サービス改善につなげる | 顧客満足度向上や顧客ロイヤリティ向上につながる |
ステップ3.改善施策の実行
改善策が決定したら、実際に実行に移していきます。実行段階では、関係部署への周知、実施体制の構築、定期的な進捗管理、効果測定の準備という4つのポイントを意識しましょう。
- 関係部署への周知:改善策の内容と、実施する目的・背景を関係部署に共有する。関係部署の協力を得ながら進めると、スムーズな実行と効果的な改善を実現できる
- 実施体制の構築:改善策を実行するための体制を構築する。担当者・責任者・実施時期などを明確にし、立案した実行計画書などをもとに計画的に進めることが重要
- 定期的な進捗管理:改善策の実施状況を定期的に確認し、進捗状況を関係部署に共有する。進捗が遅れている場合は、原因を分析し、対策を講じながら計画通りの実施を目指す
- 効果測定の準備:改善策の効果を測定するための準備を行う。効果測定指標を設定し、データ収集方法を決定しておくことで、改善効果を客観的に評価できるようになる
実行段階では、計画通りに進まない場合も想定されます。想定外のアクシデントが発生した場合には、速やかに対応策を検討し、必要に応じて計画を修正しながら進めていく柔軟性も必要です。
ステップ4.改善施策の評価
改善策を実行しただけでは、品質管理の改善は不十分です。施策の効果を測定し、評価して、さらなる改善につなげることが重要になります。
施策の効果測定には「有効性」と「効率性」の2つの指標を用いると良いでしょう。「有効性」とは、期待した効果が得られたかどうかを指します。一方「効率性」とは、費用対効果に見合っているかどうかを指します。
これらの指標に基づき、現状の数値と比較することで効果を測定します。例えば、「不良品発生率の削減」を目標とした施策の場合、施策実施前の不良品発生率と、実施後の不良品発生率を比較します。もし、不良品発生率が減少していれば、施策は有効であったと言えるでしょう。また、目標としていた不良品発生率の基準値を達成できていれば、施策は効率的であったと言えます。
施策の効果を測定・評価した後は、結果を関係者間で共有し、次のアクションを決定します。もし、施策が有効でなかった場合は、原因を分析し、施策内容を修正する必要があります。また、施策が有効であった場合でも、更なる改善の余地がないか検討し、改善策を継続的に実施していくことが重要です。
製造業において十分な品質管理を行うためのポイント
製造業で品質管理を成功させるには、日々の業務を効率的に行い、改善を継続していくことが大切です。そのためのポイントを2つご紹介します。
マニュアルを作り業務を標準化する
品質管理の改善を実施したとしても、時間の経過とともに担当者による作業手順のばらつきが生じることがあります。属人化を防ぎ、誰が作業しても同じ手順かつ同じクオリティになるようにするには、業務マニュアルの作成が不可欠です。マニュアルによって業務内容を可視化すれば、品質のばらつきを抑え、安定した品質を維持できます。
業務マニュアルを作成する際のポイントは以下の通りです。
- 目的:マニュアル作成の目的を明確にする
- 範囲:マニュアルの対象範囲を明確にする
- 内容:業務の手順を詳細に記載する
- 書式:誰にでも分かりやすい書式で作成する
- 更新:定期的に更新を行う
マニュアルを作成する際には、現場担当者の意見を取り入れることも重要です。現場担当者は、日々の業務の中で課題や改善点に気づいていることが多いため、現場の意見を取り入れると、より実用的なマニュアルを作成できます。細かい作業や言葉では伝わりにくい業務に関しては、動画で残しておくのも効果的です。
過去のデータを活用する
製造業の品質管理において、過去のデータ活用は重要な要素です。蓄積されたデータは、品質向上や効率化のための価値ある資料となります。過去の不具合情報やサプライヤーからのフィードバックなどを適切に蓄積・分析することで、同様の問題の再発防止、継続的な品質改善が可能になります。
しかし、これらの貴重なデータが、適切に管理・活用されていないケースも少なくありません。エクセルなどでの管理では、データの検索性・共有性が低く、必要な情報にアクセスできない状況が生じがちです。
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まとめ
製造業の成長には、高品質な製品の安定供給が不可欠です。そのためには、効果的な品質管理体制の構築が重要になります。
これまで、品質管理の重要性や、工程管理・品質検証・品質改善といった主要業務、そして多くの企業が直面する課題について解説してきました。これらの課題を解決し、効果的な品質管理を実現するためには、これまでのデータやノウハウを最大限に活用することが重要です。
品質管理を見直すことで、これまで蓄積してきたデータやノウハウを活かし、より効率的かつ効果的な品質管理体制を構築することが可能になります。業務の標準化やDXの推進は、そのための重要なステップとなります。
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