調達業務とは?業務フローと課題、効率化のポイントを解説
「調達業務を任されたが全体像が掴めない」「調達コスト高や納期遅延、品質問題などの課題を解決したい」といった悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
調達業務は企業活動の要となる役割ですが、適切な知識や経験がないまま取り組むと、調達コストの増大や取引先とのトラブルなど様々な問題が発生する可能性があります。
そこで今回の記事では、調達業務の基礎知識やよくある課題とその解決策について詳しく解説します。新任担当者の方はもちろん、既存の調達プロセスの見直しを検討されている方にも参考になる内容となっているので、ぜひ最後までお読みください。
目次
「調達業務を任されたが全体像が掴めない」「調達コスト高や納期遅延、品質問題などの課題を解決したい」といった悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
調達業務とは
調達業務とは、部品などの「モノ」を適切なタイミングで確保する活動です。以下では、調達業務の基礎知識を解説します。
調達対象
調達対象は、直接材と間接材(副資材)の2種類に大別できます。
- 直接材:製品製造に直接使用される原材料や部品
- 間接材:製品に直接使用されない消耗品や備品
直接材は、製品製造に直接使用される原材料や部品を指します。企業の売上や利益に直結する商品の元となるため、経営戦略に沿った計画的な調達が行われるのが一般的です。簿記上では主要材料費や購入部品費がこれに該当します。
一方、間接材(副資材)は製品に直接使用されない消耗品や備品のことです。間接材は経営戦略に基づく調達計画が立てられることは少なく、各部署や個人が直接発注するケースも多いです。
調達と購買の違い
企業活動における「購買」は、商品を生産するために必要な原材料や部品などを購入し、必要部署に供給することです。一方、「調達」はより広い概念で、購買を含む総合的な資材確保の活動を指します。
購買は調達に比べて意味が限定的であり、「調達」という大きな枠組みの中に「購買」という行為が含まれています。調達には、購買だけでなく、仕入先の選定や交渉、契約管理、在庫管理なども含まれるのです。
調達 | 購買だけでなく、仕入先の選定や交渉、契約管理、在庫管理なども行う |
購買 | 「調達」という大きな枠組みの中での原材料や部品の購買行為を指す |
なお、言葉の定義としては上記の分類ができますが、製造業の現場ではこれらは「購買・調達」と一括りに表記されることが多いです。
調達業務で必要なスキル
調達業務では多様なスキルが求められますが、まずサプライヤー(仕入れ先)とのコミュニケーション能力が重要です。例えば、価格交渉では相手の事情を理解しながら、双方にとって最適な条件を見出す必要があります。納期や品質に関する要望を明確に伝え、問題が発生した際には迅速な対応ができることも不可欠です。
また、設計部門や生産管理部門など関連部門との連携力も重要です。例えば、設計変更により部品の仕様が変わった場合は、サプライヤーへの発注仕様の変更や納期の再調整が必要となります。そのため、生産計画の変更に伴う納入数量の調整力や緊急発注への対応力も必要です。
加えて、詳細は後述しますが、QCDの観点からサプライヤーを選定し、「トラブルなく、最適なコストで、納期に間に合わせる」調達スキルも重要です。
このように、調達担当者が業務を円滑に遂行するためには、コミュニケーション能力やマネジメント能力など多様なスキルが求められます。
調達業務の流れ・フロー
調達業務は調達計画策定~物品の保管までの流れがありますが、各工程での役割と重要なポイントを解説します。
1.調達計画の策定
調達業務の最初の段階では、各部署へのヒアリングを通じて「何が」「どれくらい」「いつまでに」必要かを明確にします。
多くの企業では、将来的に必要となる商品・原材料の量を予測する「需給予測」が感覚に頼りがちで、精度に問題を抱えているケースが少なくありません。そのため、各部署から収集した要望と具体的な要件・仕様を整理し、客観的なデータに基づいた調達計画の立案が重要です。
必要な物品が明確になったら、それぞれの市場動向や相場を考慮して、適切な予算配分と計画を策定しましょう。
2.サプライヤー選定
国内外の多様なサプライヤーから、自社のニーズに最適なサプライヤーを見つけることが次のステップです。この際、既存のサプライヤーだけでなく、新規開拓も視野に入れた幅広い検討が必要です。
サプライヤー選定では、QCDの観点から評価基準を設け、客観的な判断を行いましょう。
- Q(品質):材料ごとの品質保証や仕様書作成への対応力などを評価
- C(価格):価格面では原価率の交渉余地などを評価
- D(納期):生産品質の安定性などを評価
これらの観点からサプライヤーを分析し、評価の高いサプライヤーを選定するのが理想です。
3.サプライヤーへの見積もり依頼・契約
選定した複数のサプライヤーに対して見積もりを依頼し、提示された内容を詳細に評価します。この段階では「提供される物品は要件を満たしているか」「価格設定は適切か」などを確認し、関係部署も交えて最終的なサプライヤーを決定します。
サプライヤーの選定方針として、「1社に絞って品質の標準化を図る」か「複数社と契約してリスクを分散させる」かなど、自社の状況に合わせた戦略を立てることも大切です。
また、見積もり内容をもとに価格交渉を行い、品質や納期に悪影響を及ぼさない範囲でコスト削減を図ることも調達担当者の重要な役割です。そのため、原価情報や市場動向を踏まえた交渉を行いましょう。最終的にサプライヤーが決まったら、業務の円滑化を図るための取引基本契約書を締結します。
4.サプライヤーへの発注
契約で取り決めた方法に従って発注書を作成・送付し、発注後はサプライヤーと協力して納期管理を行います。必要に応じて調達ルートの変更や生産スケジュールの調整も検討し、柔軟な対応を心がけましょう。特に重要な物品や納期が厳しい案件については、定期的な進捗確認を行うことで、問題の早期発見と対応が可能になります。
5.検収・支払い
納品された物品は、速やかに検品・受け入れ・品質検査を行います。使用時に不良品が見つかると製造スケジュールに大きな影響を与えるため、早い段階での検品実施が重要です。
検収が完了したら、契約書で取り決めた方法で支払いを行います。また、検収結果はサプライヤー評価にも活用し、継続的なサプライヤーの見直しや改善要求の材料とすることで、調達品質の向上を図ることができます。
6.物品の保管
受け入れた物品は、その特性に合わせて適切な保管場所を確保し、品質を維持します。物品の特性によっては温度管理や湿度管理が必要なケースもあるため、保管条件の確認と遵守が重要です。
保管場所の選定ミスは品質劣化による大量の廃棄につながる可能性もあるため、物品の特徴を十分に把握した上で取り扱いましょう。
このように調達から保管、使用までの一連の流れを最適化することが、調達業務の一連の役割です。
調達業務でよくある課題
調達業務では、主に以下の課題に直面することが多いです。
- 調達業務が属人化しやすい
- 調達コストのブレ・バラツキが頻繁に発生する
- 煩雑かつ膨大な調達業務の進行管理が難しい
- サプライチェーンマネジメントが難航しやすい
なぜこのような問題が発生し、何が問題なのかを解説します。
調達業務が属人化しやすい
調達業務では同じ担当者が長期間にわたって特定の資材や取引先を担当することが多く、そのノウハウや知見が特定の個人に集中する傾向があります。
例えば、「この部品なら○○さんに聞かないと分からない」「あのサプライヤーとの交渉は△△さんしか対応できない」といった状況が生まれます。こうした属人化が進むと、担当者の不在時や退職時に業務が滞り、引継ぎも困難になります。
そのため、調達関連情報を共有・管理できるシステムを設けるなどして、調達プロセスの透明性を確保し、組織的な知見として蓄積していける仕組みの確立が必要です。
調達コストのブレ・バラツキが頻繁に発生する
複数拠点を持つ企業では、拠点ごとに調達部署が分かれていることが多く、同じ資材でも拠点によって異なる仕入れ先から異なる価格で仕入れているケースがよく見られます。
例えば、同一の原材料に対して、A拠点では1個5,000円、B拠点では1個7,000円、C拠点では1個20,000円といった状況です。単純に安さだけでなく、生存品質や納期など総合的な観点(QCDの観点)から最適なサプライヤーを決め、全拠点で統一するのが理想です。しかし、拠点間の情報共有が不足している場合や、そもそも情報を共有する仕組みが確立していない場合、このような価格差が放置されがちです。
このような調達コストのバラツキは、調達情報を一元管理するシステムがないことで生じており、企業全体で見ると大きな損失につながっています。
煩雑かつ膨大な調達業務の進行管理が難しい
調達業務には見積書や注文書の取り交わし、納期管理、受け入れ検査など多くの定型業務が含まれます。個々の作業は単純でも、取扱品目が増えるにつれて業務量が膨大になり、煩雑化が進みます。
特に複数部署から同時に調達要望が寄せられると、納期管理はさらに複雑になります。例えば、A部署からの緊急発注とB部署からの定期発注が重なった場合、優先順位の判断や納期調整に手間取ることがあります。
このような業務をアナログで管理していると、書類の紛失や入力ミスなどのヒューマンエラーが発生しやすくなります。その結果、発注遅延や納期遅れといった問題が生じ、生産計画全体に影響を及ぼす恐れがあることに注意が必要です。
サプライチェーンマネジメントが難航しやすい
調達業務は、製造、物流、販売などを含めたサプライチェーン全体の中で位置づけて考える、サプライチェーンマネジメント(SCM)の視点が重要です。
しかし、調達担当者は自分の担当範囲に集中するあまり、企業全体の調達フローを俯瞰的に捉えられないケースがあります。その結果、部門間の連携ミスや要件の解釈相違、納期遅延などの問題が発生します。例えば、安さ重視で発注したところ部品の発注まではスムーズにいったものの部品の製造ミスで納期が遅延したり、交通状況を予測できず渋滞で納期が遅延したりすることがあります。
こうした問題を予防・対策し、円滑に進める能力が調達部門には求められますが、自身の業務に追われ、全体最適の視点を失ってしまうケースが少なくありません。
調達業務の課題は、DX化で解決できる
先述の通り調達業務では、見積依頼や発注書の作成、納期管理など多くの業務が人手に頼っているため、ミスの発生や作業の遅延が課題となっています。
こうした課題の解決に有効なのが調達管理システムなどを導入することによるDX化です。以下では、システムを導入することで得られる効果について解説します。
発注業務が効率化する
調達業務のDX化により、直接材・副資材の発注プロセスが大幅に簡素化できます。従来は担当者が個別に発注書を作成し、電話やFAXで連絡するといった手間がかかっていました。しかし、調達管理システムを導入することで、必要な情報をシステム上で入力するだけで、見積依頼から回収、査定、比較発注、検収まで手軽に進行させられるようになります。
※システム上で発注業務を一元管理できるイメージ
例えば、毎月一定量必要となる部品(直接材)の発注がワンクリックで完了できるようになり、担当者の負担が軽減されます。また、各部門で不定期に必要となる消耗品(副資材)についても、現場から直接仕入先に連絡する必要がなくなるため、調達業務の工数削減につながります。
調達コストのブレ・バラツキを抑えられる
調達関連情報のシステム化により、複数の仕入先の価格を過去のデータに基づいて比較できるようになるため、最適な調達先を選定しやすくなります。例えば、ある部品について過去の調達データに基づいて、複数のサプライヤーの見積もりを自動で収集・比較し、最も条件の良いサプライヤーを選定できるようになったりするため、調達コストの削減・安定化が実現できます。
※過去の類似案件・部品の発注データに基づき、新規案件に最適なサプライヤーを選定できるイメージ
調達業務の属人化を解消できる
DX化により、これまで属人化していた調達業務のノウハウをデジタルデータとして蓄積できます。従来は担当者の経験や交渉スキルに依存していた業務知識が、システム上に図面や文書といった形で記録できるようになるため、組織全体の財産として活用できるようになります。例えば、ベテラン担当者と仕入先とのやり取りをシステムに記録することで、価格交渉の成功パターンを若手社員が学べるようになります。
コア業務に集中できる
調達業務のDX化により、定型的な作業が自動化され、より戦略的な業務に時間を割けるようになります。発注書作成や在庫確認といった単純作業がシステムに任せられるため、担当者は市場動向の分析やサプライヤーとの関係強化、サプライヤー分析など、付加価値の高い業務に集中できます。
公平な人事評価制度の構築につなげられる
調達業務のDX化により、業務プロセスと成果が可視化され、客観的な人事評価が可能になります。従来の調達業務では、担当者の貢献度や業務効率を数値化することが難しく、評価が主観に左右されがちでした。
システム導入後は、部品調達コスト削減率や納期遵守率、サプライヤー開拓数など、具体的な数値に基づいた評価指標を設定できます。例えば、ある担当者が前年比で調達コストを何%削減したか、緊急発注をどれだけ減らせたかといった実績を正確に把握できるため、公平で納得感のある評価制度の構築が可能です。
調達業務のDX化で気をつけたいポイント
最後に、調達業務のDX化で気を付けたいポイントをご紹介します。
パーチェシングだけでなく、ソーシングもシステム化する
購買・調達業務は、サプライヤーの選定・交渉などを行う「ソーシング」と、発注や検収、支払いなどを行う「パーチェシング」の二段階に分けられます。多くの企業ではDX化を進める際、発注処理や納品管理などのパーチェシング部分に重点を置きがちです。
しかし、調達プロセス全体の効率化を実現するには、ソーシング段階もシステム化することが重要です。ソーシングのシステム化により、サプライヤー情報の一元管理や過去の取引実績の分析が容易になり、QCDの観点から品質の高いサプライヤーの選定が可能になります。また、価格交渉の履歴や選定理由の記録が残るため、調達の透明性向上にもつながるでしょう。
効果検証にはデータを活用する
調達DXを成功させるには、取り組みの効果を客観的に検証することが欠かせません。データに基づく効果検証を行うことで、投資対効果を明確にでき、さらなる改善点を見つけられます。
具体的には、調達コスト削減率、発注から納品までのリードタイム短縮、調達担当者の工数削減など、定量的な指標を設定してデータを収集しましょう。
収集したデータは定期的に分析し、目標の達成度を評価することが重要です。目標に達していない指標があれば、その原因を特定し、業務プロセスやサプライヤーの見直しを行います。また、達成できている指標についても、さらなる改善の余地がないか検討することで、継続的な業務改善につなげられるでしょう。
まとめ:システム導入によるDX化で、調達業務の効率化や属人化の解消を実現しよう
調達業務では、調達コストのブレや業務の属人化、納期遅延の頻発など多くの課題を抱えています。調達業務におけるソーシング領域の課題においては、AIとデータを活用し調達活動の改善を支援するシステム「CADDI Quote(キャディ クオート)」の活用が有効です。
※CADDi Quoteの製品概要イメージ
CADDi Quoteでは、蓄積した図面・発注データのAI解析により新規案件に必要な部品と類似の部品を製造する相見積先の提案や、実績価格の表示が可能です。それによって、膨大なサプライヤーの中から案件ごとに最適な取引先を効率的に見つけられるようになるとともに、データに基づいたサプライヤー選定により、調達価格のブレ解消や見積もり依頼業務の標準化も可能です。
また、見積依頼から回収、査定までをワンストップで管理でき、サプライヤーの一括選定・送信や比較表の自動生成により手作業を大幅に削減できます。
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