原価企画とは?必要性や進め方、成功させるポイントを解説
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近年の原材料費やエネルギーコストの高騰、グローバル競争の激化など、製造業を取り巻く経営環境は厳しさを増しています。従来のコスト削減策では限界を感じていたり、利益を確保するのが難しかったりと、収益確保に頭を悩ませている企業様も多いのではないでしょうか?
これらの課題を解決するために、近年注目を集めているのが「原価企画」です。設計段階からコストを意識することで、従来のコスト削減策よりも大きな効果を発揮し、利益確保と持続的な成長を実現します。
この記事では、原価企画の基礎知識から成功させるためのポイントまで網羅的に解説します。
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原価企画とは
原価企画とは、製品開発の初期段階からコストを管理・削減し、顧客ニーズと利益目標を両立する価格設定を実現する取り組みです。
製品企画の段階で目標原価を設定し、設計・開発全体でコストを意識した意思決定を行うことで、開発の短縮化と利益確保を実現します。
原価企画を成功させるには、全体的な協力体制が欠かせません。設計部門を中心に、調達・製造・物流など、製品開発に関わるすべての部門が開発の初期段階から連携し、コスト削減のための知見を共有することが重要です。また、市場ニーズの変化を迅速に捉え、柔軟に製品開発を進める体制も必要です。
原価企画と原価管理の違い
原価企画と原価管理は、製品開発のコストを扱う手法ですが、その特徴は異なります。
原価管理は、製品やサービスのライフサイクル全体(企画・開発・製造・販売・サービス)におけるコストを包括的に管理する手法です。コストの計画、管理、削減といった活動を通して、企業全体の収益性を向上させることを目指します。
一方、原価企画は、原価管理の一部として位置づけられ、製品開発の初期段階でのコスト管理を重視する方法です。具体的には、設計・開発フェーズにおいて、いかに効率的にコストを抑えるかを検討します。
製品企画の段階で目標原価を設定し、設計や生産プロセスの両面から改善を進めることで、目標達成を目指します。製品の開発期間を短くしながら、目標とする利益も確保できるのが特徴です。
つまり、原価管理が製品ライフサイクル全体のコストを管理するのに対し、原価企画は開発段階に特化したコスト管理手法と言えるでしょう。
なぜ原価企画が重要なのか?
近年の製造業を取り巻く環境は、さまざまな要因により厳しさを増しています。この章では、原価企画がなぜ重要とされているかについて解説します。
製造業を取り巻く環境の変化
世界的な原材料価格の高騰は、製造業の収益性を圧迫する大きな要因となっています。
この状況下では、従来の大量生産・大量消費型のビジネスモデルでは、収益確保は困難になるでしょう。そのため、企業は開発段階からコストを意識した新しい手法を取り入れることが求められます。原価企画は、安定した収益向上の有効な戦略として注目されているのです。
開発サイクルの短縮化
近年、製品開発のスピードは劇的に速まっています。競合他社が素早く類似商品を市場に投入したり、消費者の好みが頻繁に変化したりします。企業が生き残るためには、迅速に新商品を開発する必要があるのです。
従来の原価計算では、現場で都度計算を行う必要があるため、開発スピードに対応できませんでした。しかし、原価企画を導入することで、事前に原価を予測・管理できるため、開発期間の短縮を図ることができます。
また、事前に原価を把握できるため、多様な製品開発を迅速に実施できます。そのため、現場での都度計算が不要になり、効率的な製品管理が可能になるでしょう。
消費者主体の価格設定
デジタル化が進んだ現代では、消費者はインターネットでさまざまな製品の価格や機能を簡単に比較できるようになりました。そのため、消費者の購買行動も変化し、価格だけではなく製品の機能や品質など、総合的な価値を重視するようになっています。
従来のように、原価に利益を上乗せする価格設定では、消費者のニーズに応えられません。つまり、企業側の論理だけで価格を決めるのではなく、消費者が求める価値に合った価格設定が必要になっているのです。
例えば、洗練されたデザインや最新の安全性能、快適な乗り心地を備えた車は、価格が多少高くても選ばれます。一方で、基本性能は良くても、時代遅れのデザインや不快な乗り心地、悪い燃費性能では、たとえ安価でも消費者から選ばれにくくなります。
このように、消費者は単純な価格の高低だけではなく、製品がもたらす総合的な価値で購買を判断しているのです。
原価企画のメリット
原価企画には、企業の収益性向上や顧客満足度向上につながるメリットがあります。
コストを削減し利益を確保できる
原価企画は、製品開発の初期段階からコストを意識することで、製造コストを大幅に削減できます。量産開始後に設計変更を行うよりも、初期段階でコストを抑える方が、手戻りが少なく費用対効果が高いためです。
具体的なコスト削減のアプローチとしては、部品の共通化、標準化、材料の選定、製造プロセスの見直しなどが挙げられます。これらの取り組みを開発初期から計画的に進めることで、コスト削減を実現できます。
適正価格で商品を消費者に提供できる
原価企画は、消費者と企業の双方にメリットをもたらします。消費者は、適正な価格で高品質な製品を購入できるようになります。一方、企業にとっては、市場ニーズに合った価格設定により、安定した利益を確保できるでしょう。
適正価格の設定は、消費者保護の観点からも法律で重要視されています。独占禁止法では、企業間の不当な価格操作や価格カルテル等を禁止することで、消費者が不当に高い価格で商品を購入することを防いでいます 。
※参考:独占禁止法の概要丨公正取引委員会
また、景品表示法は二重価格表示など消費者を欺くような価格表示を規制し、公正な価格設定を促進しています。
※参考:景品規制の概要丨消費者庁
このように、企業には法令遵守の観点からも適切な価格設定が求められているのです。これらの法律を遵守し、原価企画に基づいた適正価格を設定することで、企業は法的リスクを回避でき、消費者からの信頼を得ることができるでしょう。
原価企画の進め方
原価企画は、目標設定から始まり、具体的なコスト削減活動、最終的な評価・改善まで一連のプロセスで進めていきます。
目標原価の設定
目標原価とは、製品を開発・製造する際に目指すべきコストです。市場の競争状況や顧客ニーズといった市場動向を重視する「マーケットイン」の発想に基づいて設定します。
まずは、目標とする販売価格を決定します。顧客が商品に対して支払っても良いと考えている価格や競合製品の価格帯を調査・分析しましょう。
販売価格から目標とする利益を差し引くことで目標原価を算出できます。このように、目標原価を設定し、その水準に向かって段階的にコスト削減を進めていきます。
設計段階での具体的アプローチ
設計段階では、設計データに基づいて製造原価を見積もります。見積原価を目標原価と比較し、コスト削減の目標額として設定します。例えば、見積原価が100万円で目標原価が80万円の場合、20万円のコスト削減が必要です。
設計段階でのコストを低減するには、部品の形状変更や材料の代替、工程の簡略化などを検討します。自社の努力だけでは原価低減が難しい場合は、取引先など外部企業の協力を得ることも有効です。
達成度の評価と改善
原価企画の効果を最大限に発揮するには、目標達成度の評価から改善実施まで、体系的に進めることが重要です。目標達成度の評価では、設定した目標原価と実際の原価を比較分析していきます。
その際、単に全体の差異を見るだけではなく、各工程や部品別の分析を行うことで、コスト超過や削減の要因を特定できます。
次に、分析結果に基づいた改善策を立案し、具体的な行動に移します。例えば、設計変更、工程改善、サプライヤーとの交渉など、さまざまな対策を思案してみましょう。
さらに、改善活動を継続的なものとするために、評価指標の設定、定期的なモニタリング、改善策の実施状況確認をくり返していきましょう。PDCAサイクルを着実に回すことで、原価企画の精度を高め、効果的なコスト削減を実現できます。
原価企画を成功させるためのポイント
近年のデジタル技術の革新は、原価企画のプロセスに革命的な変化をもたらしています。特に、DX(デジタルトランスフォーメーション)に関連するツールや関連テクノロジーの進化により、原価企画の効率化と精度向上が飛躍的に進んでいくでしょう。
原価管理システムの活用
原価管理システムとは、製品の原価を正確に把握・分析し、効果的なコスト削減を実現するためのデジタルツールです。製造業では、原材料費、人件費、製造経費など多岐にわたるコストが発生しますが、原価管理システムを導入することで、製品の原価を正確に把握・分析できます。
初期段階でコスト削減の対策を立てられるため、企業は効率的に原価企画を実施できるでしょう。
AIを活用したコスト予測と最適化
AIは原価企画において、企業のコスト管理に大きく貢献します。AIの膨大な過去データを分析し、材料費や人件費、製造経費など、将来発生するコストを高精度で予測します。
また、生産設備の状態をリアルタイムで監視し、故障の予兆を検知できるのも特徴です。事前のメンテナンスで突発的な設備故障を防ぐことで、予期せぬ修理費用や生産停止による損失を回避できるでしょう。
さらに、AIによる市場動向の分析により需要予測が可能です。需要予測により適切な生産量を設定できるため、過剰在庫や機会損失を防げます。
このようなAI技術の活用により、企業は原価の予測精度を向上させ、製造プロセスを最適化できます。結果として無駄なコストを削減し、利益の最大化を実現できるのです。
原価管理システムの導入事例
この章では、実際に原価管理システムを導入した企業の事例を2つ紹介します。
間接コストを抑えて業務効率化を実現した事例
充填機の開発・生産・販売等を行う老舗メーカーは、以下のような課題を抱えていました。
【導入前の課題】
1.非効率な生産体制
2.人員リソース不足
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【CADDi Drawer(キャディドロワー)導入の経緯】
- 図面の流用や過去の発注実績の参照ができる
- 部署横断で業務効率が向上するような仕組み作りができる
【導入効果】
1.作業工数の短縮
2.時間効率がUP
3.さまざまな部門からデータ活用に関するアイデアや意見が集まるようになった |
今後も自社独自のノウハウや知見をデータ化して、会社全体を変革していくとのことです。
参考事例:新図100%の一品一様な受注生産を変える、図面データ活用の新たな挑戦|株式会社ケーテー製作所様
原価部門のコスト課題を解消し効率化を実現した事例
世界初の小型ディーゼルエンジンの実用化に成功し、大型エンジン、農業機械、エネルギーシステム、工作機械など多岐に渡る事業を展開する産業機械メーカーは、以下のような課題を抱えていました。
【導入前の課題】
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【CADDi Drawer導入の経緯】
- 伴走支援を行ってくれる
- これまで活用できていなかった過去図面の活用が実現できる
【導入効果】
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システムの導入により、工数削減はもちろん意識改革や文化の変革などの効果も実感しているとのことでした。
参考事例:現場と一体となって進める「草の根DX」で目指す、人材の活人化|ヤンマーホールディングス株式会社様
まとめ
原材料費高騰やグローバル競争激化の中、製造業において原価企画はますます重要性を増しています。原価企画を成功させるには、全社的な意識改革、継続的な改善、目標原価の柔軟な見直しが重要です。
これらの要素を統合的に活用することで、企業は競争優位性を強化し、持続的な成長を実現します。またDX技術を活用した原価管理システムやAIによるコスト予測は、原価企画の効率化・高度化に大きく貢献するでしょう。
原価企画において、CADDi Drawerは見積もった部品コストから目標原価との乖離を早期に発見し、設計の見直しや代替材料の検討など、業務効率を向上できるシステムです。また、CADDi Draweは図面や仕様書の共有が可能なため、サプライヤーとのコミュニケーションを円滑にし、誤発注や手戻りを防ぎます。
このように、CADDi Drawerは原価企画プロセス全体の効率化とコスト管理の精度向上に寄与します。CADDi Drawerの導入は、原価企画を成功させるための重要な戦略と言えるでしょう。
対応ファイル形式 |
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主な機能 |
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初期費用 | 要問い合わせ |
月額費用 | 要問い合わせ |
セキュリティ対策 |
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サポート体制 |
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特徴 |
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公式サイト | CADDi Drawer |
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