高瀬金型は、金型専業メーカーとして、1982年に創業した。その後、自社で製造した金型を用いた射出成形にも対応し、金型から成形品までを一気通貫で対応している。特に、生活を支える重要分野である住宅水廻り設備、医療機器、半導体製造装置向けの部品を主力製品としている。
金型と成形の両方の知見を保有していることで、プラスチック部品製造の上流から下流まで一貫して問題解決できることが強みだ。例えば、金型や成形の知見に基づいた部品設計の支援により、成形品のQCDを最適化できる。また、金型工程と成形工程の摺合せにより、難易度の高いプラスチック成形品の製造も実現可能だ。このように、一気通貫だからこそ実現できる価値提供を強みに、事業規模を拡大し続けている。
高瀬金型では、2023年度までの直近10年間で、売上高成長率8.9%を実現してきた。これは、既存顧客の市場が堅調に推移したことに加え、金型から成形まで一気通貫で対応するという戦略が噛み合い、顧客市場において金属から樹脂への置き換え需要が大きかったことの2点が主な要因だ。また、事業の拡大に伴い直近10年で従業員は約70名から約120名と大きく増加した。一方で、売上と人員の拡大に対して、高瀬氏はこう話す。
「売上や人員が増加しても、それを支える組織体制はできていませんでした。例えば、部門間で情報共有する仕組みが不十分だったため、必要な情報が必要な部署に共有されず、その影響を受けて生産現場が疲弊している状況でした。また、培われてきたノウハウが適切に継承されず属人化しているため、退職に伴いノウハウが失われるリスクがあります。今後も成長を続けるためには、組織体制の構築と属人化を解消する必要があります。その手段として、デジタル技術の活用を考えました。」